「私より給料多い」 朴正熙大統領が迎えた科学者18人、K技術の始まり(2)

投稿者: | 2025年11月4日

当初、KISTは産業技術の開発が目標だった。企業から必要な課題を受注して研究する契約研究機関だった。その後に設立された政府出資研究所もほとんど変わらなかった。産業発展が急がれた当時は基礎科学研究は後回しになるしかなかった。崔亨燮博士の回顧録にはこのように書かれている。「李輝昭(イ・フィソ)博士から自分も研究所で仕事をしてみたいという手紙を受けた。私はKISTはまだ基礎研究をする段階ではなく、ノーベル物理学賞の対象になっている李博士はもう少しそこで研究をするのがよいと返信した」。

大企業が独自の研究開発能力を備え、国が先進国の敷居を越える頃になると、国家的な基礎科学研究の必要性が台頭した。このようにして2011年に基礎科学研究院が創設された。ドイツのマックス・プランク協会や日本の理化学研究所のようにノーベル賞受賞者を多数輩出する研究機関をベンチマーキングし、世界最高レベルの基礎科学研究環境を作るのが設立目標だった。3年にすぎない他の研究院とは違ってIBS院長の任期は5年で再任も可能にした。破格的な研究資金も確保された。

 ◆毎年10月の「ノーベル賞」発表で悩み

こうした過程を経て韓国は研究開発強国に浮上した。世界最高科学専門誌ネイチャーが論文の質などを総合評価した「ネイチャーインデックス」で韓国は今年世界7位だった。研究開発投資は絶対額基準で世界5位、国内総生産(GDP)比ではイスラエルに次ぐ2位だ。韓国科学技術企画評価院が経済協力開発機構(OECD) 36カ国を比較した「国家科学技術革新力量評価」の結果は米国、スイス、オランダに続いて4位(2024年)だった。

しかし国民が残念に思うことがある。毎年10月の「ノーベル賞」発表でまだ受賞者が出ていない点だ。日本はノーベル科学賞受賞者が27人であるのに対し、韓国はまだいない。もちろん韓国の基礎科学研究院より100年ほど前に理化学研究所を設立した日本と比較するのは無理がある。日本は特に経済が好況だった70~80年代に基礎科学に巨額の投資をし、それから30年が経過した2000年代に次々とノーベル科学賞を受賞した。また韓国は長期的な視点で基礎科学研究に投資するよりも、短期の成果を要求する風土が残っている。

応用技術分野も容易でない。いつからか「投資したほど経済成果が出ない」という意味の「研究開発パラドックス」という言葉が出てきた。「ピークコリア」(Peak Korea、韓国は今がピーク)という声も聞こえる。科学技術者に対する尊重と待遇も以前より大きく落ちた。人材が医学部ばかりに集中するのが実情だ。中国の科学技術力が米国と競争するほど高まっている現実も大韓民国の経済には脅威の要素だ。

『科学技術50年史』(2017年)を総括編纂した科学技術政策研究院のホン・ソンジュ研究委員は「大学と政府出資研究所が役割を分担して協力し、未来の産業を創出し、企業研究所がこれを受けて商用化できるよう国家革新体系の体質改善が求められる時」と述べた。

チェ・ジュンホ科学専門記者/論説委員

2025/11/04 15:33
https://japanese.joins.com/JArticle/340609

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