高市早苗首相は、何気なく口にした言葉が、中日関係の安定のために絶対(!)触れてはいけない「パンドラの箱」を開ける悲劇へと続く道になるとは想像もできなかっただろう。旧民主党政権時代に外相を務めた岡田克也立憲民主党議員が7日、衆議院予算委員会で質問に立ったのは午後1時55分頃だった。二人の対話が緊張感を帯び始めたのは、日本が直接攻撃を受けなくても他国のために武力を使う「集団的自衛権」を発動できる「存立危機事態」に話題が移ってからだった。岡田議員が質疑した。
「1年前の(自民党)総裁選挙で、(首相は)中国による台湾の海上封鎖が発生した場合を問われ、『存立危機事態になるかもしれない』と発言した。どういう場合に存立危機事態になると考えているのか」
「実際にその発生した事態の個別具体的な状況に即して、すべての情報を総合して判断しなければならない」
「だから、どういう場合に存立危機事態になるのかを聞きたい」
「台湾に対して(1)武力攻撃が発生し、海上封鎖が戦艦によって行われ、他の手段も合わせて対応した場合(2)武力行使が生じうる。この海上封鎖を解くために、米軍が救援をする、それを防ぐために(3)何らかの他の武力行使が行われる事態も想定できる。(中略)戦艦を使って武力行使を伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態((4)の武力行使が可能)になり得るケースだと考える」
高市首相はこの禅問答のような発言の過程で「主語」を微妙に省略しながら、3度にわたって武力攻撃あるいは武力行使という言葉を使った。(1)の主語は中国であり、「祖国統一」などのために台湾を封鎖する過程で発生する武力行使を意味する。そうなれば、(2)の主語である台湾が反撃し、2次的な武力行使が行われる。そうなったら、米国が「台湾防御」のために介入することになり、(3)の主語である中国軍がこれを阻止するために米艦船を攻撃する第3次武力行使が考えられる。すると、日本の自衛隊が集団的自衛権を行使して中国軍を攻撃する(この答弁では隠された) 第4次武力行使に乗り出すこともあり得るというのが「高市答弁」の趣旨といえる。すなわち、高市首相が考える集団的自衛権の行使対象は「台湾」ではなく、同盟国である「米国」、正確には「米軍の艦船」ということになる。これは存立危機事態という概念が作られた2015年から日本政府が一貫して表明してきた立場だった。ただし、現職の首相が台湾事態と関連して存立危機事態に言及したことが、あまりにも「致命的なミス」だった。
この一言によって、中日関係は終わりの見えない熾烈な対峙局面に突入することになった。中国の薛剣駐大阪総領事が8日、「X」への投稿で「汚い首を斬ってやる」と発言したのに続き、中国政府は日本の首を絞める様々な「限日令」措置を次々と打ち出している。日本に似たような「歴史的感情」を持つ韓国人としては、全く理解できないわけでもないが、中国外交官たちが繰り出す驚くべき発言の数々を聞いていると、気が遠くなり頭痛がするほどだ。彼らが「高市答弁」を前世紀に中国人が強いられてきた恥辱と結びつけて要求しているのはただ一つ、発言の「撤回」だ。
これは果たして可能だろうか。日本は4年前の2021年4月16日、米日首脳会談の共同声明で、1969年以降52年ぶりに台湾海峡の平和について明記した。その2日後の18日、竹内幸雄元外務省事務次官は朝日新聞に「中国と関連して日本はルビコン川を渡った」と評した。この言葉通り、日本は2022年12月にいわゆる「安保三文書」を改正して「反撃能力」を確保し、国内総生産(GDP)の1%にとどまっていた防衛費を2027年までに2%に引き上げる方針を決めた。このような理由はただ一つ、台湾の類似事態に備えるためだった。そのため、「高市答弁」を撤回するということは、日清戦争の勝利で台湾を手にした(1895)明治時代から続く日本の長年の「安保観念」を打ち破ることであると同時に、「中国封鎖」のためにこの10年余り行ってきたすべての努力の根幹を揺るがす「自己否定」といえる。発言を撤回する瞬間、高市政権は崩壊し、日本は韓国にとって「独島(トクト)の喪失」と同様の戦略的敗北を受け入れなければならない。
長い歴史的苦痛を通じて形成された中国人の「集団的アイデンティティ」と、これに恐怖を感じながら備えようとする日本人の「安保観」が正面衝突してしまった。仲裁に乗り出すべき米国の存在はどこにも見当たらない。この事態は全く収拾の道が見えない。いったい、どうすれば良いのか。
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