ウォン安ドル高が続き、1ドル1500ウォン台を目前に控えている。ウォンの価値が過去の経済危機に見舞われた時の水準に落ちたのだ。莫大な規模の海外投資の偏りが構造的なウォン相場の上昇圧力になっているものとみられる。
ウォン相場は先月初め、1400ウォン台に進入した後、急激にウォン安が進み、1カ月半ぶりに1470ウォン台を記録し、米国の関税圧迫が始まった4月初めの年高点(1484.1ウォン)水準に近づいた。今年下半期のドル高傾向の中で、アジア通貨全般が劣勢ではあるが、他の通貨に比べ、ウォン安傾向が著しい。今年下半期、対主要6通貨比ドルの価値を示すドル指数は2.8%上昇したが、同期間中にウォンの価値は8.1%下落した。日本円(-7.8%)よりも下落幅が大きい。
最近のウォン安ドル高は、外国人の急激な国内市場離れと円安の同調化が主な理由とされる。今月に入って21日まで、国内証券市場で外国人投資家は12兆7000億ウォン(約1兆3500億円)分を売りさばいた。21日、一日には過去最大規模の2兆8000億ウォンを売り越した。同期間中、円相場も1ドル当たり157円台まで円安が進み、10カ月ぶりの最高値を記録した。
しかし、現在のドル指数は、コロナ禍以降、米連邦準備制度理事会(FRB)が物価高に対応して金利を引き上げ始めた2022年初め(112)に比べると、そこまで高い水準ではない。当時も急速にウォン安が進んだが、高点(1440ウォン)は今より低かった。ドル指数が90〜110台を行き来する間、ウォン相場は引き続き底点を高め、傾向的に上昇した。 この5年間、ドル指数が8.58%上昇する間、ウォン相場は32.9%も上昇した。ドル高を要因と考えても、ウォン安の幅が大きすぎる。
専門家たちは何よりも2020年以後、急激な海外投資の増加がウォン安の構造的要因となったと診断する。経常収支の黒字と外国人投資で国内に流入するドルより、海外投資のための韓国人のドル両替需要がはるかに大きくなったためだ。コロナ禍以降、米国経済が高成長期(米国例外主義)を迎えると、国内企業と個人の海外投資は急増した。昨年末基準で、韓国の対外金融資産(直接投資+証券投資)の残高は2兆970億ドルで、この4年間で36%急増した。年間1400億ドル、約200兆ウォンを超える資金を海外に投資したという意味だ。一方、外国人の国内投資(対外金融負債)残高は4年間で829億ドル減少した。
最近のウォン安ドル高は、外国人の国内株式の投売りと韓国人の米国株の買い付けで、ドル需要が一気に殺到し、誇張された側面がある。しかし、韓国人の海外投資規模はすでに貿易収支の黒字(ドル流入)規模を超えている。新韓銀行の分析によると、最近4年間、内国人の海外投資が100億ドル増加する時、ウォン相場は約13~14ウォン上昇した。IBK投資証券のチョン・ヨンテク研究員は「海外投資は増え続け、国内投資流入は遅々として進まない状況が続くと、需給側面で為替レートの上昇圧力はさらに大きくなるだろう」と語った。
ウォン安は物価と金融ルートを通じて実体経済に否定的な影響を与える。企業の原材料や中間財の輸入費用を増加させ、経営環境を悪化させると同時に、物価上昇は消費を萎縮させ、内需を圧迫する恐れがある。消費者物価の先行指標である輸入物価は、ウォン安の影響で4カ月連続で上昇している。ウォン安と物価高は金利を下げにくい環境を作り、金融政策においても制約になる。
通常、対外金融資産が増えれば、国家の支払能力と対人信頼度を高める。最近のウォン安ドル高は、韓国経済と外国為替市場の構造的変化が主な要因という点で、国家信用と負債危機のシグナルとは言い難い。過去の外国為替流出入は企業と外国人を中心にドル集中が発生し経済に衝撃を与えたが、個人の海外投資は大規模で一度に動かず緩衝材の役割を果たす。イ・チャンヨン韓銀総裁は「投資家の海外投資資産が増え、先進国型外国為替市場の構造が定着した。過去にはウォン安が対外負債償還の負担で信用危機を招いたが、今は対外純資産国としてウォン相場の変動が経済危機につながらない構造」だと診断した。
いくつかの先進国の場合、高齢化と潜在成長率の下落で製造と輸出を資本と金融が代わりにし、傾向的に自国通貨の価値が下落する様相を示している。韓国も同様の経路を辿ることになるかも注目される。韓国の全世界の輸出比重は2.7%水準で、漸進的な下落傾向だ。新韓銀行のソ・ジェヨン・エコノミストは「日本の場合、輸出の比重が下がる度に円の価値は一段階ずつ下落した。外国人の国内投資が多ければ話は変わるが、出て行くお金(投資)がもっと多ければ、さらなるウォン安への圧力は避けられない」と話した。ウォン安は成長鈍化の一つの兆候だという話だ。
2025/11/24 20:56
https://japan.hani.co.kr/arti/economy/54810.html