「政治に揺れていれば今日の東京はなかった」。日本の建築家で東京の旧都心再開発に関与した安昌寿氏が2020年、メディアのインタビューで語った言葉だ。宗廟一帯の世運(セウン)地区開発をめぐりソウル市と中央政府が対立している、いわゆる「宗廟大戦」を見ながら、この言葉を思い出した。ソウルはどうか。政治に揺れるどころか、振り回されて久しい。
安昌寿氏が言及した「今日の東京」とは、「失われた10年」間に衰退した都心の華麗な復活だ。日本の政治と行政、民間が手を取り合って成し遂げた。小泉純一郎首相が2001年に就任して都市再生特別措置法を通過させながら桑田碧海が始まり、このエンジンは2009年に民主党に政権交代した時も消えなかった。政権は交代しても政策が変わらなかったことで東京は生き返った。先月、東京を「世界で最も裕福な都市」1位に選定したあるメディアは「東京の能力は他の都市と比較できない」と評価した。
事例はあふれるほどある。東京都庁がまず提案した官民協力(PPP)でトンネルの上に高層ショッピングモールを建築し(GINZA SIX)、ホテル・小学校・バスターミナルが共存し(東京ミッドタウン八重洲)、容積率を売買できる空中権概念を導入し、スカイラインを少しずつ確実に変えた。先月中旬に訪れた東京駅近隣、日本人が神聖視する皇居近隣でも多くのタワークレーンがそびえる中、現地の人と観光客がともに快適な散歩をしながら時間とお金を使った。
ソウルはどうか。政策は見えず政治ばかりが見える。世運地区の開発をめぐる核心質問は消えた。市民にどんな空間を提供できるのかという悩みだ。建築家のファクト基盤の甲論乙駁は入り込む余地がない。
世運地区開発は与党対野党、中央政府対地方政府の葛藤と自尊心対決の場に変質した。「駭怪罔則(奇怪でけしからない)、必ず防ぐべき」(崔輝永文化体育観光部長官)と「一方的な非難、強い遺憾」(呉世勲ソウル特別市長)などの激しい言葉が飛び交う。「民生を考える人は誰もいない」と嘆く地域住民の声に双方は耳を傾けなければいけない。分裂の政治で都市再生のゴールデンタイムも逃しているのではないのか。
建築には「住むもの」でなく「住むところ」に対する哲学がなければいけない。その哲学が生みだす美しさを享受する権利がすべての国民にある。英国の伝説的首相ウィンストン・チャーチルはこう語った。「私たちは建物を建設し、建物は私たちをつくる」。韓国の政治家はどんな生活をつくるのかに関心があるのだろうか。
チョン・スジン/編集コンテンツ局記?
2025/12/10 13:07
https://japanese.joins.com/JArticle/341993