与野党を問わず政界に向かう統一教の金品提供と政治的後援疑惑が浮き彫りになり、政治権力と宗教権力の結託が「深刻な問題」に浮上した。統一教はなぜ政界に向けて全方向的に手を差し出したのか。
◆「真の父母」総裁夫妻がメシア=統一教は故文鮮明(ムン・ソンミョン)総裁と韓鶴子(ハン・ハクジャ)総裁夫妻を「真の父母」と呼ぶ。統一教の教理によると、創世記でイブが蛇(サタン)に誘惑されて性的関係を結び、血が堕落することになる。寝床でイブがまたアダムを堕落させ、アダムとイブの子孫である人類も堕落する。
統一教は人類救援のために堕落した血をきれいに戻すべきだと信じる。それでイエスがこの地にきた。童貞女を通じて純潔な血を持って生まれたイエスが結婚して家庭を作り、子どもが生まれてこそ救援が可能とみる。それで統一教はイエスの使役を「半分の成功」と呼ぶ。「霊的救援」は成し遂げたが、「肉的救援」は失敗したとみる。イエスは結婚と家庭を成し遂げられなかったからだ。それでまたこの地に来たメシアが文総裁夫妻と主張する。
◆継承過程で「王子の乱」=2012年、文鮮明総裁が他界し、統一教はしばらく内紛が続いた。文総裁は遺言を通じて統一教教会を七男の文顕進に継承させた。その代わり「母(韓鶴子総裁)と一つになる」ことを原則とした。
統一教では韓鶴子総裁を「独生女」と呼ぶ。文総裁が「完全なアダム」であり、韓総裁は「完全なイブ」とみる。文総裁の他界後、韓総裁は速やかに教団を掌握し、指導力の中心に立った。
これに強く反発した息子の文顕進と文国進(ムン・ククジン、四男)は結局、米国に渡った。そこで別に「サンクチュアリー(Sanctuary)教会」を設立した。統一教の外部ではこれを「王子の乱」と呼ぶ。文総裁の他界後に韓鶴子総裁は「新たなリーダーシップ」を継続して見せなければならない状況だ。このような時期に日本で統一教問題が発生した。
◆統一教、日本で危機=3月、日本裁判所は統一教に対して宗教法人解散命令を下した。2022年7月、安倍晋三元首相の暗殺犯が「母が統一教に巨額を献金して家庭が破産した」と供述し、統一教の献金問題が日本で社会的イシューになった。
文部科学省により長期間の調査が行われた。結局、裁判所は日本政府の要請を受け、宗教法人の解散を命じた。これに反発した統一教が控訴し、現在、高等裁判所で2審裁判が進行している。裁判は3審制だ。
日本で宗教法人の解散が最終決定する場合、統一教の宗教活動自体が禁止されるわけではない。その代わり宗教法人として享受してきた法的・経済的権利が剥奪される。非課税だった各種宗教施設にも税金が課される。不動産が多い統一教としては大きな負担となる。献金収入に対しても税金を支払わなければならない。統一教本部の関係者は「韓国の信者数は10万~20万人、日本の信者数は50万~60万人」と話す。それだけ日本の比率が高く、献金の規模も大きい。統一教には大きな打撃だ。韓鶴子総裁のリーダーシップにもダメージが避けられない。
◆政治権力と宗教権力の結託=宗教が権力になれば政治権力を必要とする。政治も宗教と手を組むことを望む。互いの「欠乏」を満たすためだ。
宗教団体は政界から税金の減免や各種建築の許認可、国庫支援金などが保証される。半面、政治家に必要なのは「有権者の票」だ。政治家が個別の有権者を一人ずつ説得するのは容易ではない。ところが規模が大きい宗教団体は多数の動員が可能だ。忠誠度が高く、結集力も強い。結局、選挙に少なからず影響を及ぼす。
慶煕大のソン・ジェリョン特任教授(宗教社会学)は「政治家は有限な権力に対する根本的な不安があり、宗教は世俗化する社会で影響力が弱まることに対する不安がある。これをよく知る政治権力と宗教権力がお互いの欠乏と欲望を満たす」と結託の背景を説明した。
2025/12/15 10:37
https://japanese.joins.com/JArticle/342162