トランプ大統領にも黄昏の光が差し込む【コラム】

投稿者: | 2025年12月19日

 アドルフ・ヒトラーとベニート・ムッソリーニの同志であり、血なまぐさい内戦の末に40年近くスペインを統治した独裁者のフランシスコ・フランコが死亡してから、ちょうど50年になった先月20日、スペインで彼の人気が急上昇しているというニュースに心が乱された。ソーシャル・メディアでは、人工知能(AI)が生成したフランコが現代社会の弊害を非難する姿が話題となり、ファシスト時代のスペイン国歌のテクノリミックスを流すナイトクラブも数多くあるという。先月21日のマドリードの夜道は、ナチス式の敬礼をする人たちで騒然となった。ニューヨーク・タイムズがフランコの墓で会ったホセ・ルイス・オルティスさん(50)は「(フランコ)政権が戻ってくることを願う」と述べ、栄光の日々について語ったという。オルティスさんはフランコが亡くなった後に生まれた。

 スペイン社会調査センター(CIS)の10月の世論調査によると、スペイン国民の5人に1人(21.3%)は、フランコ時代が国(スペイン)のために「よかった、または非常によかった」と評価した。7月の調査では18~24歳の回答者の17.3%が、民主主義政権より独裁政権を好むと答えた。2009年に比べて10ポイントも増えた数値だ。

 回答の背景には、これらの人たちが直面する深刻な住宅難と移民問題に対する不満があると分析された。2022年に急激に増えた移民の数は、スペインの人口の19%を占める。政治の二極化も一役買ったと解釈される。不安定な今に対する慰めを第2次世界大戦の陰に求めたのかもしれない。正確な理由は研究対象だが、ここ数年間で欧州を中心に台頭した極右の亡霊が世界各地で露骨に台頭する現実は絶望的だ。さらには、まるで封印が解除されたかのように、ドナルド・トランプ大統領の再登場とともに顕著になり、驚きが増している。

 今月も14日には、チリ大統領選で極右のホセ・アントニオ・カスト共和党候補が勝利を宣言した。不法移民の追放、国境の壁の設置などを約束し、「チリのトランプ」と呼ばれる人物だ。当選2日後に彼はアルゼンチンを訪問し、ハビエル・ミレイ大統領と「チェーンソー」を挟んでポーズを取った。ミレイ大統領は「アルゼンチンのトランプ」だ。今月初めにホンジュラスでは、トランプ大統領が公然と支持した極右のナリス・アスフラ国民党候補が、大統領選の開票結果で首位となった。

 日本の高市早苗首相は「女トランプ」、クーデターなどの容疑で収監中のブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領は「熱帯のトランプ」と呼ばれる。反イスラム、反移民の強硬策を掲げるヘルト・ウィルダース自由党代表は「オランダのトランプ」という修飾語が付く。総選挙では、カナダのピエール・ポワリエーブル保守党代表(当時)は「カナダ・ファースト」を、オーストラリアのピーター・ダットン自由党代表は「トランプ式保守強硬策」を公約したが、敗北した。世界にはトランプではないトランプがあまりにも多く、パフォーマンスとしてトランピズムを追う指導者が増えている。

 幸いなことに慰めとなる知らせもある。国境と分野を問わずに限界を試してきたトランプ大統領の牙城が、わずか1年で揺らぐ兆しが見えていることだ。支持率が40%を下回り、共和党だけでなく忠実な支持層であるMAGA(米国を再び偉大に)勢力の反発も目立つ。ニューヨーク市長選に続きマイアミ市長選まで民主党が勝利するなど、異変が相次いでいる。ついにはトランプ大統領の口から「統計的には(中間選挙で)勝つことはかなり難しい」という言葉まで出てきた。「ピタカゲ」(CROOKED)を歌ったK-POPの皇帝であるG-DRAGONの名言「エ・イ・エ・ンなんてものあるわけないでしょ」と叫んでみる。

2025/12/18 20:22
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/55005.html

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