旧正月シーズンの大作映画、5月の映画、夏の映画、秋夕の大作映画、冬の映画…。
毎年12月に入ると相次いで発表されていた大型投資配給会社の「来年のラインナップ」が消えた。興行映画の物差しだった観客動員数1000万人の映画が跡形もなく消え、年間入場者数1億人が脅かされた2025年を経て、韓国映画界では「市場崩壊」という言葉が公然と飛び交っている。1年を締めくくる時期に映画界がさらに暗い気持ちに陥らざるを得ない理由は、「底は今年ではなく来年」と予想されているからだ。いったい2025年の韓国映画界では何が起きたのだろうか。そして、2026年には何が起きるのだろうか。
■興行収入1位は日本アニメ…外国映画のおかげで、なんとか1億人達成
2025年の興行収入1位は韓国映画ではなく、日本アニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』(568万人)だ。観客動員数300万人を超えた韓国映画は『ゾンビになってしまった私の娘』(2位・563万人)と『YADANG/ヤダン』(7位・337万人)の2作品だけだ。
2025年12月15日時点での韓国映画の観客動員数は約4256万人で、市場シェアは43.7%にすぎなかった。映画館のチケット統合コンピュータ・ネットワークの集計が本格稼動した2010年以降では歴代最悪の成績表だ。外国映画の成績を含めても、状況は同じだ。外国映画のなかで観客動員数300万人を超えた映画は『鬼滅の刃』を加え、『ミッキー17』(300万人)、『ズートピア2』(537万人)、『F1(R)/エフワン』(521万人)、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』(341万人)、『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』(339万人)の6作品だ。
2025年の韓国映画市場には、1000万人突破の映画は一つもない。コロナ禍が終わった2022年から2024年までは、『犯罪都市 THE ROUNDUP』『犯罪都市 NO WAY OUT』『ソウルの春』『破墓/パミョ』など、毎年1作品以上は着実に観客1000万人の映画を輩出していたのとは対照的だ。2019年に2億2600万人を突破した年間入場者数が、コロナ禍で4分の1にまで減少したが、2022年には再び1億1200万人、2023年は1億2500万人、2024年は1億2300万人を超えて回復傾向を示していたのとは違い、2025年は1億人台にかろうじて届くものとみられる。2025年の年間総観客数は12月15日時点では約9743万人だが、業界では12月17日に公開されたジェームズ・キャメロン監督の大作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が順調に行けば、年間入場者数の1億人突破はなんとか達成できるだろうと予想している。
映画評論家チョン・ジウク氏は「韓国映画は、夏を狙った300億ウォンの大作映画『全知的な読者の視点から』が観客動員数106万人にとどまったことで、“滅亡”の前兆を示し、秋夕の大作映画『ボス』も243万人で、なんとか損益分岐点(170万人)を突破した水準だった」として、「1000万人映画は映画1作品の成功ではなく、投資・配給会社が可能性を測る尺度であるだけに、事実上、韓国映画産業が崩壊の水準に達したことを示すワンシーン」だと指摘した。危機は産業全体に拡大している。2025年に入ると、CJ CGVとロッテシネマは相次いで人員削減に乗り出した。また、ソウル市明洞駅(ミョンドンヨク)シネライブラリー、京畿道坡州市野塘(パジュシ・ヤダン)、ソウル市松坡(ソンパ)、慶尚南道昌原(チャンウォン)など、CGV12館、メガボックス5館、ロッテシネマ4館など20あまりの劇場が閉館した。
■多様性が不足し、動画配信サービスよりコスパが悪い
韓国映画がこのように悲観的な状況に陥った理由は、コロナ禍を経て大型投資配給会社が映画制作に対する投資を大幅に減らし、「安全な映画」にだけ目を向けるようになった結果だというのが、大まかな分析だ。2025年においても、投資配給会社が関与する純制作費30億ウォン(約3億2000万円)以上の映画は、10作品ほどしか制作されていないとされる。コロナ禍を経て中小規模の映画を投資・配給していた配給会社が倒産し、消滅してしまったことも、中級映画の危機を助長した原因になった。
映画『ワンダーランド』などを制作したキリン制作社のパク・グァンス代表は「韓国映画の投資収益率が低下したため、戦略的投資家や財務的投資家はほとんど投資しなかった」として、「コロナ禍を経て、コリア・エムケイ・青於藍・リトルビクなどの中小規模の映画を投資・配給していた会社がすべて倒産し、実績のある監督やスター俳優などを前面に出した作品でなければ、投資を得るのは非常に困難」だと説明した。実際、映画振興委員会の資料によると、2019年には韓国商業映画の平均収益率は10.9%だったのが、2023年には-31%にまで急落した。2作品の1000万人映画を出した2024年も、平均収益率は-16.4%にすぎなかった。
リスクを下げようとする投資傾向は、最終的には映画の多様性に悪影響を及ぼした。これは、題材・テーマ・想像力などの点で破格かつ実験的な動画配信サービスと競争を強いられる状況下では、観客に無視されるしかない原因になった。映画評論家のユン・フィリップ氏は「押しつけの感動を誘う新派調(大衆迎合的でオーバーアクションな映画)や勧善懲悪物で勝負する韓国映画に、観客はアレルギーを起こしている。『鬼滅の刃』『チェンソーマン』などの日本アニメが興行的に成功したのは、10~20代の観客の好みが細分化していることを示している」として、「1万ウォン(約1100円)さえ支払えば、無制限にコンテンツを消費でき、ホールドバック(放映猶予期間)が崩壊し、わずか1カ月で新作映画を観ることができる動画配信サービスがある一方で、コロナ禍に3回もチケットの価格を引き上げた劇場が提供する映画まで旧態依然としているのだから、競争力は下がらざるを得ない」と批判した。アットナインフィルムのチュ・ヒ理事は「17万人の観客を集めたユン・ガウン監督の『世界のジュイン』など、一部のインディペンデント映画(自主映画)が善戦したのは小さな成果」だとしながらも、「韓国映画界には、まだポン・ジュノとパク・チャヌクしかいないが、日本には三宅唱、濱口竜介、五十嵐耕平らの若い監督が登場し、活気を吹き込んでいる。韓国インディペンデント映画界から商業映画界に若い血を継続的に輸血できる生態系ではないことを示している」と指摘した。
■2026年には状況がさらに悪化の予想
パク・チャヌク監督の『しあわせな選択』が、2026年1月11日に授賞式が開催されるゴールデングローブ賞のミュージカル・コメディ映画部門の最優秀作品賞の候補にノミネートされ、イ・ビョンホンも主演男優賞の候補になるなど、韓国映画が全世界の注目を集めるイベントが待機中だが、映画界の暗鬱たる陰はさらに色濃くなる見込みだ。2025年までは、コロナ禍以前に制作されたものの、公開を逃していた「倉庫映画」も存在していたが、2026年からは、それさえほぼ枯渇し、「劇場で上映する映画がない」という危機感が高まっているためだ。実際、CJ ENM、ロッテシネマ、ショーボックスなど主な投資・配給会社は、現時点でも2026年のラインナップを確定できていない状況にある。
映画界では、ナ・ホンジン監督がメガホンを取り、ファン・ジョンミンやチョ・インソンらが合流した『HOPE』(7月予定)を上半期の期待作に選んでいる。また、2025年に公開予定だったが延期されていたハン・ソヒ、チョン・ジョンソ主演の『PROJECT Y』(1月)、チャン・ハンジュン監督がユ・ヘジン、ユ・ジテ、チョン・ミドらと手を握り作った史劇『王と生きる男』(2月)の公開が決まった。パク・ヘイル、チェ・ミンシク主演の『幸福の国へ』、ク・ギョファン、シン・スンホ主演の『新人類戦争:復活男』など、制作済みの映画も待機中だ。ヒット作の続編である『タチャ4』と『国際市場で逢いましょう2』も劇場で上映されると予想されるが、時期は確定していない。この他には、ヨン・サンホ監督の『失楽園』、リュ・スンワン監督の『ヒューミント』なども公開を検討中だとされる。話題に上がる映画をすべて合わせても、大型投資・配給会社が過去には年に30~40作品を公開していたのに比べると3分の1の水準に過ぎず、2026年に劇場で公開される韓国映画が大幅に不足するという予想が現実になりつつある。
CJ ENMの関係者は「現時点で公開が確定した作品は、韓国芸術総合学校30周年記念の短編集『プロジェクト30』で、新人監督だけでなく、イ・ギョンミ監督やユン・ガウン監督らも含まれている」として、「残りの作品は、市場の状況を見極めたうえで、公開の有無と時期を決める必要があるだろう」と述べた。さらに、「2025年12月時点で制作準備中の映画は『ベテラン3』だけで、いくつかの中小規模の映画がプリプロ(撮影前)段階」だとして、「2026年はひとまず『耐えて生き残るべき年』だと考えている」と語った。映画振興委員会の2025年11月の韓国映画制作状況版を見ても、商業・インディペンデント映画をすべて含め、公開準備中の39作品のうち、2026年上半期に公開予定の映画は5作品しかない。
■劇場で上映する韓国映画が不足
政府も危機解決に乗り出した。映画界の“腰”となる作品の復興を目的に、2025年に開始した事業「中予算韓国映画制作支援」に、2026年には2倍増の200億ウォンを投じることにした。支援対象は、2025年の純制作費が「20億ウォン以上80億ウォン未満」から、2026年には「20億ウォン以上100億ウォン未満」に拡大した。支援額も同様に、「純制作費の40%または25億ウォンのうち、低い方の金額の範囲内」と定めた。総支援本数の30%以上の範囲で、新人監督枠に配分した。約18作品が支援対象の映画に選ばれると予想されるが、残り60%の投資を呼び込むことは容易ではないうえ、公開までには時間をさらに要することを考慮すれば、当面は映画不足を解消することは困難だとみられる。評論家のユン・フィリップ氏は「ネットフリックスのワーナー・ブラザーズ買収をめぐり、劇場映画がネット配信サービスに従属するという懸念が出ているが、一方では、ネットフリックスもやはり、劇場映画の潜在力を依然として大きく見ているとも解釈できる」として、「政府の政策の方向性も同様に、多様な規模の映画館の運営や、インディペンデント・芸術映画の劇場配給・上映の支援などに拡大しなければならない」と指摘した。
■「オールドボーイ」になった映画界、新たな成功モデルが必要に
コロナ禍後のニューノーマル(新基準)を直視すべきだという指摘も出ている。パク・グァンス代表は「中国・北米・日本など全世界の映画市場は、コロナ禍や動画配信サービスの影響で20~30%減少した。韓国映画界も、市場規模は2億2000万人ではなく、1億~1億5000万人がニューノーマルになった」として、「若い感覚に合う題材や制作技術、細分化したマーケティングで、新たな実験を続けて答えを探す必要があるにもかかわらず、監督・俳優・制作者・配給会社の大部分が『オールドボーイ』であるため、一種の減速に直面している」と指摘した。
映画市場分析家のキム・ヒョンホ氏は、2026年がさらに深刻な危機の局面であることは事実だが、その原因・影響・対策は「観客の立場」から検討すべきだと指摘した。キム氏は「チケットの値段が高いという指摘が出ているが、マルチプレックスが値段を引き上げただけであり、一般館のリニューアルなどで視聴体験を向上させるための努力よりも、客単価を引き上げるために特殊館にだけ投資していることが、より大きな問題」だとして、「劇場が閉館するといっても、実際には、賃貸料の上昇が原因で、過剰・飽和状態だった劇場が整理される過程であるため、観客のアクセシビリティには大きな問題にはならない」と述べた。さらに、「日本アニメの人気から分かるように、観客は、音響に迫力があり大画面で観るような大作映画だけを求めているわけではない。自分の好みや自分の経験と共鳴する映画を望んでいるが、そのような多様な映画は作られていない」として、「2026年の映画界の課題は、ニューノーマルに合った成功モデルとなる映画を一日も早く発掘すること」だと付け加えた。
2025/12/18 22:38
https://japan.hani.co.kr/arti/h21/55043.html