◇「来年の靖国参拝、可能性は排除できない」
–今後の中日関係の見通しは。
「(両国の対立)事態は長期化する。少なくとも1年ほどは関係改善が難しいと思われる。来年11月、中国・深圳で開かれるAPECを前に回復力が働くかどうかがカギだ。安倍元首相も(2012年の尖閣諸島国有化で関係が悪化した後)2013年から改善に向けた流れが生まれ、2014年11月、北京で開かれたAPECを機に首脳会談を行った。似たようなことが可能かどうかは判断しにくい。当時は米中関係が悪化していた。今とは状況が違う」
–高市首相はどう対応していくだろうか。
「内閣支持率が非常に高いため、中国に対する強硬姿勢を続けるのではないかと思う。日本の外交的な幅を狭め、日本に利益はなさそうに見えるが、国内政治を考慮すると現方針を見直す必要性は低い。当面は外交にエネルギーを注ぐのを控え、外国人政策に重点を置くのではないか。
–安倍元首相は政権発足から1年で靖国神社を参拝した。高市首相はいまのところ参拝を自制している。
「政権発足からまだ日が浅く、高市首相が保守派であることは明確なので、保守勢力からの圧力は現時点では高くない。しかし来年には参拝を求める声が高まるのではないか。インフレや円安が続くなど経済環境が好転しない場合、靖国神社参拝を断行する可能性は否定できない。支持基盤である保守勢力に、安倍元首相の記憶を想起させることができるからだ。
◇「韓国のCPTPP加盟交渉、早期開始の可能性も」
–「安保3文書」の改定について、韓国など周辺国では軍事力増強のためではないかと懸念している。
「安保文書の改定や防衛費の増額は、日本がアジアでより大きな役割を果たすことによって、この地域の勢力バランスを維持するためのものだ。韓国にはこれを前向きに受け止めてほしい。『非核三原則』(核兵器の保有・生産・搬入を禁止)のうち『核兵器の搬入禁止』を見直し、実質的な『2.5原則』に転換しようという議論も、米国の拡大抑止の延長線上にあり、独自核武装論とは全く異なる。拡大抑止の信頼性を高めることは、韓国にとっても利益になる」
–来年1月には奈良で韓日首脳会談が予定されている。
「高市首相が日韓関係は特に重視していることは明らかで、希望が持てる。両国関係は長い間、米国抜きでも良好な関係が構築できるかどうかが課題だった。現在、日韓関係が合理的で戦略的に重要だという認識が日本で広く広がっている。李在明(イ・ジェミョン)大統領についてもバランス感覚があるという評価が広まっており、大統領が先に中国を訪問することへの懸念も大きくはないだろう」
–両国は国際社会でどのように協力していくべきか。
「これから世界は『米国抜きで新しい国際秩序をどう作るか』を議論しなければならない。G7(主要7カ国)でも米国の存在感は徐々に弱まることが予想され、G7にこだわっていても意味がない。日本と韓国の利益はかなり一致しており、豪州や欧州連合(EU)など、外交力のある国々は結集すべきだ。それが先進国としての責任だ。そういう意味で、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)に韓国が加盟することを歓迎する。比較的早期に加盟交渉を始めることができるのではないだろうか」
◇佐橋亮・東京大学教授
1978年東京生まれ。東京大学大学院博士(法学)。オーストラリア国立大学博士研究員、スタンフォード大学アジア太平洋研究センター客員准教授、神奈川大学法学部教授・アジア研究センター所長などを経て、2025年から東京大学教授。著書に『米中対立-アメリカの戦略転換と分断される世界』ほか。2023〜2024年の8カ月間、ソウル大学に留学して韓国語を学び、現在も勉強を続けている。「日韓フォーラム」などを通じ、日本と韓国の専門家と多様な研究を進めている。
2025/12/31 07:53
https://japanese.joins.com/JArticle/342809