残されたレースはわずか2周。相手はショートトラック史上最多の冬季オリンピック(五輪)メダル(13個)を誇る開催国イタリアの英雄、アリアンナ・フォンタナ(36)だった。誰もが容易ではないと考えたその時、キム・ギルリ(22)がやってのけた。たった一度訪れたインコース逆転のチャンスを逃さず活かし、ついに逆転に成功し、最後まで隙を見せることなく、そのままトップで一気にフィニッシュラインを駆け抜けた。韓国ショートトラックの次の10年を牽引(けんいん)する特級エースが誕生した瞬間だった。
「正直、夢のように過ぎ去りました。何としても1位にならなければという思いで、前だけを見て滑りました」。キム・ギルリは19日(日本時間)に行われた大会ショートトラック女子3000メートルリレー決勝を終えた後、このように語った。まだ肩で息をしながらも、優勝の喜びを言葉にしようと、あふれる感情を懸命に伝えようとした。
絵に描いたような終盤の大逆転劇を演じたキム・ギルリは、崔珉禎(チェ・ミンジョン、28)の後を継ぐ韓国ショートトラックの大黒柱だ。身長160センチと小柄ながら、爆発的なスピードを武器に早くから頭角を現した。最大の長所はトラックの走破速度だ。1周111.12メートルを8秒4台で駆け抜ける。男子選手も舌を巻くほどのスピードだ。ニックネームも、イタリアの高級車ブランドにちなんだ「ランボルギルリ」だ。
キム・ギルリの真価は、今回のリレー競技でも遺憾なく発揮された。通常、リレーではエースが2番走者を務める。最終勝負がかかる最後の2周を任されるからだ。戦略は的中した。イタリアと韓国による終盤のデッドヒートで、キム・ギルリは残り2周でフォンタナを猛追。フォンタナはこの試合までに13個のメダルを獲得しているショートトラック史上最多メダリストだ。ネームバリューでは劣るかもしれないが、キム・ギルリには問題にならなかった。直線コースで見つけたインコースのわずかな隙を見逃さずに飛び込み、ここで首位に浮上。そのままトップの座を死守し、逆転劇のフィナーレを飾った。キム・ギルリは「転倒しないよう、四足歩行のように両手で氷面を突きながら滑った。フォンタナが偉大な選手であることは間違いないが、それでも道は見えた」と振り返った。
キム・ギルリが初めてスケート靴を履いたのは、「フィギュアの女王」キム・ヨナ(36)に憧れたからだった。7歳の夏休み特講でのことだ。しかし、自宅近くにフィギュアの教室がなかったためショートトラックを学ぶことになり、その後、ジュニアの全国大会を席巻する有望株へと成長した。小学生のころ、控えめに近づき、もじもじしながら記念写真を撮ってもらった崔珉禎や沈錫希(シム・ソクヒ、29)とは、今や稲妻のように共に滑走し、優勝の感激を分かち合う仲になった。残る種目は自身の本命である1500メートル。果たしてキム・ギルリのミラノ旅程は、二つの金色で完成することができるだろうか。その滑りに大きな期待がかかっている。
2026/02/20 09:52
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