米軍基地は安全保障資産か?【コラム】

投稿者: | 2026年6月10日

 米国の軍事力の優位性は、大洋をまたいで軍事力を展開する能力によるものだ。中国やロシアなどのその他の国が望み得ない米国だけの能力であり、覇権の主軸だ。

 このような軍事力は、世界約80カ国にまたがる750以上の米軍の基地および施設、精密誘導兵器を展開する空母などの遠洋海軍力が基盤となっている。とりわけ全世界の米軍基地および基地へのアクセス権は、遠洋海軍力にとっても不可欠なものだ。近くに友好的な港がないと米国の空母は補給を受けられないため、作戦は不可能になる。

 第2次世界大戦以降、ほとんどの国は周囲で戦争が起きると、米国に自国の基地や領土の使用を認めてきた。その紛争の相手から報復される可能性はなかったし、代価として米国の支援が受けられた。米国の圧倒的な最先端の軍事力は、交戦相手にそのような報復を許さなかった。

 1991年の湾岸戦争の際、米国はイラクと国境を接するトルコのインジルリク空軍基地に最先端の戦闘機を配備し、イラクの脅威を無力化した。9・11テロ後のアフガニスタン侵攻時、米国は近隣のウズベキスタンとタジキスタンの基地を利用し、兵力を投入した。制限がかかりはじめたのは、2003年のイラク戦争からだ。トルコは米軍が自国領土を通じてイラク北部の戦線を切り開くことに反対し、衝撃を与えた。アフガニスタン戦争中の2011年、パキスタンはカラチとアフガニスタンを結ぶ通信線を閉鎖した。

 米国とイランの戦争は、米国の基地へのアクセス権にとって転換点となっている。米国は中東全域で少なくとも19の拠点に基地や施設を保有しており、うち8つはバーレーン、クウェート、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦にある恒久的な基地だ。これらにヨルダンを加えた6カ国の米軍基地は、イランの攻撃によってほぼ機能停止に追い込まれ、その過程でこれらの国は民間施設までもが攻撃され、大きな被害を受けた。開戦から2週間でこれらの米軍基地は事実上閉鎖され、米軍の将兵は基地を離れ、ホテルやオフィスで勤務していた。

 米軍基地は中東諸国にとって安全保障ではなく、安全保障にとっての疫病神となっている。むしろ北大西洋条約機構(NATO)の同盟国は、開戦前から米国による自国の領土および基地の使用を拒否していた。スペインは米国と共同で運用するロタ基地とモロン基地へのアクセスを拒否し、フランスとイタリアも同様の措置を取った。米国は最高の同盟国と言われる英国とも、ディエゴガルシア基地の使用をめぐって摩擦を起こした。トルコは自国の領空を防衛する米国の防空網の稼働のみを許可した。

 イランのドローンや弾道ミサイルに対し、米国の高価な先端精密誘導兵器などの在庫が30~80%消費されたことで防空網に穴が開き、米軍基地を抱える中東諸国は大きな被害を受けた。イランは大洋をまたいで展開される米国の軍事力を阻止する「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力を示した。

 今や一斉に視線が注がれているのは東アジアだ。台湾有事などで米中間に紛争が起きた場合、米国は日本、韓国、フィリピン、オーストラリアなどの基地および領土の使用が不可欠になる。米国に匹敵する軍事力を持つ中国のA2/AD能力を考えると、米軍基地を抱える周辺国の被害は想像するのも恐ろしい。しかし米国からは、絶えず韓国とその米軍基地を中国に対する攻撃資産として強調する発言が聞こえてくる。

 先日「朝鮮半島は中国にとっては短剣」だと発言した在韓米軍のゼイビア・ブランソン司令官は、以前にも「韓国は日本と中国本土の間に浮かぶ島、あるいは固定された空母」(2025年5月の太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC))と発言。同年11月には東アジアの地図を東に90度回転させたうえで、「朝鮮半島はアジアのぜい弱な前進基地ではなく、防衛線内部の決定的な空間」だとして、「韓国、日本、フィリピンを結ぶ戦略的三角形において、韓国は中心に位置する(戦略的)縦深」だと述べている。また同氏は「朝鮮半島は第1列島線の内側のアジア大陸に配された唯一の米軍の駐屯地」(1月13日のホノルルでの国防フォーラム)と強調している。4月の議会公聴会では「朝鮮半島は米国本土の防衛と域内における米国の利益の増進に不可欠な、要となる戦略地形」だとして、戦時作戦統制権の転換後も米軍はインド太平洋全般の抑止力強化のために朝鮮半島を拠点として役割を拡大しうると述べている。

 イラン戦争を機として、米軍基地と米国の基地へのアクセス権はもはや「フリーパス」ではなくなった。米軍基地はもはや無条件の安全保障資産ではない。ぼうっとしていると、安全保障にとって凶器ともなりうる。中東諸国が米国に基地へのアクセス権を許可していなかったなら、彼らに大きな被害をもたらしたイラン戦争を米国は敢行できただろうか。そこをよく考えてみよう。とりあえず戦時作戦統制権を早急に取り戻しておくべき理由はここにある。

2026/06/08 16:45
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/56398.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)