■ 「韓日が協力しなければ、生き残ることは難しい」
――GDP6兆ドル、人口1億7500万人規模の経済圏が形成された場合、韓国国民一人一人の暮らしは、どのように変わるのでしょうか。
「基本的には、新たな成熟市場が開かれるということです。それだけ多くの機会が生まれると思います。
現在、韓国の若い世代は、優れた経歴や能力を備えていても、就職が難しい状況にあります。
一方、日本では人手不足のため、韓国に比べれば就職しやすい状況にあります。もちろん、賃金水準や労働条件については、さまざまな側面から検討する必要があります。
しかし、両国の人材を、より幅広く、効率的に活用できるようになるでしょう。
韓国も外国人労働者を多く受け入れているため、日本の優秀な人材を韓国で活用することもできます。反対に、韓国の若者が日本で新たな機会を見つけることもできます。
欧州のように、両国間の往来がはるかに自由になる可能性もあります。ビザや出入国手続きが簡素化され、事実上の生活圏が拡大すれば、国民の暮らしはそれだけ便利になります。
旅行、就職、起業、教育、文化交流など、さまざまな領域で実感できる変化が生まれるでしょう。
最終的には、国民生活全般がより豊かになる可能性があると思います」
――日本が韓日経済共同体から得られる、最も具体的な利益は何だと説明すべきでしょうか。
「私が最も重視しているのは、地政学的な利益です。私は国際政治学者ですから、この側面を特に重要だと考えています。
現在のような地政学的環境の中では、韓国と日本は協力せずに生き残ることが難しくなっています。
中国が台頭し、米国が孤立主義に向かう可能性があります。こうした状況で日本もまた、この地域で自国の価値観と自由民主主義を守りながら生きていけるのかという問題に直面しています。
そのパートナーが韓国だと考えています。
端的に言えば、アジアで高市早苗首相を批判し、李在明大統領を批判しても、身の安全に何の問題も生じない国は、韓国と日本くらいでしょう。
では、習近平、プーチン、金正恩を批判したらどうなるでしょうか。
自由民主主義という価値を守るため、韓国と日本が協力しなければならない。その重要性は、それほど大きいのです」
■ 「どちらか一方が従属する構造ではない」
――日本には依然として、「韓国が日本にどれほど役立つのか」と考える人もいるのではないでしょうか。
「経済面でも、日本は韓国の強みを十分に活用できます。
韓国ほど急速にデジタル化した国は多くありません。韓国のデジタル技術やサービスは、日本国民の生活にも貢献できます。
宅配・デリバリープラットフォームや、ネット通販最大手クーパンのようなサービスモデルも、日本市場で競争とイノベーションを促す契機になり得ます。
日本にとっては、韓国という新たな市場が開かれることにもなります。
さらに、両国が先端技術分野で協力すれば、第三国へ共同進出する道も開かれます。これも日本に大きな利益をもたらすと考えています」
――韓国企業が日本中心のグローバル・サプライチェーンに、下請けとして組み込まれるのではないかとの懸念もあります。
「そもそも、なぜそれを『日本中心のグローバル・サプライチェーン』と呼ぶのか、私にはよく分かりません。
現在、韓国は貿易規模ですでに日本を上回っています。輸出額も韓国の方が多い。
それならば、グローバル・サプライチェーンでどちらがより重要な位置にあるのかという点から、改めて考え直す必要があります。
過去の枠組みで現在の状況を見てはなりません。私が見る限り、韓国企業の方が先行している分野も多くあります。
韓日経済共同体が形成されたとしても、どちらか一方が一方的に従属する構造になると考える必要はありません。
1910年の韓日併合や、1930~1940年代の経験を、現在の経済協力にそのまま当てはめるのは適切ではありません。
今は、当時とは全く異なる状況です」
■ 「答えは結局、経済のパイを拡大すること」
――中国の急速な産業発展に対し、韓国と日本はどのように対応すべきでしょうか。
「中国の経済規模は19兆ドルに達します。一方、韓国は2兆ドルに届きません。
これほどの格差がある中、韓国が単独で選択できる手段が何なのか、まず冷静に考える必要があります。
かつて韓国には、中国より競争力のある産業分野が数多くありました。製造業全般でも中国を上回っていました。
しかし、『中国製造2025』以降の約10年間で、半導体を除くほぼすべての製造業分野において、中国が急速に追い上げてきました。
鉄鋼、化学をはじめとする製造業全般で、韓国は苦境に立たされています。
現在は半導体による一種の錯覚がありますが、実際には韓国製造業は相当な圧力を受けています。
中小製造業も、アリエクスプレスやTemuなどを通じて中国製品が大量に流入し、困難が深まっています。
それでは、韓国が進むべき道は何なのか。結局、答えは経済のパイを拡大することです。
すぐ隣にある5兆ドル規模の成熟した日本市場を積極的に活用しなければならない理由も、そこにあります」
――しかし、中国市場を無視することもできません。
「もちろん、中国を放棄しようという話ではありません。
ただし、かつてのように中国市場で天文学的な利益を得られるという『中国市場の夢』は、もはや有効ではないと思います。
今は、中国と正面から競争しなければならない時代です」
――それは可能でしょうか。
「少なくとも、いくつかの先端技術分野では、私たちの優位性を守らなければなりません。そのために韓日協力が必要です。
代表的な分野が、先端半導体、フィジカルAI、ロボットです。
日本はもともと、ロボット分野で世界をリードしてきた国です。ヒューマノイドロボットも早くから開発してきました。ホンダやソニーは、かなり以前からヒューマノイドの開発に取り組んでいました。
しかし日本は、それを産業化し、収益につなげる面では弱さがありました。AIとの接点、すなわちフィジカルAIへと発展させる点でも、相対的に出遅れました。
日本の素材・部品技術とロボット技術に、韓国のAI・デジタル能力を組み合わせれば、中国と競争できる先端技術分野を十分に守ることができます。
まさに、そうした分野を韓国と日本が共同でつくっていかなければならないと思います」
■ 「開かれた共同体でなければならない」
――台湾海峡有事が現実化した場合、韓日両国のサプライチェーンは、どのようなシナリオに直面するのでしょうか。また、経済共同体はその衝撃をどのように緩和できますか。
「安全保障の観点から、さまざまなことを考えることができます。
韓国と日本が協力することによって、平和を守る抑止力として機能する可能性があります。つまり、戦争そのものを抑制する効果も期待できます。
台湾の安全保障において、台湾積体電路製造(TSMC)が重要な役割を果たしているという議論があります。
中国が台湾に武力による威嚇を加えれば、半導体サプライチェーンは世界経済全体に影響を及ぼさざるを得ません。
現在の状況で、韓国と台湾の半導体生産が崩壊すれば、世界経済そのものが停止しかねません。
第一義的には、それほど台湾のTSMCの役割が重要だということです。
トランプ大統領が、台湾有事の際に介入しないかのようなニュアンスを示すこともあります。
しかし実際には、介入しないという選択は極めて難しいと思います。台湾の半導体が世界経済で占める比重が、それほど大きいからです」
――韓日を中心とする経済ネットワークは、今後、インド太平洋地域全体の経済・安全保障の構図を、どのように変えると考えますか。
「志を同じくする国々と共に進む、開かれた共同体でなければならないと思います。
韓国と日本だけで閉鎖的なブロックをつくるのではなく、価値観や経済体制を共有する国々が参加できるようにすべきです。
韓国と日本を合わせても、経済規模は6兆~7兆ドル程度です。中国は19兆ドルに達します。
意味のある経済共同体として役割を果たすには、少なくとも10兆ドル規模が必要だと考えています。
オーストラリア、ニュージーランド、そして志を同じくする東南アジア諸国まで含め、10兆ドル規模の経済圏をつくることができれば、中国とも平和的に共存できる枠組みになり得ます。
私たちが守ってきた自由民主主義と市場経済の価値を維持するための、最低限の安全装置になるのです」
――その共同体は、将来的に北大西洋条約機構(NATO)のような安全保障共同体へ発展する可能性もありますか。
「安全保障共同体やNATO型の構想へ直ちに進むことは、非常に難しい問題です。
安全保障を持ち出した瞬間、議論の敏感性は格段に高まります。
私の考えの出発点は、地政学的に厳しい環境の中で、自由民主主義の価値観と生活様式を、どのように維持するのかという点にあります。
その意味で、韓国と日本が共に歩むことが重要なのです」
■ 「国連での韓日投票一致率は97%」
――韓国と日本が共に歩むという考え方に、まだなじみがない人や、最初から拒否感を抱く人も多いと思います。
「私がこうした考えを持つようになったきっかけの一つに、国連での経験があります。
国連には数多くの決議案が上程されます。韓国と日本が共に賛否を表明する決議案において、両国の投票行動の一致率は非常に高い。
実際、韓国と日本の投票一致率は約97%で、韓国と米国、日本と米国の一致率よりも高いのです」
――驚くべき数字です。
「これは、歴史問題を除けば、気候変動、中東問題をはじめとする、ほぼすべての国際懸案や価値観に関わる問題で、韓国と日本の立場が非常によく似ていることを意味します。
戦略的利益と価値観がこれほど一致しているのであれば、協力の枠組みをつくり、積極的に活用するのが当然です。
しかし現実には、あらゆる協力が歴史問題の前で止まっています。
かつて海外の公館では、韓国と日本の外交官が最も親しい関係にありました。一緒にサッカーやゴルフをし、情報を交換していました。
中東でも、韓国と日本の大使は頻繁に会い、情報を共有していました。
ところが、いつの間にか互いを最大の敵国のように扱うようになりました。ワシントンでは、互いをけん制するためにロビー活動を行うことさえありました。
そうして10年間を消耗戦に費やした末、ようやく現在の地点まで戻ってきたのです。
再び以前の対立関係に戻るべきなのか、考えなければなりません。
韓国と日本は歴史問題を慎重に管理する一方、価値観と戦略的利益が重なる分野では、積極的に協力の枠組みをつくるべきだと考えています」
国連決議で、韓国と日本の投票行動の一致率が韓米、日米間より高いという統計は、このインタビュー全体を通じて、最も逆説的な事実の一つである。
歴史問題という一つの障壁を取り除けば、国際舞台において韓国と日本は、互いに最も近い国になり得るということだ。
「10年間争い、ようやくここまで戻ってきた」という尹前大使の言葉が示すように、韓日経済共同体構想は壮大な青写真というよりも、「二度と過去の対立に戻ってはならない」という切実な関係管理論に近い。
政府ではなく、民間の必要が両国の血管をつなぎ、その血管が、いつの日か一つの経済を形づくる。
尹氏が最初の回答から一貫して用いてきた「血管」という比喩は、かつてタブーだった言葉が、生存戦略の言葉へと変わっていく、このインタビュー全体を貫く鍵である。
2026/07/23 14:01
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2026/07/23/2026072380082.html
国民感情や政治的・歴史的リスクを考慮すると、政権交代で方針が二転三転しがちな韓国との大規模な統合は日本側のリスクが高すぎます。むしろ、長年にわたり親日的で相互信頼が確立している台湾との経済・技術協力を優先する方が、日本国民にとっても納得感があり実利も大きいと思います。