「韓日未来基金」をめぐる諸説紛々【特派員コラム】

投稿者: | 2024年6月14日

 最近、日帝強占期(日本による植民地時代)の強制動員被害者への賠償問題に関連して韓国と日本の財界が作った「未来パートナーシップ基金」(未来基金)をめぐり、諸説が入り乱れた。

 日帝強制動員被害者支援財団のシム・ギュソン理事長が先月末に行ったメディアとのインタビューが発端となった。シム理事長はインタビューで、強制動員賠償判決の追加勝訴者の52人のうち相当数が「第三者弁済」受け入れる意向を表明したが、財団の財源が不足していると訴えた。具体的には、約120億ウォン(約14億円)が必要だが、3億ウォン(約3500万円)程度しか残っていないことを明らかにした。シム理事長は日本企業の参加を訴え、「財団に直接寄与するのが負担になるのであれば、未来基金に積極的に寄付してくれればいい」と述べた。

 行政安全部の傘下にある同財団は、裁判所で勝訴した強制動員被害者を対象に、被告である日本企業の代わりに賠償を行っているところだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が昨年3月に韓日関係における最大の争点である強制動員被害者への賠償について、韓国最高裁(大法院)の判決を無視して「第三者弁済」という一方的な譲歩案を押し切り、財団がこの仕事を担当することになった。韓国と日本の企業の自発的な寄付によって財源を用意すると明らかにしていたが、初期にポスコなどが出した40億ウォン(約4億5000万円)以外には参加はほとんどない。

 シム理事長が未来基金を言及したことは、多くの人の首をかしげさせた。未来基金から持ち出して被害者への賠償に用いるという意味に解釈できるためだ。最近、日本企業が未来基金に2億円以上を寄付したという日本メディアの報道もあった。

 未来基金は、韓国の全国経済人連合会(現:韓国経済人協会、以下、韓経協)と日本の経済団体連合会(経団連)が、昨年3月16日に東京で行われた韓日首脳会談に合わせて設けて発表した。その際の未来基金の記者会見は開催の数時間前に伝えられ、会見場に机と椅子も用意できなかったほど急に決まった。尹政権が破格の譲歩案を発表したが、日本側からは呼応措置がなく、韓国世論が悪化すると、未来基金が水を加えて薄めるために利用されたわけだ。

 未来基金は強制動員賠償とはまったく関係なく、韓国のためだけのものでもない。韓国と日本の企業から財源を集め、人材交流や産業協力の強化など、互いのためになるようにしようという事業だ。被告企業の参加など強制動員問題と結びつけようとすると、「そのような質問はするな」として逆に不快感を示したのも、未来基金の側だ。このような状況のもとでなぜ未来基金を取り上げ論じたのか、シム理事長に直接質問した。シム理事長はハンギョレの電話取材で「日本企業が未来基金に資金を拠出するからといって、それが財団に来るのではない。そのような意味で話したのではない」と説明した。ただし、「韓国国民の目には、日本企業が何もしないことは問題ではないのか」としたうえで、「日本企業が私たちの財団に寄付するのが難しいのであれば、未来基金に誠意を示せという意味」だと付け加えた。

 念のため韓経協にも聞いてみた。韓経協の関係者は「未来基金は純粋な民間基金だ。発足の趣旨も未来交流に合わされており、徴用賠償とは関係ない」と述べた。シム理事長と韓経協が明らかにしたように、強制動員への賠償とは関係ない未来基金に日本企業が寄付をするからといって、この問題が解決されるわけではない。日本製鉄や三菱重工業などを相手取り韓国最高裁で勝訴し、これを根拠に数十年間戦っている被害者や遺族たちは、被告企業の謝罪と賠償を要求している。

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https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/50316.html

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