海への道失った「プカンイ」とコククジラに対するモヤモヤ…彼らのメッセージ【寄稿】

投稿者: | 2026年10月15日

 釜山の北港に現れた1頭のサメが、韓国はもちろん世界中の主要ニュースとなっている。道に迷って釜山北港の親水スペースにやって来た「プカンイ」は、もう自分の家に帰ってもよさそうなのに、まだその場を動かない。魚類は水温に最も敏感だが、銭湯の温かい湯のように、「プカンイ」は今の釜山港の水温がとても気に入っているようだ。

 昔なら10月に釜山の海にサメがいるなんて想像もできなかったが、「プカンイ」を見ると、海水温がかつてより高いことだけは確かなようだ。結局、気候変動が「プカンイ」を釜山北港の中へと導いたと考えられるだろう。地球温暖化による海洋環境の変化は、実は早くから感知されていた。特に「プカンイ」より体の大きいクジラは、その回遊ルートの異常な変化がすでに始まっている。

 地球上で最も長距離を回遊するクジラはコククジラであり、太平洋を挟んでアジア側に生息する韓国コククジラと、北米沿岸に生息するカリフォルニアコククジラに分かれる。韓国コククジラは夏にはサハリン近くのオホーツク海で餌を食べ、冬になると朝鮮半島と日本列島に沿って南へ移動する。ところが2011年、韓国コククジラの回遊ルートに思いがけない事件が起きた。その年の10月、米国とロシアの研究者たちは韓国コククジラの移動ルートを追跡するため、サハリンで7頭のコククジラに衛星追跡装置(GPS)を取り付けた。

 ところが、韓国や日本の方へ向かうと思われたコククジラは、むしろ北へ向きを変え、アリューシャン列島へ向かったのだ。北の海の水温が徐々に上がるにつれて、結氷が遅くなっているせいだろうか。そのコククジラたちはベーリング海を渡り、アリューシャン列島を過ぎ、北米西海岸に沿って泳ぎ、カナダのバンクーバーと米国のシアトルを経て、メキシコのバハ・カリフォルニアまで移動した。

 このコククジラのせいで、世界中の海洋哺乳類の研究者たちは大混乱に陥った。もはやコククジラを韓国コククジラとカリフォルニアコククジラの2つの群れに分けること自体が無意味ではないか、という激しい論争が起こった。

 しかし、今からわずか2年前の2024年に、米国人を興奮させる出来事が起きた。大西洋のコククジラは1700年に絶滅しているが、絶滅したそのコククジラが200年あまりを経て、大西洋の北米沿岸に再び姿を現したのだ。その年の3月、米国マサチューセッツ州ニューイングランドの南の海で餌を食べるコククジラが、クジラ研究者たちによって撮影されたのだ。当時、米国の放送局NBCがこのコククジラの活動を生中継し、米東部では大きな話題となった。

 発見されたクジラは背びれがない代わりに、背中に一列に並んだこぶがはっきりと見られ、皮膚は白い斑点の多い灰色で、コククジラであることは確実だった。200年以上にわたり大西洋で絶滅したと思われていたコククジラが再び姿を現したこの出来事は、クジラ研究者たちにとって衝撃そのものだった。彼らは「信じられない。この動物はこの海域に存在してはならない」、「これは本当におかしなことであり、同時にワクワクすること」と感嘆を惜しまなかった。

 この驚くべき現象について科学者たちが提示した最も有力な仮説は、太平洋のコククジラがロシアの北極海を過ぎ、大西洋を経て、地中海へ渡ったというものだ。気候変動により北極海が凍結しなくなったため、往復3万キロに及ぶ長距離の旅ができた、との推定だ。

 大西洋へのコククジラの出現は人々を興奮させる歓迎すべき現象だが、一方では地球温暖化という気候危機が現実のものとなりつつあることを告げる警告のメッセージだとも言える。今日も釜山北港の「プカンイ」は人々に大人気だが、道に迷ったサメを見ていると、海中の生息条件が何かおかしくなっているというモヤモヤがぬぐい去れない。

2026/10/13 05:00
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/57405.html

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