第5世代ステルス戦闘機など最先端武器を備えた軍事大国の中国が21世紀の紛争で銃の代わりに刀を持った。南シナ海で起きているフィリピンとの領有権争いでだ。中国が先端武器をやめ近代戦とは距離がある武器を活用したのは緻密に計算された戦略という分析が出てきた。
先月末、中国とフィリピンの領有権紛争地域である南シナ海のセカンドトーマス礁(中国名・仁愛礁、フィリピン名・アユンギン礁)で中国沿岸警備隊が補給任務を遂行中だったフィリピン海軍を攻撃し、フィリピン軍の1人が指を切断した。中国側が先月15日から一方的に自国の領有権を主張する海域に侵入する外国人を最長60日間拘禁するという規定を施行し両国間の緊張感が高まった中で起きた事件だった。これと関連し、フィリピン政府は中国に6000万ペソ(約1億6479万円)規模の損害賠償を要求した状況だ。
◇刀、ハンマー、つるはしを使用…「中国、本当の戦争はしない」
外信が注目したのは中国側が使った武器だ。拳銃や小銃のような武器の代わりに刀とつるはし、おの、ハンマーなどでフィリピン軍を攻撃した。ウォール・ストリート・ジャーナルは「中国海洋警察は『原始的な武器』を使ってフィリピン軍のゴムボートを切って穴を開けた」と伝えた。これに対してフィリピン軍参謀総長は「海賊がやること」と批判した。
中国が他国との紛争でこうした武器を使ったのは初めてではない。2020年6月に中国軍はインドと国境紛争中であるヒマラヤのラダックのガルワン渓谷でインド軍と衝突した。その際に武器として使ったのはとげのついた棒や石などだった。1962年に戦争をした両国が1996年に「国境地域での銃器使用を禁止する」と合意したのに伴ったものだった。
先端軍事装備を広く備えた中国が銃を使わないのは、こうした合意を重視してというよりは戦略的な選択とみるべきという分析が出ている。ワシントン・ポストは「棒やおので相手に危害を加えることはできるが、本格的な戦争につながる可能性は少ない」と指摘した。イェール大学のダニエル・マッティングリー教授(政治学)は「棒と石で骨を折ることはできるが、戦争を起こすことは難しいという論理」と話した。実際にインドとの国境紛争で双方の死傷者が20人以上発生したのに戦争に広がらないのは銃を使わなかったためであるところが大きかったという説明だ。
中国政府が「本当の戦争」を避けようとしているのには現実的な理由がある。中国の国境線は2万2000キロメートル以上で、14カ国と陸地で国境に接している。海上で6カ国と接している。国境紛争中の国も多い。インドやブータンなどとは陸地で国境をめぐって争っており、フィリピンやベトナムなどとは南シナ海の領有権をめぐり対立している。もし戦争が起きる場合、台湾に集中しなければならない中国には相当な負担になるほかない。
◇本当の心配は米国…戦争の可能性排除できず
また「米国がアジア地域に介入する余地を与えないための選択」という診断が出ている。一般的な武器を使う場合には米国が介入する余地が非常に大きくなるためだ。
最近中国との対立を生じさせているフィリピンは米国が東南アジアと南シナ海で中国を牽制するのに必要な地政学的要衝地で、1951年に相互防衛条約を結んだ強力な同盟だ。マッティングリー教授は「銃を使っていないため米国政府に『果たしてフィリピンを支援すべきか』という悩みを抱かせるもの。もし銃を使ったとすれば米国が介入する可能性が非常に大きくなる」と説明した。
しかしどんな武器を使うにしても相手の被害が大きくなれば戦争に飛び火する可能性は少なくないという専門家の指摘も出る。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のハリソン・プレタ研究員は「中国がレッドラインに近づいている」と評した。
フィリピン政府は8日、日本と外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開催することにした。相互派兵をより容易にする円滑化協定(RAA)締結などを話し合う予定だ。また、数週間以内に南シナ海で米軍、自衛隊などと合同訓練も進める計画だ。中国人民解放軍もやはり先月末に南シナ海海域で海軍訓練を実施するなど緊張感はさらに高まっている。
2024/07/07 12:03
https://japanese.joins.com/JArticle/320797