国連教育科学文化機関(ユネスコ)の松浦晃一郎元事務局長(86)が、日本がユネスコ世界文化遺産への登録を進めている佐渡金山について、「全体の歴史を説明する情報センターを建設すべきだ」と述べた。
外交官出身でフランス大使を務めた松浦氏は、1999年から2009年までの10年間、ユネスコ事務局長を務めた。日本国内でも権威のある文化遺産専門家で、佐渡金山を世界遺産に登録しようという声を出した人でもある。
16日、東京のある事務室で中央日報とのインタビューに応じた松浦氏は、佐渡金山を推薦した背景を説明し「朝鮮人の方々に被害を与えたことに対して日本が正直に展示するのが正しい」と強調した。佐渡金山に対して「保留(Refer)」判断を下し、「全体の歴史を説明せよ」と言ったユネスコ諮問機関(ICOMOS)の勧告に従う必要があるということだ。ユネスコは21日から今月末までインドで世界遺産委員会を開き、登録するかどうかを決める。
松浦氏は「(佐渡金山という)過酷な環境で日本で徴用工という形で、(朝鮮人を)義務的に働かせ、被害も発生した」とし「その上にこのようなデータ(情報)がそこに残っている」と説明した。同時に「佐渡金山が(登録申請期間が)江戸時代に限られているが、第2次大戦当時を確実に含めて情報センターを作らなければならないというのは当然のこと」と強調した。
これに先立ち、日本政府は佐渡金山を世界遺産に申請し、期間を金鉱採掘が活発だった17世紀の江戸時代(1603~1868年)に限定して議論を呼んだ。
松浦氏は過去のマスコミとのインタビューで「軍艦島の過ちを繰り返してはならない」と発言したこともある。これに関連して日本政府は2015年に軍艦島(端島)が世界文化遺産に登録された当時、軍艦島に全体の歴史を明らかにする施設物を建設するようイコモスの勧告に従うと約束したが、実際には2020年に東京に産業遺産情報センターを設立した。また、朝鮮人強制徴用の事実はほとんど明らかにせず、朝鮮人に対する賃金未払いや差別はなかったという点を強調した。これに対し、ユネスコも異例に遺憾を表明し、是正を勧告した。
松浦氏は「ユネスコでも批判されたのは人的証言を中心に(展示)したため」と指摘した。客観的な証拠を土台にするよりは、一部の記憶に依存して問題になったということだ。
軍艦島に続いて佐渡金山まで、世界遺産登録が韓日両国の外交戦に飛び火したことについて、松浦氏は「世界遺産には歴史が反映されており、各国の政治問題が関与するほかはない」と説明した。同時に「残念な話だが、ある時点で妥協しなければ(世界遺産問題が)解決されない」としてエピソードを紹介した。
松浦氏が持ち出したのは、北朝鮮初の世界遺産である高句麗(コグリョ)古墳群の登録を試みた時の話だった。2003年、北朝鮮が高句麗古墳群の世界遺産登録を推進すると、北朝鮮と友好関係だった中国が反対を宣言したという。
松浦氏は「翌年、中国が北朝鮮の高句麗古墳群が自国の歴史に含まれるとし、吉林省一帯の高句麗古墳群を中心に登録しようとした」とし「当時、マスコミには知らされなかったが、水面下で厳しい状況が続いた」と説明した。松浦氏は「政治的に良い関係を結んでいる北朝鮮と中国さえも歴史問題では意見が分かれた」とし、結局2004年にそれぞれの遺産として登録させたエピソードを紹介した。
実際、北朝鮮は平壌(ピョンヤン)の東明(トンミョン)王陵周辺の高句麗古墳、中国は桓仁満族自治県などの高句麗遺跡を登録申請し、それぞれ登録に成功した。
松浦氏は「国宝は国家の宝物、世界遺産は世界全体、人類全体の宝物として大切にしなければならない」とし「日韓の未来世代が相手の歴史観を互いに理解し合い、そのうえで互いに手を握っていくようにする必要がある」と強調した。
2024/07/22 08:04
https://japanese.joins.com/JArticle/321401