台湾TSMCがドイツに最初の欧州半導体生産基地を着工した。先端半導体独占に続き旧工程半導体シェアも増やすというTSMCの野心だけでなく、TSMCを背に素材・部品・装備中小企業を海外進出させるという台湾政府の計画も本格的な実行に入った。
TSMCと台湾メディアによると、TSMCの欧州合弁会社であるESMCは20日にドイツのドレスデンに初めての半導体ファブ起工式を開いた。ESMCの株式はTSMCが70%、欧州の半導体顧客であるボッシュ、インフィニオン、NXPの3社が10%ずつ保有する。今年末からここに12~28ナノメートル(ナノは10億分の1)プロセスファブを建設し、2027年末から車載用・産業用半導体を生産する計画だ。
総額100億ユーロ(約1兆6184億円)の投資費用のうち半分が欧州連合(EU)の補助金だ。起工式に参加した欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、「きょう50億ユーロの補助金を承認してきた。欧州は安定した現地供給網とオーダーメード型新製品を得ることになり、TSMCは地政学的緊張が高まる渦中に生産多角化と欧州市場アクセス性を得ることになったのでウィンウィン」と話した。
TSMCの魏哲家会長は「急速に成長する欧州の自動車と産業分野の半導体要求を満たし、欧州の顧客とパートナーにTSMCの先端製造能力を提供するだろう」と話した。この日の起工式にはインフィニオン、NXP、ボッシュの最高経営責任者(CEO)とドイツのショルツ首相も参加した。
TSMCはこれまで台湾以外には中国の南京(12~28ナノメートル)と上海(110~350ナノメートル)に旧工程半導体生産基地を運営していた。
しかし先進国が自国内に半導体生産基地を作ろうとする基調を掲げると巨額の補助を受け米アリゾナ(2~4ナノメートル)と日本の熊本(12~28ナノメートル、6ナノメートル、40ナノメートル)に相次いで半導体ファブを作っている。
TSMCの海外生産基地構築は台湾が政府戦略次元で推進している。台湾国家科学技術委員会(NSTC)の主任委員(科学技術相)は「ドイツ、フランス、オーストラリアなど外国を訪問するたびに『TSMCにわが国に来てほしい』という要請を受ける」と話してきた。台湾政府はこれを中小企業を海外に送り出す機会として十分に活用している。
半導体素材・部品・装備企業の創業者だった台湾の郭智輝経済相は就任直後に「TSMCのような大企業が海外に進出する際に中小企業も一緒に出て行けるように海外製造団地を設立する」と約束した。個別の中小企業が突き破ることはできない海外市場の壁をTSMCと政府の背に乗って超えられるようにするということだ。先月郭長官はチェコ、日本、米国の3カ国を海外製造団地に選定したと明らかにした。欧州のうち台湾に友好的で、ドイツのドレスデンと地理的に隣接したチェコに素材・部品・装備業者を進出させてシナジーを出すということだ。
TSMCの3ナノ級先端半導体ファウンドリー(委託生産)市場シェアは90%に達する。顧客の注文を受けて製作する「乙」でありながらも価格決定権を持っている秘訣だ。外信によるとTSMCは最近顧客に3・5ナノファウンドリー価格を3~8%引き上げると通知した。TSMCはこれに満足せず車載用半導体やイメージセンサーのよう非先端半導体シェアも増やそうとしている。日本でソニーに近い熊本、ドイツでボッシュに近いドレスデンに生産基地を作る背景だ。世界のファウンドリー市場はTSMCが61.7%、サムスン電子が11.0%を占めている。
2024/08/22 08:14
https://japanese.joins.com/JArticle/322735