「あきらめるな!走れ!走れ!」
「京都国際」の文字が刻まれた赤いハチマキを締めた生徒たちが声をからした。34度に達する猛暑の中、21日午前11時から阪神甲子園球場で行われた第106回全国高校野球選手権大会準決勝で、前身が韓国系の民族学校である京都国際と、青森を代表する野球の名門校・青森山田が対戦した。京都国際は1回裏に2点を先制され、5回まで得点することができず、甲子園のアルプス席ではため息が続いた。
ある人がひっそりと「今日に限ってフライが多い」と嘆いていると、間もなく大きな歓声が上がった。6回1死満塁の好機で、長谷川颯選手(2年)の2点タイムリーヒットが飛び出して同点に追いつく。さらに1死1、3塁で服部颯舞選手(3年)のピッチャーゴロの間に1点を追加して逆転に成功すると、アルプス席は総立ちになり、抱き合った。9回裏、青森山田のバッターが内野ゴロに倒れてゲームセットのサイレンが鳴り響き、京都国際が初の決勝進出を決めた。
京都国際が、球児たちの夢の球場と呼ばれる甲子園で奇跡を成し遂げた。同校の野球部創部以来、25年の時を経てのことだ。同校関係者は決勝進出を「奇跡」と呼んだ。
京都国際は1947年に在日同胞が設立した京都朝鮮中としてスタートし、韓国政府の認可(1958年)、日本政府の認可(2003年)をいずれも受けた。生徒数減少により、生徒数は現在、中高合わせて計約160人に過ぎず、約90%が日本国籍だ。高校の生徒138人のうち、野球部員が61人に上る「野球学校」であるものの、体育館にはエアコンもなく、傷んだ練習用のボールをテープで巻いて使っている状態だ。
学校を取り巻く試練も多い。2021年、夏の甲子園で初のベスト4に進出した際、韓国語の校歌を問題視した右翼団体から脅迫電話が相次いだ。学校側は当時、「東海」で始まる校歌を日本語で「東の海」と表記し、主催者側に提出したが、冷え切った韓日関係の余波で右翼の脅迫から逃れることはできなかった。
決勝進出を決めたこの日、勝利が決まり校歌が流れ始めると、選手や応援団は立ち上がり、韓国語の校歌を合唱した。こうした場面はNHKを通じて日本全国に中継された。
約1200人収容可能という京都国際のアルプス席は多くの人で埋め尽くされた。同校の生徒と保護者だけでは埋められない規模の応援団だった。在日同胞や韓国の人々のほか、京都の地域住民や近隣の学校の生徒たちだった。目を引いたのは、吹奏楽部だった。多くの学校とは異なり、吹奏楽部のない京都国際のために、京都産業大付属の生徒たちが炎天下、太鼓やトランペットで応援した。京都産業大付属の小林さんは「同じ高校生として応援したくて参加した」と語った。
京都大会で京都国際に敗退したライバル、京都成章の野球部員20人も友情応援に駆け付けた。「自分たちの分まで最後まで全力で戦ってほしい」と声をからした。日本に留学中の韓国人学生もスタンドに姿を見せた。チョ・ジョンビンさん(24)は「日本で韓国を感じることができる意義深い経験だと思い、試合を見に来た。優勝してほしい」と話した。
ベンチ外の京都国際の選手たちは、応援団として活躍した。「応援団すべてが10人目の選手として、ベンチ入りしている選手たちと同じ気持ちで応援し、共に戦ってきた」と声をそろえた。応援団の一人、岩田選手は「自分たちの応援だけでは勝てなかった。日本人だけではなく、韓国の多くの方々も応援してくれて、勝てる力をいただいた。こうした応援を決勝まで続けていただきたい」と話した。京都国際の保護者会会長、横田さんは「卒業生の保護者も皆集まって応援した。決勝戦でも力を合わせて、優勝できるように応援したい」と語った。
この日、勝利投手となった西村一毅投手(2年)は朝日新聞の取材に対し、「春のセンバツでは青森山田に負けていたので、2度も負けたくなかった。決勝はいつも通りの気持ちで挑んでいきたい」と意気込みを語った。
京都国際は23日午前10時、関東第一と決勝戦を行う。京都国際の白承桓校長は「同胞の皆様に感動を、京都国際を支援して下さるすべての方々に喜びを与えることができ、感謝している。決勝まで最善を尽くし、さらに大きな喜びを与えられるようにしたい」と述べた。
2024/08/22 08:45
https://japanese.joins.com/JArticle/322740