【コラム】政治改革だけが根本的な解決策=韓国

投稿者: | 2024年12月14日

経済規模世界10位圏の民主主義先進国、世界で歓迎されるK(韓国)文化、K原発、K防衛産業、世界10位の政府開発援助提供国…これが我々が考える韓国だった。ところが尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の非常戒厳宣言でこれらすべてがどれほど脆い政治的基礎の上に立っていたのか、その実情が天下に表れた。独善的な大統領の致命的な過ちで国民全員が裸の王様のようになった。「民主主義」と「自由」を叫びながら最も「非民主的」に国民の「自由」を毀損したため、彼は弾劾されなければいけない。しかし同時になぜこのようなことが起こるしかなかったのか、冷静に考えてみる必要がある。そうしてこそ危機の反復を防げるからだ。

尹大統領は正誤、黒白の観点で世の中を見る検事の世界観を越えられなかった。狭い人脈中心の人事に、激怒を繰り返して参謀が正しいことを言えなくなり、公私を区分できない姿を見せた。何よりも国民と野党を対話と妥協で一つにする政治的能力を全く発揮できなかった。いや、検事的な世界観のためにそのような必要を感じなかったのだろう。その結果、与党はいくつかの選挙で連続して敗れた。しかし彼は民心離反の兆候を無視する態度で一貫した。これに国民はさらに怒り、これがこの春の総選挙で与党の惨敗を招いた。尹大統領はその時点で自身の国政スタイルを大きく変えなければならなかった。国民に近づいて意思疎通をし、政策を随時説明し、スキャンダルには心から謝罪し、主権者である国民の心をつかむために努力するべきだった。ところがとんでもなく戒厳令を宣言し、全国民を敵に回してしまった。

 問題は我々の政治制度がなぜそのような人物を取り除いたり牽制したりできなかったかだ。一言でいうと、1987年体制が寿命を終えたからだ。過去40年間に4人の大統領が監獄に行き、1人は極端な選択をし、弾劾大統領が2人になろうとしている。こうした政界をいつまで放置するのだろうか。

韓国の政治制度は権力が大統領に集中した5年単任の帝王的大統領制だ。法によると、総理が相当な役割をするべきだが、責任総理制度は言葉だけが存在し、まともに実行されたことがない。さらに国会も巨大両党が談合して議席を占める。2020年の総選挙で二大政党に投票した人は3分の2だが、議席は90%以上だ。国民3分の1の政治的意思がそのまま無視される代表性が弱い制度ということだ。そして大統領が1%ポイントだけ(尹大統領の場合は0.73%ポイント)勝っても政治権力と資源を握る勝者独占の制度だ。

こうした政治構造でさまざまな弊害が発生した。何よりも与野党が国のために協力する動機が消え、与野党が死活をかけて争う激しい対立が日常化した。権力を一度逃せばすべてのものを失う勝者独占の制度であるからだ。国民が何を望んで国家のために何が重要かは眼中にない。合理的な政策を政府・与党が出しても野党は無条件に批判して拒否するしかない。その政策で与党が票をさらに獲得すれば、野党自身の執権の可能性が消えるからだ。

それで政権が交代するたびに政策は無条件に反対方向に進んだ。例えば、国の百年大計のためには盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府が推進した「地方均衡発展」政策が李明博(イ・ミョンバク)政権に引き継がれ、それ以降も続くべきだった。しかし政権が交代するやいなや破棄され、我々は今その大きな代価を払っている。李明博政権のグリーン成長政策も同じだ。同じ与党出身の後任の朴槿恵(パク・クネ)政権が引き継いで補完、発展させていれば、今ごろ韓国は環境分野の世界トップ走者になっているだろう。対北朝鮮政策、外交政策も政権が交代すれば覆って一貫性がないため、国際的な信頼度が落ちて久しい。経済は1%台の成長に低下して日本型長期沈滞に差し掛かり、出生率0.72と国自体が消滅していくが、むやみな力自慢と怒鳴り声ばかりが乱舞する。

今はもう権力構造を変えて、まともな政治家を選出し、牽制する装置を用意しなければならない時だ。現在の5年単任の大統領制を変えなければいけない。大統領個人の過ちが国全体を覆すこの制度が失敗した制度であることは十分に立証された。最終的には内閣制を念頭に置くものの、まずは国民が選んだ大統領が外交を担当し、国会が選出した総理が内政を担当する二元的政府制への改憲を推進する必要がある。また、政党の設立制度要件や選挙運動に関する規制を緩和し、政治新人の国会進入障壁を除去することが求められる。さらに多党制に進みながら代表性を高め、急変する韓国社会と遅れた政界の間隔を狭めなければいけない。比例代表議席の比率も大幅に拡大し、議員数も経済協力開発機構(OECD)平均の10万人あたり1人水準に調整する必要がある。

尹大統領の弾劾だけで今回の危機が終わるのではない。政界の根本的な改革がなければ次期、そしてその次にも繰り返されるだろう。政界は目の前の有利・不利計算に没頭して政治改革に向けた国民的念願を放置しないことを望む。氷点下の寒さの中でも路上に出てきた市民、民主主義を渇望するすべての国民も共に一つになって政治改革を成功させなければいけない。

尹永寬(ユン・ヨングァン)/峨山政策研究院理事長/元外交通商部長官

2024/12/14 12:03
https://japanese.joins.com/JArticle/327388

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