トランプ米大統領がホワイトハウスに復帰した直後、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に言及した。トランプは就任初日(現地時間20日)、記者の質問に答える形だったが、北朝鮮を「核保有国(nuclear power)」と呼び、「金正恩は私が帰ってきてうれしいはず」と述べた。本当にそうだろうか。
トランプは23日、北朝鮮に対話を提案すると発言したが、これが本心なら朝米首脳会談が実現するかどうかは金委員長にかかっている。ところがトランプに対する金正恩の内心はおそらく憎悪を超えて嫌悪レベルと考えられる。トランプの相次ぐラブコールにミサイルを発射し(25日)、金正恩が核関連施設を訪問(29日報道)したのを見てもそうだ。
2019年2月にトランプが首脳会談を一方的に打ち切った「ハノイの屈辱」の後、金正恩の対米反感はピークに達した。会談決裂後、金正恩は「私はこのために60時間以上も列車に乗って来たのか」と嘆いた。北朝鮮から指令を受けて活動し、検挙されて有罪判決を受けた「忠北(チュンブク)同志会事件」でも金正恩の当時の心境が表れている。北朝鮮が2019年3月12日、平壌(ピョンヤン)からスパイ集団に送った指令を見よう。北朝鮮は「トランプが初歩的な礼儀と外交規範も知らず、傍若無人に振る舞う」とし、トランプの「強盗的本性と破廉恥性」を知らせるよう指示した。金正恩は親書(2019年6月10日)でトランプに向けて「依然として我々の間の特別な深い友情が魔法の力として作用すると信じる」としたが、自身の平壌執務室ではハノイトラウマに苦しんだ。
その金正恩に向かってトランプは「私は彼と仲が良い」というメッセージを選挙キャンペーン中に繰り返し送り続けた。これを聞いた金正恩はより大きな怒りを感じただろう。相手から深い傷を負わされたと感じているのに、謝罪の一言もなく「我々は仲が良いので私が連絡すれば受けるべき」というトランプのメッセージは金正恩の立場では暴力的に聞こえるかもしれない。トランプもこれを知らないはずはない。したがってトランプの関連発言は意思疎通のための動きというより、金正恩に対する圧力の交渉術なのかもしれない。2017年の「炎と怒り」発言を思い出させる「最大圧力」の開始であり主導権争奪と見るのが合理的だ。
◆トランプに繰り返し意表を突かれた金正恩
現在の状況は2019年6月の板門店(パンムンジョム)朝米首脳会談を思い出させる。当時トランプは日本で開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席し、自身のソーシャルメディアに「あすDMZを訪問する予定だが、金正恩委員長がこれを見ていれば会ってあいさつができるだろうか」と書いた。ハノイで体面を損なったが、金正恩は呼応して板門店で対面した。事前協議にもなかったサプライズに多くの北朝鮮研究者は当惑した。唯一領導体制下の最高権力の首領である金正恩が、米帝国主義首脳のツイッターの呼び出しに応じる事例だったからだ。外交的な欠礼にもかかわらず金正恩が応じたことをめぐり「金正恩がトランプの罠にはまっている」という評価が多かった。金正恩は板門店で韓米連合訓練の中断をトランプに要求し、トランプは「繰り返し確約」した。しかし韓米は予定通り「同盟19-2」訓練を実施し、トランプは訓練中断自体を指示したことはないという事実が後に明らかになった。
ハノイに続いて板門店まで「だまされた」と考えた金正恩は韓国の青瓦台(チョンワデ、旧大統領府)に向けて「茹でた牛の頭」と言いながら腹いせした。金正恩はこうした一連の過程をはっきりと記憶するが、トランプは何もなかったかのように「彼は私のことが好きだった」という発言を繰り返しているため、金正恩の怒りは収まらないはずだ。
感情的な面はさておき、トランプの前向きな回答は金正恩の期待にははるかに及ばない水準だ。就任初日にトランプが北朝鮮を核保有国と話したが、これは北朝鮮の核を認めるというより交渉を控えた高度な心理戦であり得る。米国が公式的な表現で北朝鮮を「事実上(de facto)」核保有国または「不法(illegal)」核保有国と言及したのは事実だ。しかしトランプの発言が即興的な側面という点を看過してはいけない。波紋が広がると、ホワイトハウスは28日、「トランプ大統領は彼が執権1期目にしたように、北朝鮮の完全な非核化(complete denuclearization of North Korea)を追求するだろう」と強調した事実がこれを後押しする。バイデン政権が韓半島(朝鮮半島)非核化を引き続き明らかにしたのに比べ、むしろさらに鮮明な側面が強い。
ピート・ヘグセス国防長官の24日の上院人事聴聞会での発言も同じだ。ヘグセスはトランプが使った「核保有国」発言をしたが、彼の発言がどこに傍点を打っているかは行間を読む必要がある。ヘグセスは「北朝鮮の核とミサイルが米国と同盟国に対する脅威を高めている」とし、これを抑止して対応する具体的な案を強調した。ヘグセスはトランプ1期目に始めた米国の核力量強化、特に低威力核武器体系の現代化事業をより一層加速し、ミサイル防衛体系を改善して「北朝鮮の脅威に対応」すると明確にした。北朝鮮の核を認めるのではなく、北朝鮮の核への対応能力を大幅に拡充し、北朝鮮の核の効用性を低めるというのが核心だ。金正恩が聞こうとする正反対の言葉だ。
2025/01/31 14:32
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