【社説】脇見をすれば遅れをとるが…廃案危機を迎えた韓国「AI基本法」

投稿者: | 2024年5月7日

時価総額2兆ドル(約310兆円)は企業にとって夢の数字だ。これを達成して「2兆ドルクラブ」に名を連ねた企業は世界に5社しかない。アップル、アラムコ、マイクロソフト(MS)、エヌビディア、グーグル(アルファベット)だ。このうち最も目を引くのはエヌビディアだ。人工知能(AI)ブームの中で株価が大きく上昇し、2月に半導体企業では初めて「2兆ドルクラブ」に加わった。AI半導体のトップ走者として全世界AIチップの80%を掌握したエヌビディアは勢いづいている。SKハイニックスが1-3月期に「サプライズ業績」となったのも、エヌビディアのAI用グラフィック処理装置(GPU)に搭載される高帯域幅メモリー(HBM)を単独供給したからだ。

国家競争力を左右する未来の新事業を見つけようとする各国にAIは絶対に逃せない領域だ。AIの主導権を握るために主要国が迅速に動いている理由だ。米国は2020年に「国家AIイニシアチブ法」を制定し、2022年にAI分野に17億ドルを投入した。昨年はAIの安全性と信頼度を高めるための行政命令を発動した。欧州連合(EU)は3月、ビッグテックの大規模言語モデル(LLM)などに厳格な基準を適用する内容などを盛り込んだ「EU AI法」を通過させた。グローバルAI産業で域内の企業を保護するからだ。日本も今月中に「AI戦略会議」で法の規制を提案する計画だ。

 世界がAI戦争で勝機をつかもうと迅速に動いているが、もどかしくも韓国は足踏みしている。政争に没頭した国会の職務放棄で産業の基本枠組みとなる法案さえも作ることができないからだ。第21代国会の任期を20日余り残した状態で「AI基本法」と呼ばれる「人工知能発展と信頼基盤造成等に関する法律」制定案は自動廃案の岐路にある。

AI産業が規制の真空状態に陥り、企業は開店休業状態だ。データ学習過程で生じる各種副作用と無分別な活用がもたらす危険などAIの胎生的限界を考慮すると、可不可に関するガイドラインが早期に作成されてこそ企業が革新的な試みをするからだ。こうした法と制度的な基本枠組みを整備しなければ企業は訴訟などに巻き込まれかねず、ディープフェイクや詐欺などのさまざまな社会・経済的問題を処理するのにも困難が発生するおそれがある。

激しいAI戦争の中、脇見をすればすぐに遅れをとる。アップルの事例がこれを傍証する。「革新のアイコン」と呼ばれたアップルがAI革命に背を向けてAI生態系から疎外され、最近の売上高と株価の不振につながったというのが市場の評価だ。経済発展と雇用創出は企業の革新による新しい産業で可能になる。もう立法と規制の空白が産業の成長を阻んではならない時間だ。

2024/05/07 13:42
https://japanese.joins.com/JArticle/318339

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