「F35や潜水艦建造に必須なのに…」 中国レアアース輸出規制、トランプ関税が米国にブーメラン

投稿者: | 2025年4月16日

 米国のトランプ大統領が仕掛けた「相互関税」政策に対抗して中国がレアアースの輸出を制限したため、米国防総省ではF35戦闘機など主要な兵器の製造に問題が生じる懸念が浮上している。

 米ニューヨーク・タイムズ(NYT)は防衛問題に詳しい識者の話として「米国防総省と防衛企業は中国で採掘・加工されたレアアースに大きく依存している」「トランプ大統領の関税政策に対する報復として中国政府はレアアースの輸出を制限したが、この決定は米国の安全保障に対する警告射撃だ」と報じた。

 NYTによると、レアアースは現代の武器・兵器システムでは非常に重要な要素であり、特にレアアースの一つであるイットリウムはそのほとんどが防衛関連技術に必須だ。レアアースは電気モーターに使われる磁石の材料で、戦闘機や軍艦、ミサイル、戦車、レーザーなどに使われる。イットリウムは戦闘機エンジンの熱遮断用コーティングに使われ、高熱タービンによる飛行中の溶解を防ぐ。またレアアース磁石はミサイル誘導システムやドローン用小型電気モーターの重要部品だ。米国防総省によると、F35戦闘機1機に約440キログラムのレアアースが必要で、一部の潜水艦では4300キログラム以上のレアアースが使われている。

 世界のレアアース供給をほぼ独占している中国政府は、トランプ大統領による関税引き上げへの対抗措置として重レアアース6種(ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム)とレアアース磁石に対する特別輸出許可制を導入した。重レアアース6種は事実上、中国でのみ精製され、レアアース磁石も中国製が90%を占めている。今回は許可制にとどまっているが、国ごとの搬出量制限許可や全面禁止など、今後対応が厳しくなる可能性もあるとNYTは報じた。米国のシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)のエネルギー安全保障および気候変動研究ディレクターのグレースリン・バスカラン氏は「今回の決定は米国の安全保障に大きな影響を及ぼすだろう」と警告した。

 中国は2010年に日本と外交摩擦が起こった際にレアアースの輸出を中断したことがあり、その後米国はレアアースの備蓄を増やしてきた。しかしアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のダン・ブルーメンタル研究員は「15年前に比べて備蓄は拡大しているが、それでもあまり長くは持たないだろう」「米国の防衛企業はこの問題をもっと深刻に受け取るべきだ」と指摘した。英国のリップマン・ウォルトン&カンパニー社のアーロン・ジェロム氏は「中国は世界のレアアースのほとんどを採掘・精製しており、サプライチェーンを掌握している」と説明した。NYTは「中国はサプライチェーンを掌握することでレアアースに依存する武器の価格に一定レベルの主導権を行使しており、米国の防衛産業基盤に対して大きな影響力を行使できるようになった」と報じた。

 1980年代まで米国はカリフォルニア州のマウンテンパス鉱山でレアアースを採掘していたが、2002年に閉鎖し、その後は中国が市場を掌握した。トランプ大統領は第1次政権当時の17年に米国国内でレアアース生産を奨励する大統領令に署名し、バイデン前大統領も関連産業への投資を強化した。現在MPマテリアルズ社がマウンテンパス鉱山での採掘を再開しているが、中国の生産量には到底及ばない状況だ。米国防総省と防衛企業は現在、一定量のレアアースを備蓄しているが、業界事情に詳しい識者は「数カ月分に過ぎない」と分析している。防衛産業のある関係者は「国防総省の備蓄量も防衛産業を無期限運営するには不十分だ」と説明した。

イ・ヘジン記者

2025/04/16 10:11
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/04/16/2025041680045.html

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