米国のドナルド・トランプ大統領が自身のSNSに「落ち着け、すべてうまくいくはずだから」という短文を投稿したのは、米国が世界57カ国に非常識な「相互関税」(韓国には25%)を課してから9時間半ほどたった9日(現地時間)午前9時37分だった。彼は自らが下した決断に自信があったのか、4分後には「今こそ(米国の株や債券を)購入すべき時」という文を追加した。
それから4時間もたたないうちに、トランプ大統領は文字通り「屈辱的」な後退を選択することになる。正午ごろ、ホワイトハウスのオーバルオフィスでスコット・ベッセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官と3人で会合した後、午後2時18分ごろに、10%の普遍関税は直ちに実施するものの、「相互関税は90日猶予する」(中国は除く)という趣旨の文章を記した。トランプは「みんなキャーキャーと騒いで(yippy)少し怖がっている(a little bit afraid)」と述べた。
米国人がキャーキャーと騒いでおびえたのは、相互関税の影響で世界最高の「安全資産」と見なされていた米国債の価格が「急落」(金利急騰)したためだ。わずか1週間前までは3.9%だった10年満期の米国債の金利は、関税発動後、実に4.5%にまで跳ね上がった。米国債の金利が急騰すれば、政府の利子負担と米国の銀行が所有している国債の評価損が爆増することになる。その結果は「米国に深刻な金融危機が発生する可能性が高まる」(同国のローレンス・サマーズ元財務長官)というものだ。傲慢なトランプすら潔くひざまずいたことで、米国の「急所」が全世界にあらわになった。
今後注視すべきは、米国と退路のない「関税戦争」を繰り広げている中国の動向だ。中国の米国債保有額は今年1月現在で7608億ドル。香港のものまで合わせると実に1兆167億ドルに達する。日本(1兆793億ドル)に次ぐ世界第2位だ。
1995年に米国と自動車関税問題で激しい交渉を繰り広げた橋本龍太郎元首相は、2年後の米コロンビア大学での演説で、当時を振り返りつつ、「我々は何度も米国債を売りたいという衝動に駆られたことがある」と告白している。30年前に橋本が考えたことを、中国の習近平国家主席が考えられないはずはない。日本は同盟国である米国に対してそのような選択はできなかったが、中国の判断は異なりうる。中国が決断すれば、米国はそれを中国版「真珠湾攻撃」と受け止めるだろう。そのような意味で、米国債の売却は米国の逆鱗であり、中国にとっては開戦の覚悟なしに越えてはならない真のルビコンである。
2025/04/16 13:59
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