◆中国の海洋崛起、米国の危機
米国の造船、海運能力が衰退する間、中国は海洋膨張政策を進めた。中国政府は1300億ドルの補助金を投入し、数百の造船所を育成した。米国が年間5隻の商船を建造するのに対し、中国は230倍の約1700隻の建造能力を備えた。縮小した米国の国籍商船隊とは違い、中国は7000隻を運営中であり、関連産業従事者も約60万人にのぼる(米国は15万3000人)。特に現代海運の寵児といえるコンテナの50%、関連装備の97%を中国が生産する。軍艦の場合、2020年代初期にすでに米国を上回り、2030年には約140隻に差が拡大すると予想される。同時に中国はスリランカ、パキスタン、マリアナ、モザンビークなど8カ国に拠点港湾を建設し、国際サプライチェーンの基盤を構築した。また南シナ海に7つの人工島を建設して領有権を主張し、ジブチには海軍基地まで建設して影響力の拡大に総力を挙げている。西海(ソヘ、黄海)を含む世界の海で統制権を確保するための中国の動きが目立つ。
没落した米国の造船と海運産業は、中国の崛起が本格化しながら危機を感じている。バイデン政権当時に超党派的に新海洋戦略を用意し、トランプ大統領も韓国に造船協力を提案したのが代表的な例だ。今後30年間に莫大な連邦政府財政を投資し、造船と海運産業を画期的に復活させるのが新海洋戦略の核心だ。1兆ドル(約142兆円)以上の予算を投入して354隻の軍艦(艦艇)を建造し、「戦略的商船隊」を250隻に増やすということだ。こうした計画にもかかわらず、米国がすぐに過去の海洋強国の栄光を取り戻すのは容易ではない。トランプ大統領が韓国に造船協力を話したのは、成果が出るまで空白を満たすためのレベルと見なければいけない。
こうした状況を考慮すると、足元に火がついた米国は以前のように韓国を助ける余力がないとみる必要がある。むしろ韓国の造船技術と能力に手を差し出す状況だ。トランプ政権は同盟の韓国と日本は自ら守らせ、米国は台湾防御に力を注ぐ「臨時国家防御戦略指針」も用意した。米国の海上統制権確保のために中国との対決の核心が台湾という判断からだ。筆者が何度か主張したように台湾と韓半島「事態」は同時に起こる可能性が高い。にもかかわらず、これに対応するための我々の準備は事実上「ゼロ」だ。60年前に作られた「海軍歌」には「海を守ってこそ領土があり、領土があるところに祖国がある」という歌詞がある。その当時とは多くの状況が変わったが、海、特に海洋主権と物流産業を保護すべき韓国の切迫感はむしろ強まった。米国艦艇の整備(MRO)や建造など韓国が優位にあるK造船を前面に出した戦略的な接近と中長期政策を樹立する必要がある。同時に海技師など船舶関連人材の拡充も並行されなければいけない。
崔潤喜(チェ・ユンヒ)/元合同参謀議長/韓国海洋連盟総裁
2025/04/18 14:41
https://japanese.joins.com/JArticle/332737