2001年の中国の世界貿易機関(WTO)加入後、世界は中国の低価格工業製品輸出による「チャイナショック1.0」を体験した。しかし現在進んでいる「チャイナショック2.0」は、「中国製造2025」の成功を主軸として世界最高または近接する水準の技術で製造された先端産業の良質低価格製品の攻勢という点でその衝撃は大きく異なる。中国はすでに電気自動車と電気バッテリー、高速鉄道、AI、太陽光パネル、産業用ロボット、無人自動車などで世界最高の技術で世界市場に躍り出ることを推進している。2023年に世界の電気自動車販売台数1370万台のうち中国は820万台で60%を占め、電気自動車輸出は2020年の22万台から2023年には120万台と439%増加した。
中国政府は2025年の全国人民代表会議で「AI+」を政策目標として提示し、無人自動車、ヒューマノイドロボット、6Gネットワーク、知能型製造装備など、AI技術応用産業(具身智能)を集中育成する計画を発表している。
それだけでなく、国連工業開発機関(UNIDO)の報告書によると、世界の産業生産で中国が占める割合は2020年の6%から2030年には45%に拡大する見込みだ。これに対し米国の割合は2000年の25%から2030年には11%に縮小することが予想される。
◇中国、米国との紛争の中で貿易多角化推進
それなら「中国製造2025」を通じて育成した中国企業はどのように世界市場を拡張しているのか。その動力は家計消費を犠牲にする代わりに資源を戦略産業発展に注ぎ込む国家戦略にある。中国の戦略産業に対する政府産業支援金の割合は2019年基準で国内総生産(GDP)の1.73%で、韓国の0.67%、日本の0.50%、米国の0.39%より断然高い。その結果、政府支援を受ける中国企業は損失を恐れることがなく、WTOの反ダンピング調査実績で2021年から2024年間の対中反ダンピング調査件数は全体の41.7%に達することが明らかになった。
第1次トランプ政権の関税調整により米国の商品輸入で中国の割合は2018年の21.1%から2024年には13.3%に低下した。代わりに米国を除いた世界の輸出市場で中国の割合は11.5%から14.8%に拡大した。この統計は米国と中国の通商摩擦が中国の貿易多角化を促進したことを示す一方で、第2次トランプ政権の関税調整がさらに加速化することを示唆する。
すでに「チャイナショック2.0」は進行中であり、ベトナム、インドネシア、タイなど東南アジア諸国は価格競争力が高い良質の中国工業製品の輸入急増で深刻な製造業の空洞化を体験している。
韓国でも「チャイナショック2.0」は進行中だ。鉄鋼と化学産業は中国の低価格攻勢により深刻な衝撃を受け構造的不況に陥っており、中国製ロボット掃除機は2022年に韓国に進出してから2年で1位を占め、3年で販売が7倍に増加し韓国の家庭を占領した。また、1-3月期の中国からのオンライン個人輸入は前年同期比20%増加したのに対し、東大門(トンデムン)の衣類商店街は不況により空室率が11%を超えている。
◇韓国、科学技術と産業の革新が切実
韓国の対中貿易収支黒字品目数は2010年の237品目から2024年には142品目に減少した。さらに中国の先端技術が発展するにつれ中国の中間財が韓国の付加価値に及ぼす影響は増大し、これに対し韓国の中間財が中国の付加価値に及ぼす影響は低くなる傾向が進んでいる。
中国の先端技術発展は、完成品で韓国製との技術格差を縮小(半導体、自動車など)したり、優れた製品(電気自動車、ロボットなど)を拡大すると予想されて、特に価格競争力で韓国国内市場に深刻な影響を及ぼす可能性が高い。
なぜ韓国ではディープシークのような世界的革新企業が出てこないのか。その答えは中国が「中国製造2025」で科学技術の革新生態系作りに成功し、産業競争力を画期的に育てたこの10年間とは反対に、韓国は3代の政権にわたり科学技術と産業政策が混乱を繰り返し、革新生態系を苦境に追いやったためだ。その結果、韓国経済も「チャイナショック2.0」の荒波を受けている。
手遅れになる前に教育制度と研究開発支援制度を大々的に手術して、科学技術革新体系と産業政策を政治から分離し、科学技術生態系を長期的に一貫して育成する政策推進が切実だ。
金東源(キム・ドンウォン)/元高麗(コリョ)大学経済学科招聘教授
2025/05/26 13:02
https://japanese.joins.com/JArticle/334197