「日が沈まない企業になる」…TSMC、米日独超えて中東まで進出か

投稿者: | 2025年6月2日

世界最大のファウンドリー(半導体委託生産)企業である台湾のTSMCがアラブ首長国連邦(UAE)に大規模半導体生産施設(ファブ)の建設を推進するという報道が出てきた。トランプ政権が中東に対する半導体輸出規制を緩和しTSMCの世界拡張戦略にも弾みが付く姿だ。台湾では「TSMCは日が沈まない企業になるだろう」という見方まで出てきた。

◇TSMCの中東進出議論に「日が沈まない企業になる」

 ブルームバーグは先月30日、「TSMCがこの数カ月間に米国のウィトコフ中東担当特使、UAEの投資機関MGXと何回も会合を持った」と報道した。これらはTSMCが米アリゾナ州に造成中である6つのファブと同様の形で、UAEにも大型ファブ団地(ギガファブ)を建設する案を話し合ったという。

TSMCは報道に対し「市場のデマには論評しない」と明らかにしたが、供給網多角化に向けたTSMCの海外生産拠点確保は着実に続いている。すでに運営中である米アリゾナ州と日本の熊本工場に続きドイツのドレスデン工場も昨年着工され2027年の稼動を目標にしている。台湾工商時報は「TSMCが中東にも工場を作るならばそれこそ『日が沈まない企業』になることもできる。ただ台湾に返ってくる経済的付加価値は徐々に減るかも知れない」と評価した。

◇AIチップ輸出規制緩和に「青信号」

TSMCの中東進出説は今回が初めてではない。昨年にもサムスン電子とTSMCがUAEに大規模ファブを建設するプロジェクトをUAE政府と協議中という報道があった。両社はUAE政府系ファンドを通じて1000億ドル(約14兆円)規模の事業を議論したとされる。だがバイデン政権が中東で生産された半導体チップの中国への迂回輸出を懸念し、米大統領選挙日程などが重なったことで後続議論は事実上中断された。

ところがトランプ政権が人工知能(AI)半導体に対する中東政策基調を変えTSMCの中東進出説に再び火が付く様相だ。トランプ米大統領はサウジアラビアとUAEにエヌビディアの最新AIチップ数十万個を輸出することで合意するなどバイデン政権の輸出規制をひっくり返し実利を選んだ。

ただTSMCが台湾企業であるだけに米国政府の承認の有無が今後の中東進出の核心要素として作用する可能性が大きい。ブルームバーグは消息筋の話として「一部幹部はTSMCの中東進出が米国の国家安全保障と経済に脅威になりかねないという懸念を示している。着工時期も依然として不確実だ」と伝えた。バイデン政権時代に議論されたUAEでのチップ生産と船積み過程に対し米国が監督権を持つ案も再び議論される可能性がある。

◇米国の承認がカギ…3日の株主総会に注目

さまざまな制約にもかかわらずTSMCが中東進出を持続的に模索するのは、AIインフラの成長の可能性のためだ。中東は高温で乾燥した気候で、素材・部品・装備など必須の半導体生態系は皆無であることから半導体産業とは距離が遠い地域とみられてきたが、石油以降に備えた未来産業としてAIに目を付けて天文学的なインフラ投資を計画している。

ファウンドリー企業の立場では火力・原子力・再生可能エネルギーと広く安定した電力供給網と安い電気料金、労組リスクがない点も中東の最大の強みだ。TSMCの魏哲家会長が米アリゾナ工場運営の最大の障害と指摘する各種環境規制もやはり中東では比較的少ないものとみられる。

TSMCの中東進出が現実化する場合、人材確保は台湾本社から人材を派遣する方式で対応する可能性が大きい。台湾メディアは3日に開かれるTSMCの株主総会で中東ファブ建設と関連した議論が出るものと予想している。

2025/06/02 13:03
https://japanese.joins.com/JArticle/334492

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