中国の人工知能(AI)研究と産業現場を視察する「平和オデッセイ2025」に参加して得た感想を一言で言うなら、中国は非常に切迫した思いでAI時代への転換に備えているということだ。もちろん中国を訪れると、そのスケールの大きさにいつも驚かされる。ソウル汝矣島(ヨイド)の面積の半分ほどに相当するファーウェイ(華為)の「練秋湖R&Dセンター」、1万を超えるベンチャー企業が入居する杭州AIタウンなどは想像を超える規模だった。中国の広大な国土と人口から生まれるこのような違いは当然かもしれないが、今回の訪問ではそれ以上に、韓国と中国のもう一つの大きな違いを実感した。つまり、中国は切迫感を持って産・官・学が一体となってAI時代への転換に全力を注いでいるのに対し、韓国は切迫感も不足し、言葉ばかりで実行が伴っていないという点だ。
◇中国、アルファ碁以降にAIを核心戦略に設定
実際に人工知能の力を一般の人々が初めて実感したのは、2016年3月、韓国で行われた李世乭(イ・セドル)九段とAIプログラム「アルファ碁」の囲碁対局だったに違いない。当時、ほとんどの専門家は、囲碁は手の数が多すぎるため、コンピューターが人間のトッププレイヤーに勝つのは難しいと予想していた。しかしアルファ碁は李世乭九段に4勝1敗で勝利し、韓国ではこれをきっかけにAIと第4次産業革命について語る人が増えた。だが汎国家的政策や計画が積極的に推進されることはなかった。
中国ではこの1年後の2017年5月、アルファ碁と柯潔九段の対局が行われた。ここでもアルファ碁は3連勝し、柯潔は最後の対局で涙を流したという。これを契機に中国政府はAIを国家の中核戦略に設定し、「コンピュータビジョン、ディープラーニング、ハードウェア、AI応用」へと続く体系的な技術発展ロードマップを策定した。言葉だけが先行していた韓国とは違い、中国は国家レベルの政策を実際に策定し、実行に移した。
その後7年が経過した2024年、英国のトータス・メディア(Tortoise Media)が分析した「グローバルAIインデックス」によると、米国が1位(100点)、中国が2位(53.9点)であるのに対し、韓国は27.3点で6位にとどまっている。
◇韓国、「日本を追い越した」という慢心が革新の足を引っ張った
では、なぜこのような違いが生まれたのか。筆者の考えでは、最大の理由は韓国の早すぎる慢心と、それに伴う安易な姿勢だ。
韓国は1990年代、「産業化は遅れたが情報化は先行しよう」というスローガンのもとでデジタル時代に備え、世界的なIT強国へと発展した。韓国政府は全国に高速インターネットインフラを整備し、民間企業はデジタル技術でアナログ時代に安住していた日本の電子メーカーを追い抜き始めた。ネイバー(NAVER)やカカオ(Kakao)などのインターネット企業、ネクソンなどの世界的ゲーム企業もこの時期に誕生した。ついには2023年、1人あたり国民所得が日本を上回る成果を出し、多くの国民が「ついに先進国になった」と歓喜した。
だがこの成功は、韓国特有の「ハングリー精神」を削いでしまったようだ。まるで日本がアナログ電子製品で世界を席巻したことで、デジタル時代への備えを疎かにしたのと同様に、韓国も情報化時代の成功経験が慢心へとつながり、AIという新たな挑戦に対応する改革の意志が弱くなったのだ。
まず政府を見てみよう。杭州の神経科学スタートアップ「ブレインコ(BrainCo)」が開発した高性能の義手・義足は、障がい者の生活を飛躍的に改善することができる「フィジカルAI」製品である。2023年アジアパラ競技大会開会式でこの義手を装着した選手が聖火を点火し、世界的な注目を集めた。だがロボティクス専門家によれば、技術自体よりもその製品がすでに市販されているという事実のほうが驚きなのだという。
2025/07/17 15:32
https://japanese.joins.com/JArticle/336412