米中関税戦争が長期化する中、中国がレアアース(希土類)をはじめとする戦略鉱物を規制するため、少なくとも2000品目の輸出許可の全面的な見直しを進めていることが分かった。北京の産業筋によると、中国商務省は今年4月から既存の輸出規制品目に含まれる鉱物だけでなく、それに関連する部品、化合物、技術製品の戦略的価値を再評価し、輸出にブレーキをかけている。現在明示されている輸出規制対象は2月と4月に米国をターゲットとして輸出を阻止したレアアース、戦略鉱物12種、昨年末に見直された軍民両用品目リストに明示された700品目だが、部品、化合物などの「派生商品」まで見直し、規制対象を2000品目以上に増やす格好だ。韓国政府関係者は「2010年の日本に対するレアアース輸出規制以降、15年ぶりに中国が戦略鉱物の輸出体系を全面的に見直している。中国の鉱物サプライチェーン(供給網)再構築で必須原料の輸入が阻まれた韓国の電子製品、重電メーカーは既に被害を訴えている」と話した。
中国の大規模な鉱物サプライチェーン再構築は、「中央による統制強化」「管理品目の全面拡大」が柱だ。鉱物生産の全段階を追跡するシステムを完備し、昨年末には「二重用途(軍民両用)物資輸出統制条例」で、鉱物輸出の司令塔を商務省に一本化した。規制効率を高めるため、単一省庁の管轄へと集約したのだ。規制品目も電気自動車(EV)、電池など世界の先端産業の必須材料に拡大している。中国は今年4月、米国をターゲットとして、サマリウム、ガドリニウム、トビウム、ジスプロシウム、イットリウムなど事実上中国が100%採掘と精製を独占する7種類のレアアースの輸出を規制すると発表した。レアアース17種のうち、防衛産業と先端技術に欠かせない重レアアースだけを選んだものと受け止められた。
■米では自動車工場ストップ、戦闘機生産にも支障
中国の鉱物サプライチェーン再構築により、一般産業財として扱われていた品目の海外輸出が遅れるケースが急増している。中国税関で中国企業が韓国、米国などに輸出する鉱物の通関手続きが突然中断され、商務省から該当鉱物の「輸出適合性」について、文書で確認を受けるように通知されている。北京の消息筋によると、5月からは電子回路部品(半導体チップ)や特定鉱物が少量でも含まれた原材料が規制対象ならずとも自動検証対象となり、輸出が滞る事例が相次いでいるという。英フィナンシャルタイムズは「中国税関が公式な規制対象ではないチタンロッド、ジルコニウムチューブのような一般金属製品まで通関を遅らせている」と報じた。
中国の鉱物統制は米国の中国に対する半導体、人工知能(AI)、電池分野でのけん制に対応するカードとみられる。国際エネルギー機関(IEA)によると、中国は世界のレアアース生産の約70%、精製・加工の92%を占めている。米地質調査所(USGS)も2020~23年に米国が輸入したレアアースとその化合物の約70%が中国産だったことを明らかにした。中国は第一次トランプ政権当時の米中貿易戦争ではレアアース規制を前面に掲げることができなかったが、先端技術、サプライチェーン自立で成果を収めた現在は、米国を標的ととする鉱物規制をためらいなく強化していると分析されている。
戦略鉱物規制を強化する中国の最終目標は、戦略鉱物の不法な採掘・密輸を完全に防ぐ国家管理体系の構築であることが分かった。2010年に日本との尖閣問題でレアアース輸出制限を敷いた際、密輸によって失敗した経験を繰り返さないようにするため、漏れのない管理体系を構築することだ。
それに先立ち、中国は2010年代からレアアース企業の統合を大規模に進め、採掘から加工まで中央による統制が可能になった。広東稀土産業集団を昨年吸収した南部の中国稀土集団、北部の中国北方稀土集団高科技の2社が鉱山採掘、製錬、分離工程の生産割当量(クオータ)を独占している。中国は2023年、鉱物輸出企業が輸出前に取引内訳、顧客情報、取引量を報告することを義務づける「追跡システム」を導入した。昨年はレアアース生産の全過程追跡システムを構築した。今年2月には鉱物関連技術の流出を徹底して取り締まり、中国企業は自発的に「リチウム抽出用ろ過装置」の輸出を中断した。
2025/07/22 07:00
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