エプロン姿で食事を作る父、北朝鮮ドラマに垣間見える社会変化の兆し

投稿者: | 2025年7月22日

 北朝鮮社会の変わった風俗図を盛り込んだ朝鮮中央テレビの連続ドラマ『ペクハクボルの新春』が最近、最終回を迎えた。

 7月10日、北朝鮮の対外宣伝用月刊誌「錦繍江山」の7月号は「テレビ連続ドラマ『ペクハクボルの新春』(以下ペクハクボル)は4月からテレビで放映され、高視聴率を得た」と報じた。

 報道によると、ペクハクボルは国家映画総局テレビゾーン劇創作社第2創作団が制作した全22部作のドラマだ。4月16日に朝鮮中央テレビで初放送され、6月24日で放映終了となった。これは朝鮮中央テレビが2023年1月に放送した『ある検察一軍の手記』以降、2年ぶりに手掛けた新作ドラマだった。

 同ドラマには、従来の北朝鮮ドラマには見られなかった情緒と話法が盛り込まれた。

 代表的なシーンがドラマの中でエプロンを着けた男性が妻と娘に食事を準備する様子だ。この家族たちは、こうしたことが至って日常的といった様子で受け入れている。

 家父長的な認識の根強い北朝鮮で、男性が家事や育児に参加する家庭的な父親の姿を演出するのは珍しいことだ。

 青年たちの切ないロマンスを取り扱ったのも異例のことと言える。

 ドラマの中の農業研究士キョンミ(俳優リ・ユギョン)と検事ヨンドク(俳優チェ・ヒョン)は4年以上付き合っているものの、ヨンドクの母の反対に遭う。

 この過程でヨンドクの母はキョンミを訪ね、「あなたの方から先に手を引いてほしい」と要求し、ヨンドクは別れを告げるキョンミに「このまま終わらせるわけにはいかない。私の胸に深い傷を与えるために私たちが出会ったわけじゃないじゃないか。本当にすまない。私が父と母の思いが何とか変わるように手を打っておくよ」と言って思いとどまらせる。

 このシーンは、過去の韓国ドラマのクリシェ(決まり文句)を思い出させる。

 住民啓蒙(けいもう)と体制の宣伝目的が強い北朝鮮の芸術作品の特性上、個人の内密な感情表現に乏しかった点を考慮すると、同作品は愛と別れを前に苦しむ青年たちの感情を真っ向から取り扱った新しい試みと解釈される。

 検事のヨンドク役を演じた俳優チェ・ヒョンは、同作品を通じて北朝鮮の視聴者から絶大な人気を得ることとなった。「錦繍江山」7月号は「俳優のチェ・ヒョンは最近映画に出演し始めた新人俳優だが、今回はまた別の個性的な姿で若い女性たちの心をつかんでいる」と解説した。

 今回のドラマは北朝鮮当局が2020年末、韓国映像物の視聴者に最大で懲役15年の刑を宣告することにした「反動思想文化排撃法」を制定し、韓流拡散を阻止する中で放映された。さまざまな海外映像物に慣れている若年層を考慮し、ロマンス関連の演出を強化したものと思われる。

 ただ、今回のドラマも素材そのものは従来の北朝鮮ドラマと大きく変わらない。

 モチーフ自体を1990年代の人気農村ドラマ『ソクケウルの新春』から借用し、「最も立ち遅れた農場に里党秘書としてやって来た主人公が人格的にも能力的にも欠陥がある農場員を愛で導き、真の愛国農民として育て上げる」ストーリーだ。

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)機関紙の「朝鮮新報」は最近のレビューで「党が提示した新時代の農村革命綱領と政策が非常に具体的に、生活的に、集約的に反映されている」と評価した。

キム・ジャア記者

2025/07/22 08:40
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/07/21/2025072180004.html

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