【コラム】トランプ政権との交渉、韓国の安全保障から取りまとめなくては

投稿者: | 2025年7月24日

運命の1週間だ。トランプ政権が2度猶予した相互関税施行が8月1日に迫っている。22日に韓国と同じ25%を通知されていた日本が相互関税15%に合意し、一部で提起されたトランプ大統領の「TACO(Trump always chickens out=トランプはいつもビビッて退く)」再演の可能性は小さくなった。

トランプ大統領の同盟圧力をめぐり、同盟を解体しようとしているのかとの怨嗟の声が世界各地から出ているが、貿易収支赤字(2024年基準9184億ドル)と安全保障負担を大幅に減らしたいというトランプ大統領の独走は止まる兆しがまったく見られない。いまや状況は具体的なカードをテーブルに載せ、トランプ大統領が通知した関税率をどれだけ下げられるかという大詰めのやりとりをする局面に差しかかった。

 これまで米国と合意に達した国は日本(15%)を含、英国(10%)、ベトナム(20%)、インドネシア(19%)、フィリピン(19%)の5カ国だ。米国の主要貿易相手国のうち、欧州連合(30%)、韓国(25%)、台湾(32%)程度が通商、投資、安全保障などで組み合わされた高次方程式を解かなければならない境遇だ。韓国政府の動きも緊迫している。大統領室の魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長に続き、産業通商資源部の金正官(キム・ジョングァン)長官、具潤哲(ク・ユンチョル)経済副首相と呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長ら政府当局者が今週ワシントンに総出動するのも状況がどれだけ厳しいのかを如実に示している。

現在まで米国は、通商分野ではコメや牛肉など農畜産物の市場開放と、オンラインプラットフォーム法の撤回など非関税障壁の撤廃、投資分野ではアラスカLNGプロジェクトへの参加と対米投資ファンド組成、安全保障分野では国防費と防衛費分担金増額、戦略的柔軟性強化などの請求書を突きつけている。しかし韓国政府が米国に何を与えて、何を得ようとしているのかはそれこそ真っ暗闇だ。交渉の特性上、機密維持が避けられない側面はあるが、事案のひとつひとつが国民の暮らしと企業の未来、韓国の安全保障に影響を及ぼす重大な懸案であるという点からもどかしい状況だ。

これまでに明らかになっているトランプ大統領発の請求書に基づいていくつ提案をしようとするならば、在韓米軍に象徴される韓米同盟と北朝鮮の非核化など「生きるか死ぬか」の安全保障関連交渉は韓国の安全保障強化という観点からアプローチすれば良い。ロシア発の安保脅威にさらされた北大西洋条約機構(NATO)の欧州連合(EU)加盟国が予算圧迫にもこれまで国内総生産(GDP)の2%に満たなかった国防費を5%(直接軍事費は3.5%)に増やすことを決断したのも同じ理由からだ。

インド太平洋地域は中国、ロシア、北朝鮮の安保脅威が集中した未来の火薬庫だ。戦争に備えてこそ戦争を抑止できる。こうした脈絡からトランプ大統領の国防費増額要求は韓国の安全保障のためにも検討できるカードだ。今年の韓国の国防費は61兆6000億ウォンでGDPの2.32%だ。2035年までにGDPの3.5%水準を達成するには韓国の潜在成長率2.0%を基準として毎年5.5~6%水準で増額しなければならないという計算が出ている。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の2018~2020年の自主国防推進により国防費増加率が7~8%水準だったこともあった。在韓米軍の防衛費分担金増額要求も国防費増額の枠組みの中で対応できる。

通商交渉はトランプ大統領の要求を適切に受け入れる線で妥協案を用意すれば良い。財界の代表的な米国通である韓国経済人協会の柳津(リュ・ジン)会長はこの前の記者懇談会で「トランプ大統領が望むものが何かよく判断し、いまは損害を少し出したとしても、未来に向けて私たちが出すべきものは出すべきではないかと思う」という現実論を展開した。中国だけでなくEUや日本など主要対米輸出競合国より良い条件を得られればむしろ「ヘッドスターター(先頭走者)」になれるという自信も示した。もちろん妥協によって影響が懸念される国民に対する政府の政策的配慮が伴わなくてはならない。

トランプ大統領の任期はまだ3年半残っているが、中長期的観点からトランプ大統領以降を見据えた交渉を進めたら良いだろう。1世紀にわたる米中覇権競争という話のように、トランプ大統領以降もインド太平洋地域の戦略的環境は変わらないだろう。トランプ大統領という木だけ見ずに森を見る観点から韓米同盟の未来像を描く交渉を進めれば良い。

この過程で、一度約束すれば取り返しがつかない合意と、取り返せる合意を区分すれば良い。例えば対米投資や国防費の増額は可逆的だが在韓米軍の歴史を振り返ると2万8500人の在韓米軍縮小や戦時作戦権還収は戻しにくいのが現実だ。韓米軍事同盟の未来に影響を及ぼす不可逆的な合意は最大限慎重でなければならない。

チャ・セヒョン/論説委員

2025/07/24 13:10
https://japanese.joins.com/JArticle/336702

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