キム・ヒョンソク独立記念館長の光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)記念演説で、「韓国の光復を世界史的観点から見れば、第二次世界大戦における連合国の勝利で得た贈り物」という発言は、ニューライトの歴史観を反映しているとして批判されているが、実は1945年の解放に対する韓国保守主流の見方の延長線上にあるものだ。このような発言は初めてではなく、1987年の民主化以前まで保守政権勢力で公然と行ってきたものという点は示唆的だ。日帝強占期(日本の植民地時代)に抗日武装闘争を排斥し、解放後には親日附逆派を温存して国家建設の主役とした韓国保守のコンプレックスがうかがえる。
終身執権を狙った朴正煕(パク・チョンヒ)大統領は1970年1月21日、治安・予備軍関係者中央会議で、このように訓示した。「独立運動をした方々は韓国の独立を自身たちの功労だと自慢しますが、もちろんそのような民族的な精神が未だ消えることなく生きていたことは称賛に値しますが、実際に私たちが解放を迎えて独立を手に入れたのは、連合国の勝利によって偶然に独立の機会を得たためです」
朴正煕に次ぐ新軍部出身の全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領も、同じ観点で日帝からの解放を振り返った。全斗煥大統領は1981年の光復節記念演説で、このように述べた。「連合国の勝利と日本の敗戦という民族外的な状況が8・15光復のもう一つの大きな決定的要因だったことは周知の事実です。…私たちは、自分たちの過去を真実以上に美化することで、空虚な自尊妄大に陥る必要は全くありません」
自尊妄大、自惚れて何も考えず偉そうに振る舞うという意味だ。奪われた国と主権を取り戻した日を記念する式典で、抗日独立運動の役割を美化する錯覚に陥るなという国家指導者の警告は実に驚くべきことだ。第2次世界大戦直後、韓国をはじめ多くの第3世界国家の独立が連合国の勝利に基づいていることは否定できない事実だ。だが、国家指導者があえて「過去の独立運動をむやみに美化するのは止めよう」と言うのは、また別の次元の政治的含意を持つ。
朴正煕と全斗煥の発言は、解放に対する韓国保守の認識をそのまま反映している。日帝の統治が長く続くとみて、日本と協力して自治権を得ることが最善だと考えた保守主流は「突然」解放を迎えると、自身の弱点を隠し政治的正統性を確保するために、「解放は連合国の贈り物」という外在的解放論を強調した。社会主義系列の抗日武装闘争や上海臨時政府の武力活動は意図的に排斥し縮小した。第1次トランプ政権時代、朝米首脳会談を進めるドナルド・トランプ米国大統領と文在寅(ムン・ジェイン)大統領を非難する一方で、集会では星条旗を誇らしげに振る右派デモ隊の姿は、まさに8・15光復に関する本来の認識を映し出している。
しかし、1987年の民主化以降、変化が訪れた。軍部独裁の終息後、革新であれ保守であれ、政治指導者たちの発言から、もはや「解放は連合国の贈り物」というような単線的な表現は姿を消した。「1945年の解放は連合国の勝利に基づくが、我が民族の至難な抗日独立闘争の成果でもある」という複合的な見解が一般的な認識として定着した。民主化ムードの中で、日帝下の独立闘争と解放後の政治状況をバランスよく捉えようとする考えが、韓国社会の全般に広がったためだろう。
再び過去に回帰したのは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が発足してからだった。尹大統領は就任後2年間、光復節記念演説で、日帝の強制動員や軍の慰安婦問題など、歴史問題については一言も言及しなかった。その代わり「自由民主主義と共産全体主義が対決する分断の現実で、反国家勢力とその追従勢力に屈してはならない」と主張した。キム・ヒョンソク館長の今年の演説は、尹大統領の発言の延長線上にある。解放直後の左右対立の状況で、左派撲滅を強調し、保守の正当性確保のために抗日独立運動の価値を蔑んだ保守の認識と軌を一にする。
尹前大統領はすでに弾劾され、拘束された。キム・ヒョンソク氏が独立記念館長職を維持するのもそれほど長くはないだろう。しかし、最近の前与党「国民の力」の極右化の動きを見れば、歴史認識を数十年前に戻すことを止めるどころか、むしろ加速化する可能性が高い。国民の力の党代表選挙でいわゆる「賛弾」(弾劾賛成)候補らが全員敗北し、「反弾」(弾劾反対)候補2人が最終決選に上がったのは象徴的な例だ。最大野党が政治だけでなく、歴史、文化、外交などすべての分野で時計の針を巻き戻し、対立を深める温床となるのは、本当に懸念すべきことだ。
2025/08/25 18:49
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