日本と台湾は2013~2014年以降、バリューアップ(企業・株主価値向上)、コーポレートガバナンスの改善、資本市場の先進化に向けた改革を本格的に推進した。日本はこれを通じて株価上昇はもちろん、企業の資本効率性と競争力を高め、国家経済が「失われた30年」から抜け出す踏み台を築いた。台湾も経済規模に比べて証券市場が高評価される「株価プレミアム時代」を謳歌している。一方、韓国はアジア通貨危機以後、社外取締役の導入などコーポレートガバナンスの改善で一部は成果を上げたが、財閥体制という壁を前に事実上足踏み状態から脱することができなかった。コリアディスカウント(韓国証券市場の低評価)の長期化、企業の収益性低下と経済の低成長の固定化は、韓国が10年以上「井の中の蛙」にとどまっていた結果だ。6月の李在明(イ・ジェミョン)政権発足を機に、政府と与党は「KOSPI5000時代」達成と株主権益の保護、コーポレートガバナンス改善を掲げ、第1次・第2次商法改正を含む改革を本格化している。しかし、財界と保守野党の強い反発で見通しは不透明だ。この連載記事では今後3回にわたり、日本・台湾の事例が与える示唆点と韓国の改革の課題を探る。
________________■金融庁、取引所、国民年金が緊密に協力
「日本の改革の中核となるのはコーポレートガバナンス改革だ。株価上昇は付随的な効果にすぎない」
韓国では日本が2013年以後10年以上推進し続けてきたバリューアップ改革の成果として、株価上昇を挙げる。トヨタやソニーなどの看板企業が属している東京証券取引所のプライム市場の指数である日経平均株価は、8月19日に4万3876円で最高値を記録した。昨年7月に4万2000台を突破し、バブル崩壊前の最高値を34年ぶりに超えた。
だが、先月25~28日に東京で会った金融当局、金融界、法曹界、学界の人々は、口をそろえて改革の中心にコーポレートガバナンス改革を挙げる。東京証券取引所の渡邉浩司上場部長は「日本経済を長い不況から回復させるにはコーポレートガバナンスから改革しなければならないというコンセンサスがあった」と強調した。
野村資本市場研究所のレポートによると、コーポレートガバナンス改革の成果として、閉鎖的な取締役会の変化が強調された。プライム市場の場合、独立の社外取締役が3分の1以上を占める上場企業の比率が、改革前である2007年8月の9.9%から今年7月基準で98.8%へと上がった。一般株主の議決権を制限する系列会社・取引銀行のような政策保有比率の減少、株価上昇を制約するポイズンピル(毒薬条項)など買収防衛策導入企業の減少、株価上昇と配当を合わせた総還元額の改善、親会社の少数株主の被害を生む親子上場企業の減少も全て改革の成果だ。
日本のコーポレートガバナンス改革は、取締役会の変化と株主重視の経営を通じて経営改革につながった。野村資本市場研究所の西山賢吾主任研究員は、改革の成功の秘訣について「コーポレートガバナンス改革を通じた経営革新を国家成長戦略とし、10年以上継続して推進したこと」だと強調した。
日本が「失われた30年」の不況のトンネルから完全に抜け出したと断定するのはまだ早い。だが、コーポレートガバナンス改革をテコに経営革新で成果を見せ、株価も上がり、日本経済が長い無気力症から抜け出す踏み台を設けたという評価は高い。西山主任研究員は先月25日、東京でハンギョレの取材に応じ「コーポレートガバナンス改革が日本企業の競争力強化と経済回復に貢献した」と話した。
コーポレートガバナンス改革が成果を上げた秘訣は何だろうか。独立した社外取締役の拡大を通じた取締役会の変化は、株主の要求に耳を傾け、外部の環境変化に能動的に対処する基盤となった。これを通じて資本効率性と収益性を重視する経営に転換することにより、企業発展と経済成長を同時に成し遂げる好循環戦略が功を奏した。
日本を代表する大企業の一つである日立製作所は、2008年に破産の危機に追い込まれた後、政府の改革と軌を一にして取締役会変革などの構造改革、周辺事業や赤字事業の整理、未来成長事業への選択と集中などを通じて再生に成功した代表事例に挙げられる。取締役会はこの16年間で最高経営者が4回変わる中でも、改革の強力な支持者であり経営の監視者の役割を果たした。取締役12人のうち9人が社外取締役(4人は外国人)だ。日本最大の法律事務所である西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士は「社外取締役が増え、理事会が外部の環境の変化により柔軟に対応し、資本効率性を重視する経営をするようになった」として「PEファンドが企業構造調整の時に大きく役立った」と話した。
金融庁(FSA)と日本取引所グループが2014~2015年に制定した「コーポレートガバナンス・コード」と「スチュワードシップ・コードは、改革を率いる車の両輪の役割をした。コーポレートガバナンス・コードは、取締役会の責任経営、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上、利益創出能力と資本効率改善を明示している。株主の権利保障と積極的な対話も要求した。受託者の責任を明示したスチュワードシップ・コードは、機関投資家が企業の変化と改革を促す役割を果たすようにしている。韓国の金融委員会と金融監督院を合わせた機能である金融庁の関係者は「二つのコードを通じて、企業価値向上のために企業と投資家間の建設的な対話が必要であり、持続的な対話が重要であるということを認識させる成果を上げた」と話した。
________________■自発的な改革をベースに「圧迫」を並行
東京証券取引所が2023年、上場会社に「資本コストや株価を意識した経営」を要請したことは、資本効率性重視の経営の起爆剤となったと評価される。東証は自己資本利益率(ROE)と株価純資産倍率(PBR)の低い企業に改善計画を開示するように強く求めた。東証の渡邉浩司上場部長は「当時(日本経済の)穏やかな水面に石を投げ、大きな波紋を起こしたという話が取りざたされた」と語った。世界最大の年金基金の一つである日本の国民年金も、改革の助力者の役割を果たした。資産運用会社に議決権行使など積極的なスチュワードシップ・コード履行を要請した。資産運用会社を選定する際、履行実績を反映した。日本の改革の成功の秘訣として、政府が10年以上政策を持続して推進したことと共に、金融庁・証券取引所・国民年金のような公的機関の緊密な連携が挙げられるのもこのような理由からだ。
日本の改革は自発性が原則だ。改革のガイドラインとなったコーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードは法的な強制力のないゆるやかな規範だ。これは、韓国のコーポレートガバナンス改革が法改正を中心に進められているのとは対照的だ。かつて日本も取締役の株主に対する忠実義務に関して立法化の議論があったが、企業の反対で断念した。その代わり、コーポレートガバナンス・コードに関連内容を明示した。
日本も改革のスピードを上げるために自発性と圧迫を並行する兆しがみられる。日本の上場企業全体のROEは、改革前の2008年3月の8.5%から2025年3月には8.9%へと小幅な上昇にとどまっている。米国企業の20%台前半とは大きな差がある。また、企業が保有する現金性資産(現金+預金)は、全産業基準で2007年6月の145兆2千億円から2025年3月には268兆7千億円へと2倍近く積み上がった。配当など株主還元を拡大したにもかかわらず現金性資産が増えたのは、研究開発・設備投資が不十分だったということだ。東証が2022~2023年に発表した市場改編と上場および維持条件、資本コストと株価を意識した経営の要請は、自発性に圧迫を加味した転換点という評価が出ている。PBRが1倍を割っている企業は改善計画を開示しなければならない。西山主任研究員は「改革をしない企業は生き残れないという認識を植えつけている」と分析した。
2025/09/09 08:19
https://japan.hani.co.kr/arti/economy/54184.html