「6月以降、米国への輸出が“ゼロ”です。受注がなく、埠頭の倉庫に20億ウォン相当の製品が滞留しています。目の前が真っ暗です」
米国に産業用ボルトやナットなどを輸出している中堅企業「シンジンファスナー工業」のチョン・ハンソン代表は、トランプ発関税爆弾が本格化して以降、対米輸出が全面的に停止したと語った。相互関税(25%)は8月から発効したが、同社の輸出ルートはそれより2カ月早く断たれた。鉄鋼に対する関税が3月から25%、6月からは50%課され、米国のバイヤーたちが次々と注文を取り消したためだ。倉庫保管費用は日々膨らみ、いつまで耐えられるかも見通せない。チョン代表は「米国以外への輸出を拡大しなければならないのは分かっているが、中国製品がすでに占領している市場に参入するのは口で言うほど簡単ではない」と吐露する。
エレベーター製造の中小企業A社も関税負担で揺らいでいる。エレベーター部品の大半が鉄鋼であるため、3月から関税の影響を受けている。この会社の関係者は「米国側の輸入業者が関税を理由に商品を返品したり、契約内容と異なり『関税を代わりに払え』と要求することが多いが、中小企業なので対応できる専門人員がいない」と話した。
米国発の相互関税の影響にもかかわらず、今年9月の韓国の輸出額は過去最高を記録したが、中小・中堅企業が肌で感じている実感とはかけ離れている。変動する関税、不利な契約構造、人材・情報力の不足などが複合的に作用し、彼らをさらに過酷な状況へと追い込んでいる。
12日、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)によると、対米輸出企業向けの相談センター「KOTRA関税対応119」には、2月18日から9月19日までの約7カ月間で計7722件の相談が寄せられた。大部分が中小・中堅企業で、関税確認(5383件)だけでなく、代替市場の開拓(464件)や生産拠点移転(254件)に関する相談も多かった。特に、トランプ大統領が国別相互関税を正式発表した直後の4月第2週(801件)、相互関税の猶予期間が終了した8月上旬(366件)に相談が集中した。米国の突発的で一貫性のない発表に企業が混乱したことを示している。
最大の障害は、複雑で予測困難な通関・規制リスクだ。例えば、米国は鉄鋼・アルミニウム・銅などに対し通商拡大法232条に基づき品目別に50%の関税を課しているが、基準額の算定方法が不明確だ。チャン・ゴウン関税士は「原価基準なのか、労務費・加工費などを加えた評価基準なのかによって関税額が大きく異なるが、米国税関・国境取締局(CBP)も明確な基準を提示していない」と指摘した。
このため、現場では天文学的な関税を突然課される事例が相次いでいる。食品輸出業者B社は、米国税関の通関過程で製品の包装容器に含まれるアルミニウム成分に対して200%の関税を適用された。従来通りに申告したにもかかわらず、CBPはアルミニウムの原産地が証明されていないとして「ロシア産」とみなし、懲罰的関税まで追加で課した。また、4月初めに航空便で製品を送った機械輸出業者C社は、1日違いで10%ではなく25%の関税を受けた。これによる損失だけで数万ドル規模にのぼる。銅製品を輸出するある中小企業の代表は「もともと関税0%で米国に輸出していたが、予告もなく突然50%に引き上げられ大打撃を受けている。米国が主要輸出国なのに、このまま事業を続けられるかどうか分からない」と訴えた。
韓米自由貿易協定(FTA)によって関税がほぼなかった時代に結んだ契約が、今になってブーメランとなって跳ね返っている場合も多い。「本船渡し条件(FOB)」は現地輸入業者が関税を負担するが、「関税込み持込渡し条件(DDP)」は韓国の輸出業者が関税を支払わなければならない。業界によると、アマゾン(Amazon)などの米国EC企業を通じて韓国製品が米国の消費者に届けられる場合、DDP契約を結ぶことが多いという。FTAが有効だった時は関税がほぼ「0%」だったため負担はなかったが、今では輸出業者が関税負担をそのまま背負う形になっている。
さらに、中小企業は大企業に比べ人員も情報力も不足しており、さらに厳しい。輸出用シャンプーバーを製造しているあるビューティースタートアップの代表は「輸出するには商標登録から衛生許可、英語・中国語・日本語のコンテンツ制作まで一人でこなさなければならず、各国の主要流通チャンネルに入るのも難しい」と話した。
中央日報が世界各地のKOTRA貿易館長118人を対象に実施したアンケートでも、米国の相互関税によって中小・中堅企業(68.6%)が大企業(31.4%)より大きな打撃を受けると予想された。欧州地域のある貿易館長は「中小企業は売上に対する原価率が高く、価格競争に追い込まれることが多いため、関税に特に脆弱だ」と述べた。
このため、サプライチェーンの多角化と代替市場の開拓の必要性が改めて浮上している。産業通商資源部によると、9月の輸出額は前年同月比12.7%増の659億5000万ドル(約10兆円)を記録し、3年6カ月ぶりに最大記録を更新した。大企業の自動車メーカーなどが欧州市場への輸出多角化に成功した影響と分析されている。しかし中小・中堅企業は事情が異なる。短期間で現地の品質認証や流通網を確保することが難しいためだ。
専門家は、当面は「耐える」ことと「実務対応」で難局を乗り越え、長期的にはサプライチェーンを再設計すべきだと助言している。KOTRAのイ・グムハ北米地域本部長は「米国の関税政策が変わる時に備え、企業ごとに可能な範囲で部品サプライチェーンを調整し、生産能力(キャパ)を微調整しながらまずは耐えなければならない」と述べた。クォン・ジウォン関税士も「米国の関税免除規定をよく把握し、部品調達比率を調整したり、可能であれば一部でも米国内で生産するべきだ。また、米国CBPに事前教示(Binding Ruling)を取得して関税負担を予測することも必須だ」と助言した。
韓米両政府間の協議が長引く中、韓国政府の積極的な役割も求められている。中小ベンチャー企業研究院のノ・ミンソン政策研究室長は「中小・中堅企業は単独でサプライチェーンを多角化するのが難しいため、現地市場調査の支援や輸出バウチャーの拡大が必要だ」とし「政府とKOTRAなど民間支援機関の有機的な協力体制の構築も重要だ」と指摘した。韓国貿易協会国際貿易通商研究院のチャン・サンシク院長も「関税被害企業には低利融資や緊急資金などを迅速に支援すべきだ」と話した。
2025/10/13 14:48
https://japanese.joins.com/JArticle/339701