◇韓国中小企業の輸出品目1位は化粧品、海外攻略の歴史
先月、アジア太平洋経済協力(APEC)のために訪韓した米国ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、ヘルス・ビューティーチェーン「OLIVE YOUNG(オリーブヤング)」で購入したKビューティーの認証ショットをSNSに投稿して話題を集めた。ところがこの写真を見て懐疑的な反応を示すコメントも相当あった。レビット報道官が選んだ製品やブランドが、実は韓国で最も人気のある製品ではないという内容だった。彼女は的外れな選択をしてしまったのだろうか。好調な輸出産業といえば大企業を思い浮かべがちだが、Kビューティーの主役は大企業ではない。国内より海外で先に知られ、韓国に逆輸入される成功公式をつくり出した、小さくても強いインディーブランドこそがKビューティーを牽引(けんいん)している。彼らには、地球の反対側の女性たちの心を先に掴んだ秘訣と理由があった。
◆「どうせなら広野へ」海外に目を向けた理由
ビューティーブランド「TIRTIR(ティルティル)」のキム・ヨンチョル理事(前代表)は、韓国内ビューティー市場の環境を「星々の戦争」と表現した。それほど激しく、後発のプレイヤーが存在感を示すのが容易ではないという意味だ。食品医薬品安全処によると、韓国の化粧品販売会社は計3万6000社に上る。この現実の中で、多くの企業が挫折と断念を経験した。しかし切実に悩み続けた者たちは、ついに突破口を生み出した。
2019年に門を開いたTIRTIR(ティルティル)は、「陶器クリーム」で韓国市場で反響を得た。しかし国内売上が200億ウォン(約21億円)に達した後、停滞期が訪れた。「他の人々がやらない海外市場で本気でやってみよう」と日本と米国市場に目を向けたのもこのころだった。2022年に日本で初めて披露した「マスクフィット レッドクッション」は、東洋人の肌に合わせ3種類のカラー展開で発売し、2023年に米国進出時にはこれを20色に増やした。「全世界すべての女性の肌色に合わせる」というコンセプトのもと、黒人やラテン系など有色人種のモデルも起用した。ある黒人ビューティーインフルエンサーが、この製品が自分の肌色とは合わないという残念なレビューを残したが、これはむしろ転禍為福のきっかけとなった。レビューから3週間後、30色の製品をインフルエンサーにプレゼントしたところ、黒人の肌にぴったり合う色合いのおかげで話題となったのだ。昨年のTIRTIRの売上は2736億ウォンで、そのうち海外の売上が90%を占めている。
海外で積み上げたKビューティーの認知度は、内需市場で活躍していた他のプレイヤーにも新たな機会をもたらした。「ダイソーリップバーム」「プチプラシャネル」で有名なSON&PARK(ソンアンドパク)のキム・ハンサン代表は「海外の消費者も財布の紐が固くなり、高価な高級ブランド化粧品の代わりに手ごろな製品に置き換える現象が広がった」とし「SNSで韓国のコスパ化粧品が人気を得て、“台湾のOLIVE YOUNG”と言われる「康是美(COSMED)」や、米国「Watsons(ワトソンズ)」などで製品を販売できるようになった」と語った。インディーブランドの海外挑戦の成果は、ビューティー産業の体質を変えた。2023年から韓国中小企業の輸出品目1位は化粧品が占めている。食品医薬品安全処によると、2025年上半期のKビューティー輸出額は55億1000万ドル(約8636億3740万円)で過去最大を記録した。
◆韓流が開いたチャンスをつかんだKビューティー
海外で着実に人気を得ているKビューティーブランドには共通点がある。現地消費者に対する執拗な関心と緻密な分析だ。2019年にビューティーブランド「Anua(アヌア)」を展開し始めたザ・ファウンダーズ(THE FOUNDERS)は、その年にECプラットフォーム「Qoo10 Japan」に入店し、日本市場から攻めた。韓国ビューティー市場より規模が圧倒的に大きく、Kコンテンツのマニア層が安定的に形成されており、地理的にも近く物流費を節減できるという利点があった。現地攻略のため最初に始めたのは、消費者の深層インタビューだった。大企業の高級製品とドラッグストアの低価格製品に二分されている日本のビューティー市場で、現地消費者が求めていたのは、まさにその“中間”を埋めてくれる製品だった。
2022年春、同社は「Qoo10 Japan」の代表的なセールイベントで、基礎化粧品4種を5万ウォン台後半価格で販売する限定企画セットを発売した。箱はシンプルで洗練された韓国の感性でデザインした。結果は大当たりだった。ザ・ファウンダーズ関係者は「セール期間だけ買える限定アイテムという点も人気要因の一つだった。その後、多くのKビューティーブランドが“セット戦略”で日本市場を開拓している」と語った。
ソウル大消費者学科のキム・ナンド教授は、8月に出版した『Kビューティートレンド』で「Kビューティー企業が顧客関係管理(CRM)データではなく、レビュー データへと視点を変えている」と記した。綿密な分析と消費者視点の指向を通じ、「必要なくても欲しくなる」努力が、Kビューティーの新たなトレンドとして定着したという意味だ。消費者の購入サイクルに合わせ、既存製品を使い切る頃に販促を仕掛ける第1世代のマーケティング方式とは一線を画している。2023年にアモーレパシフィックに買収されたCOSRX(コスアールエックス)は2022年、AIビッグデータ分析企業と手を組み、グローバル消費者レビューをリアルタイムで分析するプラットフォームを開発した。34カ国、60の言語、134の流通プラットフォームに残された消費者投稿を分析し、これを通じて新製品を発売して大きな人気を得た。
2025/11/25 16:05
https://japanese.joins.com/JArticle/341449