1957年、ロシア(旧ソ連)のスプートニク1号を皮切りに、人類が宇宙軌道に人工物体を打ち上げ始めてから70年以上の歳月が流れた。米国とソ連の体制競争から始まった宇宙への打ち上げは、宇宙技術の発展と企業の商業化競争が加わったことで、その種類と数字が幾何級数的に増加した。特に衛星の増加傾向が著しく、2005年に2千基余りだった活性衛星が10年間で5倍も増えた。
これは一方で、宇宙ゴミ(スペースデブリ)の量産を招いた。任務を終えたロケット、寿命が尽きたり故障した衛星、偶発的な衝突や爆発などで宇宙に残された残骸は、数年または数十年間宇宙軌道に残り宇宙の安全を脅かす。
最近、宇宙ステーション「天宮」を離れて地球に帰還しようとした中国の宇宙飛行士3人が9日間、足止めされたことがあった。帰還宇宙船「神舟20号」に宇宙ゴミが衝突し、安全を保障できなかったためだ。中国の宇宙当局は苦心の末、神舟20号の代わりに、当初6カ月後に戻ってくる予定だった「神舟21号」に彼らを乗せて地球に帰還させた。これによって、現在天宮に残っている宇宙飛行士3人は今のところ、非常事態が発生しても地球に戻ることができない状況になった。実際、危険状況は発生しなかったが、今回の事例は宇宙ゴミのリスクが現実化する可能性を端的に示している。
米ジョージタウン大学のセキュリティ・新興技術センター(CSET)が1958年から今年4月まで、米政府が追跡して確認した10センチ以上の宇宙ゴミを分析した結果、現在軌道にある宇宙ゴミの95%は、米国とロシア、中国の宇宙物体に由来していることが分かった。米国宇宙軍が管理する宇宙物体追跡ウェブサイト(SPACE-TRACK.ORG)に掲載されている約4万7千個の人工物体のうち、宇宙ゴミに分類できる約3万4千個を分析した結果だ。
特に、全体の73%が3カ国から打ち上げられた20基の宇宙物体に集中していた。上位20の宇宙物体の国別分布は、米国(9)、ロシア(8)、中国(3)の順だ。中国は発生源の数は少ないが、宇宙ゴミの数は圧倒的に多い。低軌道の場合、中国の宇宙ゴミが全体1万723個のうち4234個で40%を占める。
■対衛星兵器実験をめぐる緊張
最も恐るべき宇宙ゴミの発生源は、敵の衛星を破壊する対衛星兵器(ASAT:Anti-SATellite Weapons)実験だ。中国は2007年、寿命が尽きた中国の気象衛星「風雲-IC(FY-1C)」を対象に、ASATの実験を行った。これにより、3400余りの破片が発生し、宇宙に散らばった。報告書は「このうち2465個がまだ軌道を彷徨っている」とし、「これは米宇宙軍が追跡している宇宙ゴミの約19%に当たる」と分析した。
2021年、ロシアが退役偵察衛星「コスモス-1408」を対象に実施したASAT実験でも、約1500個の宇宙ゴミが発生した。これはその年の宇宙ゴミの10%を超える数字だった。ただし、この時に発生した宇宙ゴミは2024年までにほとんど消滅した。
これまでASAT実験を行った国は、米国とロシア、中国、インドの4カ国。このうち2022年、米国は宇宙ゴミを量産できる破壊的な直接上昇型ミサイルによる衛星破壊実験(DA-ASAT:Direct-Ascent Anti-SATellite)の中止を宣言した。国連もその年の総会で実験中止を求める内容の決議案を採択した。ところが、中国とロシアは決議案に拒否権を行使し、インドは棄権した。
■宇宙に残されたロケットが「足元の火」
ASAT実験によって発生した宇宙ゴミが過去の遺産なら、現在「足元の火」は宇宙に残されたロケットだ。現在、軌道にある宇宙ゴミの大半は、各国が発射したロケット上段部の破片だ。中国の宇宙ロケット「長征6A」は、1277個の破片を宇宙に残し、全体(宇宙ゴミの)2位をしめている。同ロケットは2022年11月の2回目の打ち上げ当時、衛星展開後に上段ロケットが爆発したことを皮切りに、2024年8月までさらに3回の類似事故を起こした。米国の「デルタ1」と「アトラス5セントール」、ロシアの「SL-16」ロケットもそれぞれ200~900個の宇宙破片を発生させた。
10月初め、オーストラリアのシドニーで開かれた国際宇宙会議(IAC)では、最も懸念すべき宇宙ゴミ50個のリストが発表された。他の宇宙ゴミと衝突した場合、多くの宇宙ゴミが生成される可能性が高い物体だ。一種の宇宙ゴミ発生候補群であるわけだが、これもやはり多くがロケット本体だ。
宇宙物体監視追跡企業の「レオラボス」は報告書で「他の宇宙物体との距離、高度、質量を考慮し選んだ」と説明した。報告書を作成したダレン・マクナイト研究員は「高度700〜1000キロメートルの軌道にある50機のうち76%は2000年以前に発射されたもので、88%がロケット本体」だと語った。
国別ではロシアが34機で最も多く、中国が10機、米国が3機、欧州が2機、日本が1機だった。特に、ロシアのSL-16とSL-8ロケット群が30機だった。
マックナイト研究員は「50機の人工物体を全て回収できれば低軌道で宇宙ゴミが発生する可能性は50%減少し、上位10機だけ回収しても危険が30%減るだろう」と見通した。
■放置された26機のうち21機が中国のロケット
これから起こりうることに対する懸念も高まっている。マックナイト研究員によると、2024年1月1日以降、低軌道に捨てられたロケット本体が26機もあり、これらは今後25年以上軌道に残ることになる。
26機のうち21機が中国ロケットで、ロケットの平均重量は4トンだ。ロケット打ち上げの回数は今後増え続ける見通しであるため、危険はますます高まる見通しだ。報告書は「2000年以降、中国が25年以内に軌道離脱しない長寿命低軌道(高度600~800キロメートル)に残したロケットの総質量は、全世界の他のすべての国を合わせたものより多い」と説明した。
2025年は、主要宇宙国が参加する国際宇宙機関間スペースデブリ調整委員会(IADC)が指針で定めた宇宙物体の廃棄期限だ。この指針に従って、米国と欧州は25年内に自然に大気圏に再突入できる低い高度を維持するか、直ちに軌道から離脱させ、人が住んでいない公海上に落ちるようにしている。韓国も加盟国として同指針に従っている。
一方、中国は指針を遵守すると言いながらも、ロケットを軌道に残しておく場合が多い。中国のロケットは設計上、別途の推進装置や残余燃料の消尽プログラムを設けていないためだ。相対的に高い高度で発射任務を終了する影響もある。
■宇宙ゴミの未来を左右する人工衛星群
これからがもっと問題だ。中国と米国を含め、各国政府と企業の間で繰り広げられる低軌道衛星コンステレーション(人工衛星群)の構築競争が、宇宙ゴミの状況をさらに悪化させる恐れがある。
現在、中国が打ち上げ始めた「国網」と「千帆」は、計画通りなら2万7千基に達する。これらを全部配置するためには、1千機以上のロケットを打ち上げなければならない。ところが、これらの衛星打ち上げに主に使用する長征6Aと8号の上段ロケットは、高度700キロメートルの軌道に残っている場合が多い。ここにある宇宙物体は最大100年以上軌道を彷徨う可能性がある。中国国家航天局(CNSA)の卞志剛副局長はIACで、ロケットの軌道については言及せず、宇宙ゴミを除去する方法についてのみ「研究中」だと述べた。
ますます高まる低軌道衛星コンステレーションの密度も危険要素だ。スペースXの「スターリンク」をはじめ、欧州の「ワンウェブ」、アマゾンの「アマゾンレオ(旧プロジェクト名カイパー)」、中国の「国網」、「千帆」など、今後数年内に低軌道に配置される衛星が数え切れないほど多い。ゴールドマンサックスの報告書によると、今後5年間、最大7万基の低軌道(LEO)衛星が打ち上げられるものと予想される。これらの中で一つの衛星に不具合が生じた場合、連鎖的に波紋が広がる危険性が高まるという意味だ。
宇宙ゴミはいったん発生すると除去が難しく、多大な費用が掛かるため、自然に大気圏に再突入して消滅するまで数十年を待たなければならない。
このような宇宙ゴミが増えると、いわゆるケスラー・シンドロームの危険が高まる。ケスラー・シンドロームとは、人工衛星や宇宙破片の密度が臨界値を超えた場合、これら同士の衝突が連鎖的に発生し、宇宙ゴミが急増する状況をいう。宇宙ゴミの移動速度は時速2万7千キロにもなるため、1センチの物体でも衛星システムを麻痺させるなど大きな被害をもたらしかねない。
2025/11/24 19:35
https://japan.hani.co.kr/arti/culture/54846.html