生命体の3つの基本要素、小惑星ベンヌですべて発見

投稿者: | 2025年12月13日

 私たちが知っている類型の生命体、すなわち地球生命体の誕生に欠かせない基本構成要素の全てが小惑星の標本から発見された。

 日本の東北大学が中心となった米日共同研究陣は2023年、米国航空宇宙局(NASA)の宇宙探査船オサイリス・レックスが持ってきた小惑星ベンヌの標本から地球生命体に欠かせない五炭糖(リボース)を発見し、国際学術誌「ネイチャー・ジオサイエンス」(Nature Geoscience)に発表した。宇宙船が持ってきた標本は121.6グラム。これで生命体の遺伝情報を伝達するRNA分子を構成する要素のうち、これまで抜けていた最後のピースが加わった。

 これに先立って科学者たちは、ベンヌの標本から核酸(DNA、RNA)の基本単位であるヌクレオチドの3つの構成要素のうち、塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル)とリン酸塩を発見した。だが、2つの間をつなぐ糖分子(リボースまたはデオキシリボース)は発見できなかった。

■小惑星が地球の生命の種をまいたのか

 今回、ベンヌの標本で発見した糖分子は、リボースの他にもブドウ糖(六炭糖)、ガラクトース(六炭糖)など様々な種類だ。特に、生命体の新陳代謝で重要なエネルギー源であるブドウ糖を地球ではなく天体で発見したのは初めて。ところが、DNAに必要なデオキシリボースは見つからなかった。

 研究陣は、糖分子はベンヌの母天体の内部で塩分が含まれた水が岩石内部のホルムアルデヒドと反応して作られたものとみられると分析した。ベンヌの母天体は太陽系を作った分子雲である太陽星雲を構成するガスとホコリ粒子の集合体。粒子が互いに衝突・凝縮し、微惑星体が形成される過程で、ベンヌの母天体も形成された。母天体はその後、太陽系の内側に移動する途中、小惑星帯で粉々になり、その破片が再びゆるく集まり、今私たちがベンヌと呼ぶ500メートルの大きさの破砕集積体(rubble pile)の小惑星になった。

 地球外の岩石からリボースが発見されたのは初めてではない。小惑星の分身といえる隕石2個から、リボースをはじめとする糖分子が検出されたことはある。しかし、これは地球に墜落した後に流入した物質である可能性もあるため、科学者たちはより確実な事例を追跡してきた。今回の標本はNASAのオサイリス・レックス宇宙船が直接採取して持ってきたもので、地球環境の影響を全く受けなかった。

 宇宙船が今まで持ってきた小惑星の標本がたった2個だけなのに、生命体の3つの基本構成要素が全て発見されたのは、小惑星が生命体の誕生に必要な成分を地球だけでなく、他の惑星にも伝達した可能性があることを示唆する。ブドウ糖が発見されたのもやはり生命体の重要なエネルギー源が幼い太陽系時代にも存在したことを意味するという点で、意味が大きい。

■DNAよりRNAが先か

 さらに重要なのは、デオキシリボースは除き、リボースだけが発見されたという点だ。デオキシリボースはDNA、リボースはRNAの構成要素だ。これは生命の誕生がDNAではなくRNAから始まったという仮説に説得力を高める。研究陣は「今回の発見は太陽系初期にはリボースがデオキシリボースよりさらに多かった可能性を示唆する」と説明した。

 今日の生命体はDNA、RNA、タンパク質という3つのタイプの機能性生体高分子で構成された複雑なシステムに基づいている。研究を率いた古川義博教授は「しかし、初期生命はこれより単純だったかもしれない」とし、「RNAは遺伝情報を保存し多様な生物学的反応を促進できるため、最初の機能性生体高分子として有力な候補」だと語った。

■窒素と酸素が豊富な「宇宙ガム」の出現

 NASA研究陣も小惑星ベンヌの標本を分析した論文2本を同日、国際学術誌「ネイチャー天文学」に発表した。

 まず、NASAエイムズ研究センターとカリフォルニア大学バークレー校の共同研究チームは、以前は発見されなかったガムのような物質を発見した。一時は柔らかくて柔軟だったが、今は硬く固まったこの「宇宙ガム」(space gum)は窒素と酸素が豊富な高分子類の物質で構成されている。この物質は、ベンヌの母天体の鉱物と氷が自然放射線を受けて暖かくなり始め、自ら、または他の分子と反応して作られたものと推定される。研究陣は、このような高分子が地球から生命が芽生えるようにした化学的前駆体を伝達した可能性があると分析した。

 NASAジョンソン宇宙センター研究陣の標本分析では、太陽系が生まれる前の星から噴出した超新星残骸が検出された。超新星とは巨大な星が最後の段階で起こす爆発現象をいう。超新星残骸の量も、以前に他の天体で検出されたものより6倍も多かった。研究陣は、これは小惑星の母体が超新星残骸の豊富な太陽星雲の原始惑星系円盤で形成されたことを示唆すると述べた。

*論文情報

Bio-essential sugars in samples from asteroid Bennu. Nat. Geosci(2025)。

https://doi.org/10.1038/s41561-025-01838-6

Nitrogen- and oxygen-rich organic material indicative of polymerization in pre-aqueous cryochemistry on Bennu’s parent body. Nat Astron(2025)。

https://doi.org/10.1038/s41550-025-02694-5

Abundant supernova dust and heterogeneous aqueous alteration revealed by stardust in two lithologies of asteroid Bennu. Nat Astron(2025)。

https://doi.org/10.1038/s41550-025-02688-3

2025/12/12 00:28
https://japan.hani.co.kr/arti/culture/54953.html

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