26日にソウル龍山(ヨンサン)の大統領室で行われた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と中国の李強首相の首脳会談は、険悪だった韓中関係が少しずつ再確立の方向へと向かうシグナルと見なしうる。両国は、敏感な国際情勢はさておき経済、社会・文化などの協力可能な分野での関係の拡大、接点の最大化を図った。
尹大統領と李首相は外交・国防の高官が参加する2+2会談形式の「韓中外交安保対話」と、サプライチェーン協力・調整協議体である「韓中輸出統制対話体」を新設することで合意した。また、長きにわたって中断状態だった外交次官戦略対話をはじめ、韓中投資協力委員会、韓中自由貿易協定(FTA)の第2段階交渉などを再開するほか、文化・社会交流も拡大することで合意した。2015年12月に発効した韓中FTAの第2段階交渉について、キム・テヒョ国家安保室第1次長は、「このかん推進されてきた商品交易分野の市場開放にとどまらず、今後はサービス分野、特に文化、観光、法律分野に至るまで、交流と開放の拡大に向けた議論を続けていくことで合意した」と述べた。両国はまた、昨年11月に中国で1回目の会議が行われた韓中経済協力交流会の第2回会議を、今年下半期に行うことで合意した。
両首脳はこの日、最も敏感な懸案である北朝鮮の核問題と台湾問題について、詳細に言及することはなかった。成均館大学のイ・ヒオク教授(成均館中国研究所所長)は、「韓中両国は互いに構造的に合意の難しい敏感な懸案である北朝鮮の核と台湾の問題を避けつつ、経済と人的交流での協力を進展させうる分野で具体的な合意を作り出して対話のモメンタムを再生させるとともに、利益のバランスを取った」と評価した。
韓国は、韓米同盟と韓米日安保協力を強化しつつも対中関係を管理できることを示そうとしている。中国は、米国の中国に対する先端技術デカップリング(経済分断)攻勢が激しくなる中、韓国をはじめ日本、欧州諸国との関係を通じて突破口を探ろうとしている。中国側の発表によると、李首相は「両国の産業網と供給網は深く融合しているため、経済貿易協力は強固な基盤と大きな潜在力を持っている」とし、「経済貿易問題の過度な政治化と安保化に反対する。グローバル供給網の安定を守らなければならない」と強調している。この日の会談結果は、このような両国の立場の最大公約数であると解釈される。
北朝鮮の核問題、台湾問題などの構造的難題は、新設される外交・安保対話において可能な範囲で管理していこうとするとみられるが、両国がどの程度それを進展させうるかは未知数だ。中国は台湾問題において韓国に中国の立場の受け入れを要求しており、韓国は北朝鮮の核問題で中国が建設的な役割を果たしてくれることを望んでいる。この日の首脳会談でも尹大統領は北朝鮮について李首相に、「中国には安全保障理事会の常任理事国として平和の砦の役割を果たしてほしい」と要請したという。李首相がどのように答えたかは公開されていない。
韓中関係の改善に向けた努力が、中国の習近平国家主席の訪韓などの首脳の相互訪問につながるかも関心事だ。この日の首脳会談で、尹大統領や習主席の相互訪問問題は論議されなかった。大統領室の高官が語った。イ・ヒオク教授は、「韓中関係が改善のモメンタムを生かして来年韓国で行われるAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議での習主席の訪韓が確定すれば、尹大統領がそれに先立って中国を訪問する可能性もある」との見通しを示した。
2024/05/26 20:20
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/50124.html