[寄稿]中国の「中立」の期待破った台湾、新総統就任後の両岸関係

投稿者: | 2024年5月27日

 台湾の頼清徳新総統が20日の就任式で「民主的で平和繁栄の新しい台湾の建設」と題する就任演説(「520演説」)を行った。この日午後、中国の台湾事務弁公室はただちに頼総統を「台湾独立勢力」と規定し、頼総統が台湾独立という分離主義の立場に固執し、「外勢に依存して独立を追求する」とする批判声明を出した。王毅共産党外事弁公室主任兼外相も強硬な批判発言をして、中国官営メディアも相次いで批判記事を出した。中国人民解放軍東部戦区は23~24日に台湾周辺で大規模演習を実施した。これらをどのように眺めなければならないだろうか。

 1つ目に、歴代の3人の民進党総統の就任演説に対する中国の反応を比較してみよう。2000年の陳水扁総統は、台湾独立宣言をしないことを含めた「四不一没有」(4つのノー、1つのない)政策を提示し、中国は「彼の善意の和解には真正さがない」としたうえで、「行動を見守る」という反応を示した。2016年の蔡英文総統は比較的穏健な発言をして、北京は「未完成の答案用紙」だと応じた。これまでの柔軟な対応とは違い、今回の頼総統の演説に対して中国は、頼総統は「両国論」を明確に擁護する分離主義者だと非難した。頼総統に対する規定と官営メディアの強力な批判などに照らすと、双方の重大な譲歩がないかぎり、今後の両岸関係は楽観的ではないだろう。

 2つ目に、頼総統は「520演説」で北京当局を「中国」と呼び、「中華民国と中華人民共和国は互いに従属しない」と述べた。中国はこのような発言が台湾を国家とみなしているとみている。また、「1624年に台湾は台南から出発し、台湾の世界化の開始を知らしめた」「台南400年」などの発言は、台湾と中国本土の歴史を分断するものとみている。4月に台湾の馬英九元総統が北京を訪問した際、中国の習近平主席が「中華民族」と「中華文化」に何回も言及したのは、頼総統には就任演説でこのような中立的で両岸間で共通する点に言及してほしいという暗黙の要求だった。しかし、このような期待は失敗に終わり、この点も中国が強く対応する主な要因とみられる。

 3つ目に、中国が「連合利剣-2024A」と命名した今回の軍事演習は、2022年8月に米国のナンシー・ペロシ下院議長(当時)の台湾訪問の直後に行われた軍事訓練より広い地域で実施され、位置も台湾にはるかに近かった。ここで注目される点は、今回の訓練の名称が「2024A」だということだ。今後、2024Bや2024Cの名称がついた演習がさらにありうるという意味だ。また、演習区域や規模、配備された航空機・軍艦などをみると、台湾を封じ込めるだけに留まらず、台湾海峡を「内部化」する訓練を行ったとみられる。中国は「島鏈(島々がつながった鎖という意味で、中国の海洋戦略。日本語では「列島線」と呼ばれる)内外一体連動」という言葉を初めて使ったが、これは、今回の演習が「第1島鏈(第1列島線、沖縄‐台湾‐南シナ海)の突破」を意味しており、台湾だけでなく東アジア地域の安全保障と安定に影響を及ぼしかねないことを意味する。

 4つ目に中国は「520演説」の背後には米国がいるとみている。これについて中国は、米国を非難するだけに留まらず、台湾に兵器を販売した米国の軍需企業12社に対する制裁を最近発表した。先月には米国のバイデン政権が中国の「生産過剰」を非難し、電気自動車(EV)に対する関税を引き上げたところから、さらに一歩踏み込んで中国が最も敏感に考える台湾問題が、「520演説」を通じて前面に登場した。中国はこれを、昨年にサンフランシスコで行われた「バイデン・習近平」会談で、両者が合意した「台湾海峡の軍事リスクに対する共同管理」が揺らいだとみている。米国の大統領選が近づくにつれ、あらゆる問題の敏感さと脆弱性が急増することになり、この2つの突風の中心にある台湾と東アジア地域には、さらに強い関心を向けなければならない。

2024/05/26 18:47
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/50125.html

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