トランプ大統領が去っても「美しき時代」は二度と戻ってこない【コラム】

投稿者: | 2026年3月19日

 「数年間にわたり、日本人たちは(米国が無料で提供するおかげで)膨大な防衛費に縛られず、前例のない黒字を記録しながら強力で活気ある経済を築いてきた。… 米国ではなく、この裕福な国々に『税金を課そう』」

 1987年9月2日、41歳の不動産デベロッパーのドナルド・トランプ氏がニューヨーク・タイムズなどに自費で掲載した全面広告の一節だ。昨年1月に大統領の座に再び就いた後、世界を相手に繰り広げられている「関税戦争」の構想が映し出されている。

 40年来のトランプ氏の「信念」を考えると、米連邦最高裁が相互関税を無効化する見通しだと聞いて、一時的に「関税戦争が和らぐのではないか」と期待していたのは、あまりにもナイーブなものだった。案の定、先月最高裁の無効判決が出ると、米政府は新たな関税を課す口実を探すため、11日に韓国などを対象に通商法301条の調査を開始した。韓国は昨年の関税合意よりも、もしかしたらもっと高い関税が課されるのではないかと不安にさいなまれている。さらに、米国とイランの戦争に派兵しなければ、報復として関税カードを切るのではないかという懸念の声もあがっている。トランプ氏は残りの任期中、決して関税を手放さないだろう。

 では、3年後にトランプ氏の任期が終われば、このすべての騒動は収束するのだろうか。 再び「平和な」自由貿易の時代に戻ることができるのだろうか。1989年にベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終わってから20年あまり、グローバリゼーションの絶頂期であった時期。米国は先端技術の開発と金融、サービス業に集中し、製造業の中で高付加価値産業は韓国やドイツ、台湾などが、低付加価値産業は中国が担っていた幸せな分業の時代。韓国の一人当たり国民所得が1万ドルから3万ドルに上昇し、サムスン電子や現代自動車などが名実ともにグローバル企業としての地位を確立した時期へと。

 この質問に答えるためには、米国政界で非主流派だったトランプ氏を二度も大統領に押し上げた、米国社会の三つの流れに注目する必要がある。一つ目は、グローバリゼーションの敗者たちの怒りだ。米国の経済学者ブランコ・ミラノビッチが発表した有名な「エレファントカーブ(象の曲線)」によると、グローバリゼーションの最大の恩恵を受けたのは、中国を代表とするアジアの新興国の中間層と、米国などの先進国の高所得層だった。彼らは1988年から2008年の間に所得増加率が70%に達した。一方、先進国の中下層の所得増加率は0〜20%にとどまった。彼らこそが「ラストベルト」の白人労働者たちであり、トランプ氏が狙いを定めた階層だ。

 二つ目は製造業の重要性に対する再認識だ。「繁栄する未来のためには、繁栄する製造業が欠かせない」(第1次トランプ政権のロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表)という主張に共感する人が増えている。ヘッジファンドの大物投資家のジョン・アーノルド氏は「米国は発明する能力があり、中国は作る能力がある。両方できる方法を先に見つけた国が今後超大国になる」と断言した。米民主党に「生産する革新」になるべきだと求めたり(『アバンダンス「豊かな時代」を呼びさませ』)、「米国は弁護士が動かし、中国はエンジニアが動かす」というフレームで停滞した米国を批判したり(『ブレイクネック(原題:Breakneck: China’s Quest to Engineer the Future)』)する本が昨年ともに人気を集めた。

 三つ目は中国の脅威である。米国は韓国や台湾のように、中国も「大衆が経済的インセンティブを得れば、民主主義に向かう流れはさらに強まるだろう」と考えていた(ジョージ・W・ブッシュ大統領、1989年)。1979年に中国と国交を樹立した後、中国への投資と貿易を拡大し、2001年には世界貿易機関(WTO)への加盟を認めた。ところが、驚くべき経済成長にもかかわらず、中国の民主化は進んでいない。2012年に政権を握った習近平国家主席は共産党の統治体制を強化し、「中国夢」を掲げて米国の覇権に挑戦している。おもちゃから電気自動車まで、製造業のほぼ全分野で世界市場を支配し、今や人工知能(AI)などの最先端技術にも目を向けている。

 どんな勢力が政権を握っても、この流れを無視し、過去の時代に回帰するのは容易ではないだろう。トランプ式の無茶苦茶な方法であれ、補助金支給のようなより穏健な方法であれ、米国技術覇権と市場、雇用を守ろうとする保護主義的な試みは続くだろう。

 「輸出・製造業・大企業主導の成長」という韓国の従来の成長戦略は、厳しい挑戦に直面せざるを得ない。「発明する能力と作る能力を兼ね備えた国」を目指す米中の激しい競争の中で、韓国企業は厳しい戦いを強いられている。最大の輸出市場である米国市場の壁は引き続き高くなるだろう。サムスン電子や現代自動車などは「韓国企業」というよりも「グローバル企業」としてのアイデンティティをますます固め、韓国への投資と雇用を減らしていくだろう。これらの企業は引き続き成功を収めるかもしれないが、その恩恵を被るのは株主にだけで、韓国全体にもたらされるのは難しいだろう。「ベル・エポック」(美しき時代)は幕を下ろしており、私たちはこれからどうすべきかを深く考えなければならない。

2026/03/18 18:27
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/55708.html

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