米国は韓国にとってどのような存在でしょうか。辛未洋擾(米国の軍艦による江華島海峡襲撃。1871年)を引き起こし、朝鮮半島を分断した帝国主義勢力なのでしょうか。北朝鮮の南侵を退け、自由民主主義を守ってくれた恩人なのでしょうか。
1980年代に韓国を覆った反米熱は、光州(クァンジュ)虐殺の背後には米国がいたという疑惑が原因でした。光州と釜山(プサン)の米国文化院では放火事件が発生し、ソウルの米国文化院は学生たちによって占拠されました。
2024年12月3日の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領による非常戒厳に対し、米国務省が批判的な立場を迅速に示したのは、1980年の学習効果によるものでした。非常戒厳宣布の直後、多くの国内人士が米国に対し、「米国政府がはっきりとした態度を取らなければ反米世論が高まる可能性がある」と警告しました。
韓国には、米国に闇雲に追随する人々ももちろんいます。極右勢力です。太極旗集会には星条旗とイスラエル国旗が必ず登場します。尹錫悦大統領が拘束された際、「ユン・アゲイン」勢力は「トランプ大統領が空母を派遣して尹錫悦大統領を監獄から救い出してくれる」という話を広めました。中には、韓国は米国に51番目の州として編入されるべきだという人までいます。
いろいろと、米国は韓国にとって実に難しい国です。米国とイスラエルがイランを攻撃した時、まかり間違えば韓国も戦争に巻き込まれるかもしれないという不吉な予感がありました。不吉な予感は当たることの方が多いものです。
トランプ大統領は14日(現地時間)、中国、韓国、日本、英国、フランスの5か国に対し、ホルムズ海峡の商船を護衛するために軍艦を派遣するよう公開の場で要求しました。翌日には多国籍海上連合の結成のために7カ国と接触していると明かしました。当事国に消極的な態度を取られると、トランプ大統領は17日に「失望した。助けは必要ない」と怒りを示しました。
ところが3月20日にはまたも「私は韓国を愛している。我々は韓国と素晴らしい関係にある。我々は韓国に多くの支援をしている」と述べました。「今も支援を韓国に対して望んでいるのか」という記者の質問に対する回答です。直接的な派兵要請よりも恐ろしい発言です。韓国が支援を拒否したら報復するという意味が込められているからです。
行ったり来たり、出したり引っ込めたり、まったく予測できません。外交チャンネルを通じた公式な要請は行わず、言葉で私たちを翻弄しています。実に悪い人です。
今回の米国とイスラエルによるイラン攻撃は、大義名分なき戦争です。大義なき戦争に同盟国を引きずり込んで弾除けにしようというトランプ大統領の不当な要求に、一体どのように対応すべきなのでしょうか。
国内世論は非常に批判的です。韓国ギャラップが20日に発表した定例世論調査では、ホルムズ海峡に軍艦を「派遣すべきでない」と答えた人は55%、「派遣すべきだ」は30%でした(中央選挙世論調査審議委のウェブサイト参照)。すべての地域、すべての年齢層で「派遣すべきでない」という意見が多数を占めました。
しかし、国民の力の支持層では56%対33%で「派遣すべきだ」という回答の方が優勢でした。国民の力の支持率は20%で、民主党の支持率46%の半分にも達していません。国民の力の支持層は縮小するにつれ、ますます極右化しているのです。
このような中、国民の力の何人かの議員が派兵賛成を主張しはじめています。アン・チョルス議員は3月19日にフェイスブックに、「ホルムズ派兵を経済と安全保障資産の確保の手段として活用すべきだ」と題して投稿しました。
「米国のホルムズ海峡派兵要請は、韓米同盟が『依存』を超えて『相互貢献』へと進化する転換点だ」
「派兵要請を安保戦略資産の確保の機会へと転換すべきだ。積極的な参加を条件に、迅速な原子力潜水艦の建造とウラン濃縮および使用済み核燃料の再処理権限の拡大についての明示的、確実な回答を引き出すべきだ」
アン・チョルス議員の主張は詭弁(きべん)です。これまで韓米同盟によって韓国は米国に一方的に依存してきたという誤った認識を前提としているからです。
チョ・ジョンフン議員も19日にフェイスブックで、「今は派兵こそ国益」だと主張しました。同氏は国会の韓米議員連盟の幹事です。パク・スヨン議員も石油精製業界との懇談会で「派遣すべきだ」と主張しました。
アン・チョルス、チョ・ジョンフン、パク・スヨンの3人の議員は勇敢なのでしょうか。それとも無知なのでしょうか。「まずお前たちの息子を戦場に送れ」といった批判があちこちから聞かれます。
メディアも世論と同様、反対や慎重論が優勢です。トランプ大統領の派兵要請直後の16日付朝刊の社説を集めてみました。
「米国のホルムズ派兵要請、受け入れられない」(京郷)
「米国のホルムズ派兵要求…同盟と国益を共に考慮すべき」(国民)
「米ホルムズ派兵要求…『国益と協調』原則で適切にはかりにかけるべき」(東亜)
「軍艦を送れというトランプ…同盟コストと国益の絶妙なバランスを」(ソウル)
「『ホルムズに韓国軍艦送れ』、国益優先の戦略的対応が切実」(世界)
「ホルムズの海路を共に守ろうというトランプの要求」(朝鮮)
「ホルムズ派兵要求、国益・同盟考慮した精巧な戦略を」(中央)
「ホルムズ派兵、国益損なう戦争に巻き込まれてはならない」(ハンギョレ)
「『軍艦を送ってほしい』というトランプ…関税圧力から間もないのに」(韓国)
最も味気ないのは朝鮮日報の見出しです。しかし、社説の中身は「韓米同盟、国益確保、イランとの関係をすべて考慮した戦略的決定が必要な事案」だという慎重論を展開しています。
嶺南大学元教授のキム・ヨンスさんは、20日付の朝鮮日報に「トランピズムはなぜ失敗しているのか」と題するコラムを書いています。
「米国が一方的に損をしており、利用されているという被害意識にとらわれている。同盟国はみな悪党だ。そのため、同盟国の腕をへし折って巨額の関税を徴収し、投資を促す。イランが『差し迫った脅威(imminent threat)』をもたらさない戦争に、同盟国の軍艦を動員せよと激しい怒りをあらわにしている。しかし同盟国だからといって、『壮大な失敗』をさらに壮大にすることに同調するだろうか。『壮大な怒り』は同盟国ではなく、自分自身に向けるべきだ」
「価値は単なる幻想ではなく、現実をより現実的にする堅固な基盤だ。偽りと屈従の砂の城の上に同盟の塔を築くことはできない」
事実上、派兵に反対する内容です。
米国の不当な派兵要請に、韓国はどう対処すべきでしょうか。大統領府の高官は「韓国の国内法および手続き、朝鮮半島の準備態勢などを考慮しつつ、対処策を慎重に検討している」として、「国益に最適化した選択肢の組み合わせを模索中」だと語りました。結局は、李在明(イ・ジェミョン)大統領が決断しなければならない問題です。どうすべきでしょうか。
中央日報は「ホルムズ派兵のジレンマ、先例に妙手求めよ」と題して21日付の社説を書いています。
「トランプ第1期時代の2019年に、イランのホルムズ海峡封鎖により米国が『護衛連合』を推進した際の前例も、改めてふり返る必要がある。日本は調査・研究目的の自衛隊艦艇の派遣、韓国はアデン湾の青海部隊の活動範囲の拡大カードによって米国の要求を一部受け入れつつ、戦争介入の可能性を最小限に抑えた。その前の、2003年のブッシュ政権によるイラク派兵要求の例も参考にしてほしい。当時、大規模な戦闘兵派兵要求に対し、政府はイラク国内の相対的に安全な地域への3000人ほどの非戦闘兵の派兵という代案を見出している」
私はこのような主張には同意しません。韓国は今回、米国の派兵要請をはっきりと拒否すべきだと考えます。日本の高市首相は、730億ドル(109兆ウォン)の対米投資でトランプ大統領の歓心を買い、派兵を事実上拒否しました。韓国もそうすべきです。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は死後の自伝に、イラク派遣に対する考えを詳しく、かつ率直に残しています。今、私たちが心に刻んでおくべき内容が多く記されています。
「イラク派兵は正しくない選択として歴史に記録されるだろう。当時もそう思っていたし、今もそう思っている。正しいと信じたからではなく、大統領を務める者として避けられない選択だから派兵したのだ。時にははっきりと分かっていながら過ちの記録を歴史に残さなければならないという大統領の座は、実に難しく、重かった」
「妥協的な解決策を見つけ出し、米国の了解を求めるにあたって、市民団体の強力な派兵反対運動が大きな支えとなった。市民社会の強力な反対運動と非常に批判的な国民世論があったからこそ、ブッシュ大統領もこの水準の派兵を理解し、受け入れたと思う」
「韓国は国際舞台において米国の力を借りなければならないことが多い。経済的にも米国とは円満に過ごさなければならない。枯れた枝を折るようにはふるまえない。一つひとつ変化させていけば、いつかは正しくない戦争に対する派兵要請を拒否しても自然に受け入れられる時代が来るだろう」
まとめます。人の命は経済的価値には換算できません。人を殺す戦争はそれそのものが絶対悪です。今回の戦争を引き起こしたイスラエルのネタニヤフ首相とトランプ大統領は代償を払うことになるでしょう。もしかすると、盧武鉉大統領の言った『派兵要請を拒否しても自然に受け入れられる時代』は、まさに今かもしれません。勇気を出さなければなりません。みなさんはどうお考えですか。
2026/03/22 09:00
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/55754.html