イランが核兵器保有能力まで備える前に行動が必要だという認識は米国だけでなく周辺国の間でも共有されたと考えなければならない。戦争が始まるとイランが周辺のイスラム諸国を攻撃し、イスラエルの全方向的爆撃にも周辺国が沈黙を守った理由もそうした脈絡で理解できる。
◇戦争後の変化と機会要因
イランのホルムズ海峡封鎖が強力な武器であることは証明された。だがイランの軍事的・経済的能力が顕著に弱まったのも事実だ。数十日にわたる爆撃にも反撃のレベルはわずかで、最後のカードとだけ考えられてきたホルムズ海峡封鎖に命運をかけたという事実自体がイランの実質戦力が思ったよりも弱いことを傍証する。戦争前にもイラン経済は財政枯渇とエネルギー危機、50%に達するインフレで破綻寸前だった。今回の戦争で受けた被害は最小3000億ドルから1兆ドルに達するという報道もある。国際機関が試算したイランの国内総生産(GDP)が2024年に約4000億ドルであることを考慮すれば途轍もない水準だ。
戦争後の中東の未来はGCC諸国の秩序回復努力にかかっている可能性が大きい。イランを除いた域内諸国はホルムズ海峡だけでなく紅海に対する依存度を低くすることを真剣に模索するだろう。国際エネルギー機関(IEA)事務総長は最近アゼルバイジャンとトルコをつなぐBTC送油管をイラクともつなげようという具体的提案を出したりもした。迂回ルートもやはり武装勢力の脅威を受けることはあるだろうが、イランの弱体化によってその力は減るだろう。逆説的だが今回の封鎖後にホルムズ海峡の戦略的価値は低くなるだろう。
冷静な見方だが、このような変化は韓国には機会になるかもしれない。中東地域のインフラ構築と防衛産業などでの協力の余地は十分だ。中国企業が独占してきた一帯一路事業と違い、IMECやTRIPPのような西側主導の連結ルートが活性化すれば韓国の参加の可能性も大きくなる。中東の安定が隣接する中央アジアの資源大国の戦略的価値を引き上げる点も海外戦略策定に反映しなければならない要素だ。
◇経済安全保障戦略強化の必要性
ホルムズ海峡封鎖で韓国は原油とナフサの需給に大きな支障が出ている。米戦略国際問題研究所(CSIS)は韓国が非戦闘国の中で最も大きな影響を受けた国だと論評した。根本的な原因は韓国の産業構造が原油とナフサなどの輸入に依存しているところにある。韓国の石油化学産業はナフサを原料に使うナフサ分解施設(NCC)方式が主流だが、韓国のナフサ依存度は約83%に達する。米国がエタンクラッカー中心でナフサ依存度が4%水準であるのは対照的で、中国の50%と比較しても顕著に高い。ナフサはロシアとウクライナの戦争開始後にロシアからの輸入が制限され中東への依存度が急激に高まった状態だ。今回の戦争でその脆弱性が現れた。
韓国政府はナフサを経済安全保障品目に一時指定し緊急需給調整に出るなど迅速に対応した。しかし事後の対応では限界がある。常に韓国の産業の脆弱な点を体系的に把握し、問題が発生する前に備えなければならない。例えば世界貿易量の約20%、韓国の物流量の40%が通過する台湾海峡の緊張が高まればその衝撃ははるかに大きいだろう。
一方、核心的なボトルネック地点を意味する「チョークポイント」は地理的に海峡にだけ限定されない。中国のレアアースのように必要な瞬間にレバレッジにできるあらゆる要素が該当する。逆に韓国も交渉力を高めるためのチョークポイントを発掘し守っていく必要がある。現在としては先端半導体生産能力が最も有力な候補だ。韓国領土内の半導体産業基盤を維持、強化しなければならないもうひとつの理由だ。
◇戦略的能動性が必要だ
これからは3つの方向の対応を急がなければならない。最初に、インド太平洋地域で米国の経済・安全保障戦略と衝突せず、その中で韓国の利益を最大化する産業・通商戦略を追求しなければならない。日本と東南アジア諸国との供給網構造再構成にも積極的に臨まなければならない。2番目に、中東情勢変化にともなう機会要因を逃してはならない。GCC諸国だけでなく、中央アジア、コーカサス諸国との協力機会も積極的に模索する必要がある。3番目に、経済安全保障的な見方を拡張し多様なシナリオに備え韓国が持っているチョークポイントを持続的に発掘・育成しなければならない。戦争後の変化はすでに始まっている。対応を急ぐほど韓国が立つ場所も広くなるだろう。
権南勲(クォン・ナムフン)/産業研究院院長
2026/04/30 11:58
https://japanese.joins.com/JArticle/348412