■ 「フォロワーの時代は終わった。これからはセッターだ」
――韓国と日本は「ルール・フォロワー」から「ルール・セッター」に進むべきだと繰り返し強調されています。どのような意味でしょうか。
「これまで韓国は、米国がつくった世界貿易機関(WTO)体制や自由貿易秩序の枠内で、それに従う役割にとどまってきました。
韓国は人口5000万人規模の国であるため、国際秩序の中で存在感が限られざるを得ませんでした。
しかし、韓国と日本が一つの経済共同体を形成し、相乗効果を生み出せば、世界第4位規模の経済共同体になることができます。
さらに、価値観を共有し、経済体制も似ている東南アジア諸国、ニュージーランド、オーストラリアまで加われば、10兆ドル規模の経済圏を形成する潜在力もあります。
それだけの力を持てば、韓国と日本が力を合わせ、国際秩序の中で独自の役割を果たすことができます。
単にルールに従うのではなく、ルールをつくる役割、すなわちルール・セッターになることができるという意味です。
現在、自由貿易秩序は大きく揺らぎ、大国政治が復活しています。トランプ、プーチン、習近平の時代が到来したと言うこともできるでしょう。
しかし、国際主義的秩序、自由主義的国際秩序、自由貿易秩序を依然として重視する国々が連帯することは可能です。
志を同じくする国々が共に進めばよいのです。欧州にEUがあるように、インド太平洋地域では韓国と日本が、そうした国々を受け入れる器になり得ます。
米中競争の中で、国際法と法の支配に基づく国際秩序を実現する役割を、韓国と日本が担うことができると考えています」
■ 「原油調達では、弱い買い手から主導権を持つ側へ」
――では、韓国と日本が実際に新たなルールをつくることのできる分野は、どこでしょうか。
「さまざまな分野があります。最近、最も多く議論されているのがエネルギーです。
韓国と日本は、世界でも有数のエネルギー輸入国です。とりわけ中東産原油については、かつて韓国と日本が輸入国の第1位、第2位でしたが、中国の台頭によって、現在は第2位、第3位程度に後退しています。天然ガスも事情は似ています。
問題は、韓国と日本がそれぞれ別々に動けば、買い手でありながら、交渉上は弱い立場に置かれることです。
しかし両国が共に動けば、購入規模が大きくなり、交渉力の主導権を持つ側に近づくことができます。
LNGや中東産原油を購入する際、価格交渉力などの面で、はるかに有利な条件を確保できるでしょう。
もう一つはエネルギー転換です」
――エネルギー転換とは、具体的に何を指しますか。
「原子力、とりわけ小型モジュール炉(SMR)が代表的です。
現在、原子力発電を本格的に推進できる国は多くありません。日本は福島第一原発事故後、原子力分野から相当程度距離を置きましたが、もともと伝統的な原子力大国であり、蓄積されたノウハウがあります。
韓国も一時期、原子力事業が停滞しましたが、アラブ首長国連邦(UAE)への原発輸出経験などを通じ、依然として能力を維持しています。
両国が力を合わせれば、世界の原子力市場で主導的な役割を果たすことができます。そこに米国まで加われば、協力の幅はさらに広がるでしょう。
水素分野も重要です。水素エネルギーを実用化するには、巨大なインフラが必要です。
例えば、オーストラリアからアンモニアを輸入し、それを精製して水素エネルギーに転換し、水素自動車などに活用するためには、精製、貯蔵、輸送施設などのインフラを新たに構築しなければなりません。
一国だけで負担するには、天文学的な費用がかかります。韓国と日本が共同で取り組めば、実現可能性ははるかに高まります」
――韓日間の電力網接続についても言及されています。
「エネルギー・スーパーグリッドも、十分に検討可能な構想です。
釜山と福岡の間を海底送電線で結び、電力需要のピーク時間帯に応じて電力を融通し合うことも考えられます。
風力発電などにも協力の余地があります。
このようにエネルギー分野は、韓日両国が直ちにでも着手できる代表的な協力分野だと考えています」
■ 最大の障害は「相互不信」と歴史問題
――現在、最も注目されている半導体分野では、どのような協力が可能でしょうか。
「半導体も極めて重要な分野です。ただ、私たちがしばしば誤解している点があります。
韓国がメモリー半導体分野で世界最高水準にあることは事実です。しかし、サムスン電子の半導体一つをつくるためにも、オランダの露光装置、日本の東京エレクトロンをはじめとする各種装置や素材、米国の設計技術が組み合わされています。
半導体は韓国だけ、あるいはサムスン一社だけでつくることのできる製品ではありません。徹底した国際分業の産物です。
日本は半導体の前工程と後工程、素材、部品、製造装置の分野に強みを持ち、韓国は製造分野に強みがあります。
両国が協力すれば、先端半導体、光半導体、新素材分野でも新たな機会を生み出すことができます。
日本には特許や基礎・源泉技術を保有する分野が多くあります。そうした分野で、十分に協力の接点を見つけられると考えています」
――欧州は相当程度まで統合を進めました。一方、韓国と日本は地理的に近いにもかかわらず、統合には至っていません。最も根本的な障害は何でしょうか。
「『韓日経済共同体』という言葉自体が、ある意味、これまでタブー視されてきました。両国社会には、否定的な見方がかなり根深く存在しています。
韓国では、『事あるごとに輸出規制を行う国と、どうして経済統合できるのか』という世論があります。歴史問題も大きな比重を占めています。
歴史の清算が十分に行われていないのに、経済共同体から先に議論してよいのかという考え方です。大東亜共栄圏や、日本に吸収されるのではないかというトラウマも、韓国社会の底流に残っています。
反対に日本では、韓国を本当に信頼できるのかという疑問があります。
経済統合は、最も信頼できる国同士でのみ可能なものです。しかし日本には、韓国は政権が変わるたびに経済・安全保障政策が揺れ動くという見方があります。
そのような状況で、どうして韓国を信頼し、経済共同体を進められるのか、というわけです。
また、双方とも『技術を奪われる』という懸念を抱いています。韓国は日本に技術を奪われると考え、日本は韓国に技術を奪われると考えています。
結局、こうした相互不信と歴史問題が、韓日統合における最大の障害だと思います」
2026/07/23 14:00
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