日帝強制動員の被害者の象徴とされてきたヤン・グムドクさんが尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の第三者弁済案を受け入れた背景に疑問が呈されている。
ヤンさんを支援してきた(社)日帝強制動員市民の会(市民の会)は24日に発表した声明で、「ヤンさんは認知症で認知能力が薄弱な状態にあり、意思決定や表現も非常に難しい。このような状況にあって、判決金(賠償金など)の受領が完全にヤンさんの意志によるものなのかについては今も疑問」だと述べた。
ヤンさんは戸籍上93歳とされているが、実際の生年月日は1929年12月30日で、今年で95歳になる。ヤンさんは高齢で体が不自由ではあったものの、昨年3月に国会で開かれた外交統一委員会全体会議に参考人として出席するほど、健康に大きな異常はなかった。しかし、老衰で同年5月から入退院を繰り返し、認知症判定を受けて同年11月からは外部活動を中止し、光州(クァンジュ)の療養病院で生活している。市民の会は、ヤンさんの介護・医療費が負担だという家族の要請を受け、当時3千万ウォンを支援したと説明している。
このような中、行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団のシム・ギュソン理事長が光州を訪れた際、ヤンさんの家族は第三者弁済に合意したという。市民の会の関係者は家族に、「ヤンさんの今まで維持してきた名誉と尊厳が守る」ようを要請したが、家族は第三者弁済案を受け入れたという。
23日午前にヤンさんが第三者弁済案を受け入れたと報道された直後、市民の会の関係者がヤンさんを訪ねたが、まともに会話ができないほど、ヤンさんの認知症の症状が悪化しているのを確認している。
その後、ヤンさんの家族は市民の会の関係者との電話で、「母を説得し、『お前たちの考える通りにしろ』と言われた」と話したという。同日、外交部アジア太平洋1課は各報道機関に対し、「ヤン・グムドクさん、第三者弁済案受け入れ」と題する公示で「日帝強制動員被害者支援財団は23日、強制徴用最高裁判決に関連する政府の解決法の受け入れ意思を明らかにした生存被害者1人に、判決金と遅延利子を支給した」と発表した。第三者弁済案は、2018年に最高裁で勝訴した日帝強制動員の被害者に対し、日本の戦犯企業に代わって国内企業が日帝強制動員被害者支援財団に出した寄付金から判決金を支給するというもの。
ヤンさんは2022年9月に自宅に訪ねてきたパク・チン外交部長官に、「三菱(日帝戦犯企業)が謝罪し、金もくれるべきだ。他人が肩代わりすると、日本がヤン・グムドクをどれほど無視することか。他人がくれるなら絶対に受け取らない」と述べるなど、一貫して拒否の意思を表明してきた。
ヤンさんは三菱重工が賠償金(1億2千万ウォン)の支払いを拒否していることに対し、国内の2件の商標権の差し押さえ手続きを踏み、最高裁の強制売却命令の最終判断を待っていた。市民の会は昨年6月、ヤンさんら第三者弁済案を拒否した4人の被害者(生存2人)を支援するために歴史正義市民募金を開始。1年間で8666件、6億5500万ウォンを集め、各被害者に1億ウォンを支給している。
市民の会の会員たちは、政府が批判を浴び続ける第三者弁済案の正当性を確保するために、ヤンさんが亡くなる前に家族を懐柔したとみている。
ある会員は、「金が問題だったとすれば、法定利子がついて判決金の受領が遅れれば遅れるほど受け取るべき金額が膨らむ」として、「外交部の公示にヤン・グムドクさんの名があるのをみると、結局のところヤンさんが受け入れたということを見せよう、ということではないか」と主張した。
市民の会は、「すべての経緯を知ることはできないが、日本の謝罪と三菱による賠償のために先頭に立ってきたヤン・グムドクさんの足取りがここで止まったことに対して遺憾を禁じえない」とし、「ヤンさんの挫折は親日ばらまき外交を引っ張ってきた尹錫悦政権に責任がある」と述べた。
2024/10/24 18:18
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