「次世代の中国指導者と新しい関係を結ぶことを希望した」
シンガポールのリー・シェンロン上級相が昨年11月末、中国上海で陳吉寧党書記(61)に会った後に述べた言葉だ。陳吉寧党書記を中国の次世代指導者として公認するというニュアンスだった。
シンガポール首相に在職した20年間、14回中国を訪問したリー氏は、中国の政治に詳しい。そのリー氏がトランプ氏の当選直後、5泊6日の日程で訪中し、中国は習近平国家主席(72)、王滬寧・全国政治協商会議主席(70)、何立峰・国務院副首相(70)、陳書記の4人が会談者として出席した。米中間の橋渡し役として有名なシンガポールの実力者を招待したためだった。
リー上級相は、最年少の陳書記との会談のため、蘇州から北京を経て、再び上海を訪れた。これについて専門家の間では「2年後の2027年、中国共産党21次党大会で予想されるリーダーシップ改編まで考慮した歩み」という分析が出ている。
陳書記は昨年1年間、世界の政財界のVIP68人に会った。韓国中央日報が上海党機関紙「解放日報」の陳書記動静記事を全数分析した結果、昨年1月2日、ローレンス・サマーズ元米財務長官を皮切りに1年間、グローバル政治家22人、多国籍企業のトップ46人と会談を行った。
続いて昨年、ドイツのオラフ・ショルツ首相(4月)、トニー・ブリンケン米国務長官(4月)、イタリアのジョルジャ・メローニ首相(7月)、アントニオ・グテーレス国連事務総長(9月)、スペイン・ノルウェー首相(9月)、フィンランド大統領(10月)まで国家首班22人が北京とは別に上海を経て陳書記に会った。
経済界のリストは一層華やかだ。昨年1月10日、スイスUBSのコルム・ケレハー議長を皮切りに、スターバックスのハワード・シュルツ創業者(3月)、英スタンダードチャータードCEO(4月)、ナイキ(6月)、サウジアラビア国富ファンド総裁兼アラムコ会長(7月)、メルセデス・ベンツCEO(9月)、プルデンシャル、ノバルティス会長(9月)、モンクレア会長(10月)、ウォルマートCEO(10月)、ゼネラルエレクトリック(GE)ヘルスケアCEO(11月)、フォルクスワーゲン会長(11月)など金融・自動車・製薬・不動産など世界屈指の企業総帥らが陳書記と会談を行い、中国事業を協議した。
陳書記が接見した外賓の名簿は同じ政治局委員が治める北京・広東・重慶・天津では見られない現象だ。陳書記の独走に米国時事評論家の鄧聿文氏は「中国政府が北京より上海にさらに重要な政治的地位を付与した可能性がある」とし、「陳吉寧は今後一段階上に上がる可能性が高い」との見方を示した。
陳書記の浮上には3つの背景が作用した。第一に、陳書記と習近平主席との関係だ。1964年生まれの陳書記は、習主席の母校である清華大学の学部を卒業した。習主席、陳希・現中央党校校長(72)とともに清華出身の「鉄のトライアングル」と呼ばれている。しかも、習主席が重視している環境の専門家だ。学部で環境工学を専攻し、清華大学総長、環境部長、北京市長を歴任した。1988年から1998年までの10年間、英国ブルネル大学とインペリアルカレッジに留学した。第20期政治局24人のうち、ほぼ唯一の国際的な背景まで備えた習主席の後継者として挙げられている。
第二に、上海党書記が持つ政治的プレミアムだ。上海書記は政治局常務委員になる足掛かりとして評価されている。歴代の総書記や首相のうち江沢民・朱鎔基・習近平・李昌がいずれも上海書記を経た。2006年、胡錦濤主席と権力闘争から押し出された陳良宇以外に例外はなかった。
第三に、中国経済に占める上海の地位だ。反対に見れば、待望論が時期尚早である可能性もある。これと関連し、国家安保戦略研究院のヤン・ガプヨン首席研究委員は、「グローバル企業のトップと陳吉寧の頻繁な会談は、多国籍企業の中国本社が上海にあるという点も反映されただろう」とし、「一部から出ている陳吉寧が次期常務委員の上位を占めるという待望論は予断し難い」と指摘した。
陳吉寧書記が昨年接見した外賓名簿に韓国人は見当たらない。接見した人物68人のうち半数以上の38人が欧州出身だった。米中の間で欧州を牽引しようとする意図が反映されたという解釈が出ている。アジア圏は10人に過ぎない。韓国はもちろん日本もない。ヤン研究委員は「陳吉寧側の意図的排除なのかどうかまでは分からないが、中国の次世代政治家とネットワーキングを等閑視する韓国政治・経済界の注意が必要」と述べた。
2025/01/28 08:33
https://japanese.joins.com/JArticle/329142