内容に対する評価はまちまちだが、ひとまず興行は成功だ。公開3週目でNetflix(ネットフリックス)グローバル1位を占めている『イカゲーム』シーズン2の話だ。OTT順位集計サイトのフリークスパトロールによると、15日のNetflixTV番組・ドラマのトップ10で韓国ドラマは『イカゲーム』(1位)、『星がウワサするから』(8位、tvN)の2作だ。英国(2作)と1位タイだ。8日の集計でも韓国ドラマは3本で、英国ドラマ3本、米国ドラマ2本と肩を並べた。
しかし、ただ喜んでばかりもいられない。絶えず提起されてきたドラマ危機論はさらに深まっている。『イカゲーム』シーズン2は最近ゴールデングローブ授賞式で『SHOGUN 将軍』に完璧に押された。ディズニー系列FXチャンネルで放映された『SHOGUN 将軍』は日本の俳優が大多数の役を演じ、70%ほどが日本語の台詞だ。作品賞・男女主演賞など4冠を獲得した。
最近、メディア専門家のチョ・ヨンシン氏が出版した『アフターNetflix』は、Netflix特需で勢いに乗っていたKドラマがNetflixという沼に落ち、むしろ危機が深まった現象を診断する。出口はあるだろうか。
◇Netflix時代の明暗=来年で国内進出10年のNetflixは韓国の制作・創作者にとって新たなチャンスだった。1兆ウォン(約1080億円)以上のオリジナルコンテンツ制作に投資し、『イカゲーム』などでKドラマの世界的地位を高めた。Netflixの立場では新規加入者の60%がアジア市場から出ているが、低い製作費と高品質でコスパの高い韓国ドラマが武器だった。現地化戦略が通用し、現在アジアの大半の国家で上位10作のうち4~6作が韓国ドラマだ。NetflixのKドラマはアジア>南米>北米・欧州の順で人気が高い。
問題はNetflixが韓国ドラマの勢力を拡大したが、Netflixへの依存度ばかり高め、成長動力は弱まり、製作現場は荒廃したという点だ。Netflix発コンテンツ競争は製作費用の急上昇をもたらし、弱小製作会社が立つ場所を失った。2019年まで毎年100本余りだったドラマ製作本数は2020年以後130~140本に増えた。『イカゲーム』『ナルコの神』など、1話当たりの製作費が30億ウォンを越えるドラマも多数出てきた。俳優のギャラも高騰し、一部の助演まで1話当たり3~4億ウォン説が出回った。Netflixではない国内ドラマに出演し「グローバル認知度を高める可能性を放棄した代価」としてさらに高いギャラを要求する場合も生じた。
製作費と作品数は増えたが、OTT時代の財政難に直面した地上波がドラマ編成を減らし、供給過剰の混乱が起きた。暗黙的に合意していた編成が取り消されたりもした。さらに、Netflixは2023年を基点に、国内オリジナル製作の割合を減らし、日本アニメーションの需給を増やすなど、汎アジア戦略の修正に乗り出した。昨年、数百億ウォン台の期待作が興行に失敗し、オリジナルドラマの製作本数と製作費の削減、ギャラ上限線の提示など「Kコンテンツダイエット」の措置が可視化されている。
お金がかかったドラマ製作会社の株価は2021年対比5分の1に縮小され、製作費は2021年対比2倍になった。編成されていない「倉庫ドラマ」が100作を越える。Netflixに市場の主導権を奪われた過酷な結果だ。
◇『アフターNetflix』の生存法=著者は果敢な「脱Netflix、脱アジア」戦略を解決策として提示する。国内製作会社が日本・タイなどアジアの製作力量・資本と結合し北米・欧州のアジア市場攻略に乗り出すべきだということだ。ラテン系の人口を媒介にラテンコンテンツが北米市場の主流に上がったように、日増しに増える北米アジアの観客を掘り下げて北米・欧州中心OTTを突破しようという提案だ。実際、北米ではラテン人口が10%を超えた2000年代から主流メディアにラテン系コンテンツが増えた。2022年には俳優全員がラテン系のドラマ『ゴルディータ・クロニクルズ』(HBOマックス)が人気を集めた。
2024年現在、北米のアジア系は7.2%で、10年後には10%と予測される。スーパーIP(知的財産権)を多く保有する日本、アジアの新興コンテンツ強者タイなどアジア諸国との協業が重要だ。すでに現実で変化は起こっている。CJENMは『銀河鉄道999』『ドラゴンボール』『ONE PIECE』『SLAM DUNK』等、数多くのIPを保有したアニメーションの名家・東映アニメーションとグローバルコンテンツ共同製作協約を結んだ。東映アニメーションの実写化や共同IP開発等を推進する。汎アジア製作力量を集めたコンテンツがNetflixを越えてHBO、アマゾンプライムビデオ、パラマウントプラスなど北米・欧州のOTTに販路を拡大できればいくらでもチャンスはあるという診断だ。
ヤン・ソンヒ/中央日報コラムニスト
2025/01/28 10:49
https://japanese.joins.com/JArticle/329155