韓国では最近、ほとんどすべての大学病院に睡眠センターがある。快眠を大学病院に来てまで求めようという患者が増えているためだ。睡眠センターはがんセンターのように精神科・神経科・耳鼻咽喉科など複数の科が集まって診療を行う。睡眠障害の原因や処置はさまざまだからだ。このように医療機関を訪れた睡眠障害の患者は年間約83万人に達する(2023年基準)。これは10年前の2倍だ。
韓国の睡眠ビジネスは最大の好況期を迎えている。熟睡のために財布のひもを解いて支払う額は年間4兆ウォン(約4200億円)に達する。眠りがお金になるのだ。睡眠誘導ホルモンとして知られているメラトニンは、韓国でこれまで医師の処方が必要な専門医薬品だったが、今では薬局で購入して飲むことができるさまざまな製品が出ている。
数日前、世界最大の家具量販店「イケア(IKEA)」が57カ国・5万5221人を対象に睡眠の質をアンケート調査した結果を発表した。これによると、「睡眠の質が良い」と答えた韓国人の割合は17%で、世界最下位となったという。これは戦闘状況下にあるウクライナ(46%)より低い。全体の平均は 67% だった。韓国人の一日平均睡眠時間は6時間27分で、「睡眠不足」がひどい国に挙げられている。死亡率が最も低く、寿命が最も長いのは一日7時間から7時間半の睡眠時間だとのことだ。
韓国人の睡眠障害の原因は、世代ごとに違う。10代は学業のストレスと関連がある「睡眠剥奪」が問題だ。20-30代は夜間に活動が多すぎる生活習慣や24時間のフードデリバリー、スマートフォンの使いすぎのせいだ。40-50代は肥満によるいびき・睡眠時無呼吸症候群が多く、昼間の身体活動不足や増え始めた慢性疾患が原因だ。60-70代は年を取るにつれて睡眠を維持するホルモンと脳機能が低下してくる上、前立腺肥大症・うつ病・不安などで早朝に目が覚めることが多くなるためだ。
数年前、日本で睡眠健康指導者教育を受けたが、そこで睡眠障害改善のために最も強調されていたのが「平日でも休日でも毎朝一定の時刻に起きること」だった。人間の脳には生体時計があり、朝、日差しの刺激を受ける時刻によって一定時間起きて活動し、15-16時間後に自然と眠くなるというのだ。睡眠は時間の科学だ。朝に一定の時刻に起床し、午前にメラトニンの原料となる卵や豆腐などトリプトファンを含む食品を摂取し、昼に日差しを浴びながら歩き、夜は活動を減らして光の露出を最小限にすれば、毎晩眠りの訪れを自然に待つことになる生活が送れるようになる。
金哲中(キム・チョルジュン)論説委員・医学専門記者
2025/03/09 07:00
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