やはり日本は米国のかゆいところを正確を掻いた。そして日本の利益を何気なくのせた。
15日の朝日新聞によると、中谷元防衛相は先月30日、東京でヘグセス米国防長官と会談し、韓半島(朝鮮半島)と東シナ海・南シナ海を「一つの戦域(ワンシアター)」にしようと提案した。中谷防衛相はヘグセス長官に「日米豪、フィリピン、韓国などを一つのシアター(戦域)ととらえ、連携を深めていきたい」と述べたという。米国が韓半島と東・南シナ海を「一つの戦域」にすれば日本が積極的に支援するという意味と考えられる。
日本国内でも中谷防衛相の提案はまだ決まったものではないという評価が出ている。しかし中国の牽制を最優先課題とする米国としては中谷防衛相の提案は耳寄りな話だった。ヘグセス長官が石破茂首相との会談で「一つの戦域」構想に言及したというから満足しているようだった。
トランプ政権2期目は「米国を再び偉大に(MAGA)」を叫びながら孤立主義に戻ろうとしている。このような時に日本が中国に対抗するとして手を挙げたのが「一つの戦域」だ。米国をインド太平洋に括っておきながら日本の地位を高めようという狙いが隠れている。
◆米日、水面下で中国包囲網ビルドアップ
戦争区域(Theater)、略して「戦域」は戦争が行われる空間だ。空中・地上・海洋だけでなく最近は宇宙・サイバーに戦域を拡張する傾向にある。米国のインド太平洋軍司令部は米国西海岸(太平洋)から東経66度(インド洋)までを作戦責任区域(AOR)とする。笑い話で「ハリウッドからバリウッドまで」と言ったりもする。南極もインド太平洋軍司令部が担当する。現在は平時であるため戦域でなく作戦責任区域と呼ぶ。
米国と日本が韓半島と東・南シナ海を「一つの戦域」にすることを望む背景には「台湾事態」がある。中国が台湾を侵攻する場合、北朝鮮は在韓米軍の足を引っ張ろうとして韓半島で武力挑発を起こす可能性が高い。また、中国は米国の戦力が配置された沖縄やグアムを攻撃する可能性がある。現在のように在韓米軍は韓半島だけ、在日米軍は日本だけと分けて守るのが難しい環境だ。実際、中国は有事の際、東部戦区(台湾)、北部戦区(韓半島)、南部戦区(南シナ海)を一つにする指揮体系を検討しているという噂が聞こえる。
その間、米国は北朝鮮の核・ミサイル脅威を前面に出し、韓国と日本を安保協力の枠で括ろうと努力してきた。文在寅(ムン・ジェイン)政権当時にここから抜け出そうとしたところ、米国が動いて驚いた。韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了6時間前の2019年11月22日午後6時、「条件付き猶予」を発表したのが代表的な例だ。当時、米国の全面的な圧力が強かった。
最近、米国は韓米日の反中同盟を内心望んでいる。「歴史葛藤」のために韓国と日本が今すぐ手を握るのは難しい。それで「一つの戦域」が代案として提示されたのだ。米国と日本は水面下で「一つの戦域」をビルドアップしている。
日本は先月24日、自衛隊統合作戦司令部を創設した。自衛隊を統合指揮しながら在日米軍と調整するのが司令部の任務だ。これに先立ち米国と日本は2024年7月28日、在日米軍を統合司令部に再編すると明らかにした。在日米軍(5万5000人)は在韓米軍(2万8000人)より規模が大きい。しかし在日米軍司令官(空軍中将)は在韓米軍司令官(陸軍大将)より低く、統合作戦司令官でもない。沖縄の第3海兵遠征軍、横須賀の第7艦隊もハワイのインド太平洋軍司令部が指揮する。
米国は在日米軍司令官を3つ星(中将)から4つ星(大将)に格上げしようとしたが取り消した。米国防総省は将軍の数を減らし、在日米軍の兵力と現代化計画も縮小対象として検討している。すると日本が「一つの戦域」を持ち出したのだ。
◆米国、韓国新政権に全方位圧力の可能性
最近米国から聞こえる噂によると、日本の強力なロビー活動のため米国がインド太平洋軍司令部の太平洋空軍司令官を4つ星から3つ星に下げ、4つ星を在日米軍に与えようとしているという。
トランプ政権2期目の任期内に戦時作戦統制権を韓国に転換する場合、連合司令部副司令官となる在韓米軍司令官を4つ星から3つ星に下げる可能性もある。文在寅政権とぎこちない関係だった国連軍司令部を日本に送るという話も聞こえる。国連軍司令部は1953年7月24日に東京で創設され、停戦協定を管理しようと1957年7月1日にソウルに移った。
こうした構図が現実化すれば、韓半島防衛は対中国戦略の従属変数に転落する。米国が「一つの戦域」をインド太平洋軍司令部から切り離して統合戦闘司令部を別に創設する可能性もある。「一つの戦域」司令官はインド太平洋軍司令部を経ることなく、米本土と海外の増援戦力、核・宇宙・サイバー戦力を直接受ける可能性がある。また、米大統領・国防長官・議会に直接報告しながら、海外の国家首班を相手にするかもしれない。
「普遍関税」に見られるようにトランプ大統領の「一進一退」国政には批判が多い。国政方向が決まらず、行政府の手足が合わないためかもしれない。トランプ大統領特有の人気迎合主義とアマチュアリズムはこれをさらに深刻にする。
しかし今年秋、トランプ政権2期目の安保政策の下絵が完成する。米国の国家戦略書(NSS)と国防戦略書(NDS)が出るからだ。ほとんど韓国で新政権が発足して内閣が構成された直後だ。トランプ大統領がこの2件の文書を持って韓国に圧力を加えてくるのは明らかだ。政権交代期だからといって油断すれば大変なことになる。文在寅政権当時のように粗雑に扱えば大きく失ってしまう。
国防部国際政策次長を務めたパク・チョルギュQSIMプラス最高ネットワーキング責任者は「米中の葛藤に巻き込まれないよう今から米国と緊密に意思疎通しながら我々の立場をよく説明しなければいけない」とし「東・南シナ海有事が韓半島に広がらないよう、韓国が主導的に防衛態勢を強化して抑止力を維持すると米国を説得するのも方法」と提示した。
イ・チョルジェ/軍事安保研究所長/国防記?
2025/04/17 14:15
https://japanese.joins.com/JArticle/332686