【時論】自由貿易と多国間主義を脅かすトランプ2期目

投稿者: | 2025年4月24日

今年は国連創設80周年であり世界貿易機関(WTO)発足30周年となる意味深い年だが、多国間主義と自由貿易はトランプ政権2期目の現在、重大なヤマ場を迎えている。トランプ政権2期目に入って100日が近づく時点に、世界の通商秩序には前例のない危険な波が押し寄せている。トランプ政権の関税政策は単なる一方主義の象徴を越え、新しい次元の「不確実性ゲーム」となっている。

韓国を狙った関税リストは交渉テーブルに幾重にも重ねられている。相互関税25%は7月9日まで一時的に猶予されたが、90日ほどの期間に交渉を終えなければいけない。鉄鋼・アルミニウム、乗用車、軽トラック、電子部品など主要品目別関税25%はすでに課税または近く課税される予定だ。

 さらに通商拡大法第232条に基づく調査対象には半導体・医薬品・銅・木材だけでなく、核心鉱物やレアアース(希土類)が入った加工品と派生商品までも含まれている。いつどの品目がトランプ政権の高関税標的になるか分からない。

トランプ2期目は半導体・スマートフォン・ノートブックなどを関税例外対象と発表してからわずか2日後、また関税を課す可能性に言及した。したがって一貫性のない米国の通商政策に企業の未来をかけるのは無謀なギャンブルと変わらない。最近の米国の関税政策は戦略的調整というには過度に感情的であり、きめ細かな設計とはいえず、あまりにも粗雑で気まぐれだ。

しかし混沌の中でも一つ明らかな事実がある。トランプ1期目とは違い2期目に入って関税政策の核心標的である中国の態度が明確に変わった点だ。8年前には中国・欧州連合(EU)・カナダ・トルコなど多くの国が競争するように米国の関税措置に関連して世界貿易機関(WTO)に提訴した。しかし今回はEUなど多くの国がためらう中、中国だけが単独で米国をWTOに提訴した。

中国は多国間貿易体制を基盤としたリングで関税パンチに持ちこたえる自由貿易主義の守護者、ボクシングチャンピオンに変身したような姿だ。中国は米国など西側の制裁に報復する法的根拠として用意された「反外国制裁法」をより一層強化し、周辺国に「運命共同体」を結成しようとする対抗政策を始めた。

最近、戴兵駐韓中国大使がSNSに滑稽な動画を載せた。「米国」という名札を付けた羊が「中国」羊に向かって頭から突進するが、むしろ倒れてしまうという動画だった。米国が発動した米中通商戦争で中国は米国のいかなる脅迫にも退かず勝利するというメッセージを映像で間接的に見せた。実際、米国と中国は互いに関税を引き上げ、米国の対中関税率は最大245%、中国の対米関税率は125%まで上がった。

米国は来年11月の中間選挙という時間の制約に追われるが、中国は共産党1党支配の権威主義体制という特性のため長期戦体制で対抗する態勢だ。もちろん中国は対米輸出がふさがれば慢性的な過剰生産を解消するため低価格輸出に没頭する。これによる最大の被害は隣国の韓国になるだろう。24日に韓米財務・通商長官「2プラス2」通商協議を控えた韓国の選択は慎重でなければいけない。

まず、米国が提案した造船産業協力、LNG購買とアラスカ州パイプライン投資など米国の要請リストに対する実利中心の接近を図る必要がある。米国が望むリストには韓国のサプライチェーン確保に役立つ項目も確実にある。2つ目、韓国の立場で相互関税よりさらに重要なのは品目別の関税だ。日本が韓国より先に自動車・鉄鋼関税免除を米国に打診中であり、日本の対米交渉過程を眺めながら戦略を精巧に整える必要がある。

3つ目、CPTPP(包括的・漸進的環太平洋経済パートナー協定)加盟を急いでサプライチェーンを分散し、輸出と投資の多角化を図らなければいけない。対内的には中国産の低価格物量攻勢に対して反ダンピング調査を強化しなければいけない。トランプ2期目が起こした関税台風が激しいほど、韓国は帆柱のバランスを精巧に保たなければいけない。

イ・ジュヒョン/弁護士/ソウル市立大法学専門大学院教授

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2025/04/24 14:37
https://japanese.joins.com/JArticle/332974

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