トランプ米大統領が米国時間の29日に就任100日を迎える。長くない期間に多くのことがあった。トランプは第2次世界大戦後に米国が率先して広めた規範(norm)で作った自由貿易教理を一気に無力化した。さらに彼は連邦準備制度理事会(FRB)の独立というもう一つの規範も無視した。露骨に金利引き下げを要求した。さらにパウエル議長を追い出す作業が進行中であることを示唆したりもした。
そのトランプの形態をウォール街の人たちは「規範破り(norm-bursting)」という。このためウォール街と近いエコノミストの間では、トランプが次に破る規範を予測するゲームが行われているという。このゲームで最も驚くような予測をした人物がいる。世界的な経営大学院インシアード(INSEAD)のアントニオ・ファタス教授(経済学)だ。ファタス教授は数年前にトムソン・ロイターが「世界金融市場で影響力がある教授」に選んだエコノミストだ。中央日報がシンガポールにいるファタス教授に画像でインタビューをした。
–トランプはどこまでやるのだろうか。このままではダラーリサイクル(dollar recycling)まで終わりそうだ。
米ドルが基軸通貨なので韓国と中国、日本、欧州などはできるだけ多く米国市場に輸出してドルを確保しなければいけない構造だ。米国は国債や株式などを売って韓国などに流れたドルを回収してきた。これが記者がいうダラーリサイクリング構造だ。このリサイクリングは強要によるものではなく米国が自発的に作ったシステムだ。
–自発的に作ったという言葉が意味深長に聞こえる。
1944年に米ニューハンプシャー州ブレトンウッズで、米国や英国など44の代表が集まって第2次世界大戦以降の金融秩序について議論した。その場で英国代表のジョン・メイナード・ケインズの反対にもかかわらず米国がドルを基軸通貨にした。その結果、韓国と中国、欧州が攻撃的に対米輸出をするしかない構造が形成された。トランプが関税戦争をするとしてもダラーリサイクリング構造はすぐに崩れない。韓国などがの対米貿易黒字が少し減るだけだ。実際、私が恐れるのは関税戦争で始まったグローバル不均衡の解消過程ではない。
–何か。
トランプ政権の中心部が混沌としていて、無能で、極めて騒々しい。これは韓国と中国、欧州にとっても最大の心配だ。トランプ政権の不確実性と無能が世界を恐れさせる。
–トランプ政権が無能といったが、彼の経済チームはどうか。
トランプ経済チームは各自独特の見方を持つ人たちからなる。関税戦争を主導するピーター・ナバロ・ホワイトハウス貿易・製造業担当上級顧問、財務政策を担当するスコット・ベッセント財務長官らは異なる考えを持っている。互いに衝突して葛藤する。大きな計画を持って関税攻撃をするのでもない。何よりも彼らはほとんどがファンドマネジャーやビジネスマンだ。
–経済の一線にいたのでよく把握しているのでは。
経済の大きな絵を理解していないということだ。彼らは巨大な経済の1、2部分に関する知識と情報を基礎に米国経済だけでなくグローバル経済全体を操っている。
–その経済チームのサポートを受けるトランプが関税戦争の次は何をするだろうか。
国際通貨基金(IMF)と世界銀行に対する措置だ。トランプは当選直後に「米国が引き続きIMFと世界銀行に残るべきかを調査するグループを作る」と話した。今年6月にトランプ政権内部の分析結果が出る予定だ。
–まさかトランプがIMFまで揺さぶるだろうか。
報告書が出れば、トランプは米国がIMFから脱退する問題を公開的に言及するとみられる。米国はIMFの議決権16.49%を持つ。IMFの重要議決の定足数が85%の賛成であるため、米国が事実上拒否することができる。その米国の大統領がIMF脱退に言及すること自体がグローバル通貨・金融システムに対する信頼を揺るがす。IMF本部は現在ワシントンにあるが、米国が脱退すれば新しく筆頭株主となる国に移さなければいけない。米国が実際に脱退すれば、欧州が米国の代わりになるとみられるが、IMFの信頼が維持されるかは疑問だ。ところがトランプはさらに踏み込む可能性がある。
–IMFに対する脅威が終わりでないということか。
米連邦準備制度理事会(FRB)は(2008年の米国発金融危機以降)通貨スワップを常設化した。危機の瞬間にドルの需要が増えればユーロや韓国ウォンを受けて欧州中央銀行(ECB)や韓国銀行(韓銀)などにドルを貸す(FRBはパンデミック危機の2020年、韓国ウォンを受けて韓銀に600億ドルを貸した)。このような通貨スワップにトランプは「なぜ我々のFRBが他国まで助けなければいけないのか」という疑問を抱いている。
ファタス教授の予測によると、「通貨危機安全弁」のIMFと通貨スワップまでがトランプによって揺らぐということだ。ウォール街の人たちがいう「規範破り」は誇張でないということだ。
◆アントニオ・ファタス=スペイン出身の金融市場専門経済学者。1987年にスペインのバレンシア大学を卒業した後、米国に渡ってハーバード大で経済学修士・博士学位を取得した。現在はインシアード経済学教授。IMF、世界銀行、米FRB、経済協力開発機構(OECD)などが諮問する。
カン・ナムギュ/国際経済記?
2025/04/29 16:12
https://japanese.joins.com/JArticle/333164