在韓米軍のジェイビア・ブランソン司令官は韓米研究所(ICAS)主催のオンラインセミナーで「韓半島から東海を見るとロシアがKADIZ(韓国防空識別区域)を侵犯しており、西海では中国が北方限界線(NLL)周辺を侵犯している」とした上で「それらの問題を解決するには問題の起こっている場所に行かねばならない」と発言した。米国が在韓米軍を固定せず、必要に応じて柔軟に移動と配置を行う背景には中国とロシアの挑戦があり、これは韓国とも決して無関係ではないと指摘したのだ。北朝鮮の挑発抑止は主に韓国軍が担当し、米軍は中国とロシアに集中するという意味にも受け取れるだろう。これは実は米国では以前からたびたび議論されてきた内容だ。
問題はこのような現状で韓国がいかなる対応策を持ち得るかだ。現時点で中国もロシアも韓国にとって直接の軍事的脅威にはなっていない。しかしこの両国はいつでも韓半島に軍事力を投入できる。とりわけ中国はその準備を実際に進めている。
ブランソン司令官は「今は戦間期だ。これがいつまで続くかは誰にも分からない」「その時代の作戦環境と現実に対応できる適切な態勢を国家と軍が整えるため、やるべきことは今のこの戦間期にやらねばならない」とも説明した。有備無患、つまり備えあれば憂いないということで、中国・北朝鮮・ロシアの脅威に備えるため、韓国軍と米軍は常に戦略と戦術を見直し、訓練に取り組まねばならないと訴えたのだ。
ところが大統領候補らが提示する安全保障公約に世界情勢や東北アジア情勢の変化に対する根本的な対応策は見当たらない。5年前に「今後ロシアがウクライナに侵攻する。戦争中に砲弾と兵力が足りなくなるため北朝鮮の支援を受けるだろう」と誰かが語ったとしても、それはあり得ない話に聞こえたはずだ。しかしそんなことが実際に起こるのが国際情勢だ。中国が台湾に侵攻し、これに韓半島が巻き込まれる事態もこのように誰も予想しない中で起こるはずだ。
日本政府は韓半島と東シナ海・南シナ海を一つの戦域とし、中国をけん制する構想を米国、フィリピン、インドなどにすでに説明したという。日本は自国の国益に沿った形で戦略を立てているわけだ。韓国も北朝鮮への対応にばかり気を取られていると、いついかなる形で国益を害する事態を招くか分からない。そのため韓半島周辺情勢を幅広く検討した上で、韓国も独自の戦略を考えておかねばならない。これは決して遠い未来の話ではない。
2025/05/29 10:00
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