韓国政府が対米農畜産物市場の開放を拡大する可能性を提起し、交渉妥結後、国内産業に加えられる否定的な影響も水面上に浮上している。ドナルド・トランプ米大統領が8月1日に25%の相互関税を賦課すると通告した中、過去の通商交渉の度に輸入市場開放など困難を経験してきた農業など特定産業を犠牲にしなければならないかを巡り、韓国政府内外の悩みが深まるとともに、議論が高まる見通しだ。
産業通商資源部のヨ・ハング通商交渉本部長は14日のブリーフィングで、米国が要求する非関税障壁の解消と関連し、関係省庁や国会と協議し、交渉案をまとめた後、8月1日前に再び訪米し、妥結を推進する方針だと述べた。特に「農産物について戦略的判断をしなければならない」と発言したのは、農畜産物の市場開放の拡大を示唆したものとみられる。政府は農業の産業競争力の弱化と市民健康権のため、農業分野を保護する意志を強調してきた。ところが、今回の発言は事実上初めて追加開放を推進する意思を明示的に表現したものだ。
代表的な敏感品目はコメと牛肉だ。韓国は年間米国産コメ約13万トンを5%の低率関税割当で輸入し、超過量には5〜13%の関税を課す。ドナルド・トランプ米大統領は4月2日、相互関税を発表する際、韓国が米国産米に50〜513%の関税を課すとし、正確ではない主張をした。最近、日本に対しては「莫大なコメ不足に見舞われているにもかかわらず、我々のコメを輸入しない」と不満を露にした。米国は、韓国が牛海綿状脳症(BSE)への懸念を理由に、30カ月以上の牛肉の輸入を認めないことも、主要非関税障壁の事例に挙げている。また、遺伝子組み換え生物(LMO)などに対する検疫手続きが複雑で、自国産農産物の輸出を制限すると主張する。
これに先立ち、韓米自由貿易協定(FTA)締結当時、米国産牛肉と農産物など市場を開放し、深刻な社会的物議を経験したため、政府としても難しい課題を抱えることになった。扶余郡農民会のユ・ジェソク会長はハンギョレとの電話インタビューで、「すでにFTAの時に一度経験した。小麦だけでも以前は国産小麦を栽培していたが、輸入が増え、今はほとんど命脈が途絶えた」と語った。全国農民会総連盟のカン・グァンソク全南連盟事務処長も「米国側の要求を受け入れようとする態度は、農業を犠牲にしてきた歴代政権の農業放棄通商政策とそっくり」だと反発した。
政府がどれを譲歩するかは知られていないが、該当品目の農家には脅威にならざるを得ない。また、遺伝子組み換え生物の輸入は、国民の健康権と直結する問題でもある。これについて政府は、韓国が米国産牛肉1位の輸入国であり、30カ月齢以上の牛肉が30カ月齢未満と共に売られた場合、米国産輸入がかえって打撃を受ける恐れがあるという点を米国に説明しているという。また、検疫手続きに対する科学的必要性を強調し、米国を説得する方針だ。
交渉チームは農業をはじめ、負担を負うことになる関連業界の説得に力を入れる計画だ。ヨ本部長は「関係省庁と協議をもとに交渉案を作り、マンデート(委任)を受ける過程が米国との交渉に劣らず重要だ」と述べた。農林畜産食品部関係者は「私たちの農業の敏感性を最大限反映し、国民の健康と安全を最優先する」とし、「輸入を受け入れるのは、国際的手続きにより科学的に進める」と語った。
ヨ本部長は8月1日までに妥結ができるかについては「予断を許さない」とし、「私たちが処した交渉の状況は厳重で、最悪のシナリオも備えなければならない状況」と話した。
2025/07/14 21:11
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/53731.html